阪神・中野 巨人・坂本の教え体現 9・24G戦サヨナラ阻止の超ビッグプレー
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」は、阪神・中野拓夢内野手(25)が超ビッグプレーを見せた9月24日・巨人戦(東京ドーム)です。阪神担当・中野雄太記者(31)が、サヨナラ負けの危機を救った遊撃の守備を振り返ります。
◇ ◇
敵将もうなる阪神・中野の神業だった。9月24日・巨人戦(東京ドーム)。6-6の九回1死満塁の大ピンチで丸の打球が三遊間へ転がった。万事休す。直前になんとか同点に追いついたが、ここまでか…。サヨナラ負けを覚悟した。大興奮のG党が思わず立ち上がる。そんな絶体絶命の中、奇跡が起こった。
前進守備を敷いていた遊撃の中野が横っ跳びで白球をグラブに収め、素早く立ち上がって本塁にクイックスロー。送球はやや一塁側にそれてワンバウンドとなったが、捕手の坂本が目いっぱい足を伸ばして根性キャッチ。巨人側のリクエストもアウト判定は覆らない。ドラフト6位ルーキーは続く中田の遊直も落ち着いて処理し、引き分けに持ち込んだ。
まだ興奮冷めやらぬ試合後に「もう1点を与えたら終わりという場面だったので、自分としても割り切って。引いて守っても意味がないと思ったので、とにかく攻める守備を心掛けていこうかなという気持ちはありました。(坂本)誠志郎さんが非常にいいカバーをしてくれたので、良かったかなと思います」と振り返った背番号51。百戦錬磨の巨人・原監督は「スーパープレーみたいなね。そういうことですね」と脱帽するしかなかった。
一塁ベンチから見ていたゴールデングラブ賞4度の巨人・坂本も驚嘆したに違いない。中野は初出場した球宴で名手に“弟子入り”。「送球までの間であったり、状況に応じた守備をするっていうのを教わりました。意識付けしていくことによって、速い打球でも入っていける」と遊撃手の極意を学んでいた。
見事、その教えを最高の形で体現した超絶ビッグプレー。球際の弱さやスローイングの正確性、そしてリーグワースト17失策とまだまだ課題は多い。1年間フルで戦うための体力強化も必要だ。それでも脚力を生かした守備範囲の広さは他の追随を許さない。積極的で攻撃的な守備姿勢も大きな魅力で、今も成長曲線を描く。
仮にこの試合でサヨナラ負けを喫していれば、そのままV争いからズルズルと後退していたかもしれない。勢いに乗ったチームは25、26日と宿敵に連勝した。中野の魅力を凝縮したようなワンプレー。阪神では鳥谷以降、遊撃のポジションは固定できていなかった。その“聖域”を新進気鋭の25歳がつかむ。三塁ベンチ後方の記者席にいた私は、数秒の間に繰り広げられた神業を見てそう実感した。