阪神 18年ぶりVへの分岐点だった横田慎太郎さん追悼試合 岡田監督「特別なゲーム」一体感を生み快進撃へ

 ウイニングボールを天にかかげる岩崎=7月25日
 横田慎太郎さんのユニホームを手に笑顔を見せる(左から)岩貞、岩崎、梅野=14日
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 18年ぶりのリーグ制覇へ分岐点となったゲームがある。7月25日、甲子園で行われた巨人戦。この試合は脳腫瘍のため28歳の若さで急逝した横田慎太郎さんの追悼試合だった。岡田監督が「特別なゲーム」と称した一戦。6連戦の初戦にもかかわらず、試合前に自ら課したルールを破る決断をしていた。

 「きょうは1点負けていても岩貞をいかせるつもりだった。岩崎も1点負けていてもブルペンで行くって言っていたんで」

 まだ勝負をかける時期ではない。リリーフ陣は極力、温存しておきたい6連戦の初戦。8月もロードで6連戦が続き、先発投手陣も疲弊する時期。勝ち試合でもない中での起用は「チームをおかしくしてしまう」危険性もあった。

 それでも岡田監督は起用を決断した。選手たちの思いを最大限にくんだ。「みんないろんな思い持ってるから。やっぱりチームとしてそういうゲームやからな」。開幕から先発陣は中6日以上、間隔を詰めることはなかった。リリーフ陣も極力、3連投を回避し、コンディション最優先で起用してきた。

 それほど大事にしていた投手陣の起用法を覆してまで臨んだゲーム。負ければ諸刃の剣となって自チームにダメージを負うことも否定できなかった。そんな岡田監督の覚悟を理解していたかのように、チームは伝統の一戦で躍動した。

 1点を追う六回、大山が菅野のフォークを捉えて逆転の2ランをポール際へ放り込んだ。さらに七回にはダメ押しの左前適時打も放った。守備でも鮮やかな併殺プレーを見せた主砲が、ビハインドでも勝ちパターン投入という“事実”を打ち消し、あくまでも「勝つためのタイガースの野球」を演出した。

 リードした展開で七回のマウンドに上がった岩貞は1死一、二塁のピンチを背負うも、秋広を二ゴロ併殺打に仕留めてこん身のガッツポーズを繰り出した。2点リードの最終回に登板した岩崎も先頭に四球こそ与えたが、次打者を併殺打に打ち取るなど、無失点で負けられないゲームを締めた。

 お立ち台で大山は「ヨコ(横田さん)が運んでくれた」と感謝し、岩貞は「もっと一緒に野球がしたかった」と声を詰まらせた。岩崎は試合終了直後のマウンドでウイニングボールを天にかかげた。この1球は試合後、遺族のもとへ手渡された。横田さんのために戦った阪神の選手たち、そして直接指導したことはないが、タイガースの後輩のために是が非でも勝つことを選択した岡田監督。今シーズン、最も勝利への意欲を見せたゲームだったかもしれない。

 以降、7月の残り試合を4勝1敗1引き分けで通過すると、長期ロードの8月は10連勝を含む18勝7敗で11もの貯金を積み上げた。そして9月は負けなしの11連勝でV決定。追悼試合から優勝を決めた14日・巨人戦まで33勝8敗1引き分けという驚異的な勝率をたたき出した。

 14日の巨人戦、最終回のマウンドに上がった岩崎は生前、現役時代の登場曲だった「栄光の架橋」を使用し、ファンが大合唱した。歓喜のグラウンドに横田さんの背番号24のユニホームが持ち込まれ、同期入団の岩崎に抱かれながら宙を舞った。選手達が記念に収めた写真にはどれも横田さんのユニホームが映っていた。

 それほど大きかった横田慎太郎さんの存在。追悼試合で是が非でもつかみに行った1勝が、阪神の勢いを加速させた。

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