阪神・小野寺 前夜汚名返上の逆転V撃で10連勝 15日にもM29 お立ち台で絶叫「バモス!!」
「阪神タイガース5-3東京ヤクルトスワローズ」(13日、京セラドーム大阪)
強い、強過ぎる。岡田阪神が2007年以来、16年ぶりの10連勝を飾った。1点を追う三回1死満塁で、小野寺暖外野手(25)が右前へ逆転の2点適時打。腰痛でベンチ入りを外れたノイジーの代役が見事に穴を埋めた。2位・広島とは今季最大の8ゲーム差。15日の直接対決に勝てば、優勝マジック「29」が点灯する。真夏の虎はもう止まらない。
小野寺は、振れば輝ける男だ。1点を追う三回1死満塁。ヤクルト先発左腕・山野の内角スライダーを華麗に流し打った。打球は右前に弾む逆転2点適時打。一塁上で笑顔がはじけた。
「昨日のミスを取り返したい気持ちが大きかったです。チャンスで打つことができてよかったです」
「5番・左翼」で7月15日・中日戦(甲子園)以来、約1カ月ぶりとなる先発出場。この日はノイジーがベンチを外れ、練習中に代役を告げられた。突然やってきたチャンスに「腕が震えました」と動揺。強大なプレッシャーに襲われた。
前日12日は“天国から地獄”の一日だった。午前9時から鳴尾浜でファームの試合前練習に参加。ウエスタン・広島戦ではソロを含む3安打と快音を連発した。「自信を持って打席に入れます」と軽い足取りで1軍の試合が行われる京セラドームへ向かった。延長十一回1死一塁。打席で出番が回ってきた時間は、とうに午後10時を過ぎていた。
手のひらに昼間の好感触が残る中、岡田監督からのサインはバント。1軍で犠打成功の経験もなく、あっけなくスリーバント失敗に終わった。指揮官の険しい顔。うつむく小野寺。一夜明け、訪れた挽回のチャンスをものにした。
昨季まではチームの盛り上げ番長。ただ、脇役で脚光を浴びてしまう危機感も募らせていた。「チームを盛り上げたいですけど、もう4年目ですし。自分がいつ終わるかもわからない。自分のことを一番にしながらチームを盛り上げたい」。自分優先にかじを切り、声ではなくバットでチームを勝利に導いた。
1点リードの七回1死では追加点を演出する右前打を記録し、今季2度目の複数安打をマーク。チームは2007年以来、16年ぶりの10連勝を果たし、2位・広島とは8ゲーム差となった。最短で15日には優勝マジック「29」が点灯する。
原口の持ちネタを借り、「バモス!(さあ行こう!)」でお立ち台を締めた背番号60。沸く虎党。笑う小野寺。また新しいヒーローが生まれた。