「ＤｅＮＡ２－６阪神」（１７日、東京ドーム）

　ホンマに…すごいとしか言いようがないわ。阪神・佐藤輝明内野手（２２）が六回に２打席連発、田淵幸一が持つ球団最多新人記録に並ぶ２２号ソロを放った。初回の先制適時打、三回の２１号ソロを含む３安打３打点でチームの３連勝に大きく貢献。史上初めて東京ドームで巨人以外のチームと戦った一戦で、怪物新人が大暴れだ。

　胸のすくようなごう音がドームに響き渡ると、瞬く間に白球は左中間席に吸い込まれた。自身初となる２打席連発の余韻を楽しむように、ゆっくりと佐藤輝はベースを一周。試合を決める一振りで、１９６９年に２２本塁打を放った伝説の新人・田淵幸一の球団新人本塁打記録に並んだ。

　「すごいホームランバッター。田淵さんという偉大な方の記録に並ぶことができたことはすごく光栄ですし、素直にうれしいです」

　同点の六回先頭、５２年ぶりに歴史の扉が開いた。浜口がカウント１－１から投じた内角低め直球に対し、少し肘をたたんで振り抜いた。「直接勝ちに結びついたのでとてもうれしいです」。逆方向へ佐藤輝らしい強い打球が一直線に伸び、無人のスタンドに入った。

　この日、偉業への階段を一気に駆け上がった。１点リードの三回１死、内角高めの直球に対して瞬時に肘を抜き、体を回転させる。右翼席中段に飛び込む弾丸の２１号。３９打席ぶりに記録した一発で、７５年ぶりに大下弘（セネタース）の新人左打者最多本塁打記録を塗り替えた。

　「あそこを攻められるのは分かっていたし、今日はうまく打ったかな」と振り返ったが、それだけで終わらないのが佐藤輝。一気に固め打ちできるのが、怪物ルーキーと形容されるゆえんでもある。

　初回１死満塁の第１打席に放った右翼フェンス直撃の先制打が薄れるほど、強烈なインパクトを残した２発。東京五輪の影響で横浜スタジアムが使えず、ＤｅＮＡ主催で開催された東京ドームでの一戦で、セの本拠地球場を制覇した。

　強打者にはとことん興味のある佐藤輝。ＭＬＢではハーパーや大谷、ＮＰＢでは柳田や吉田正ら左打者に熱視線を注いだが、右打者では同い年のメジャーリーガーで「タティス（パドレス）も見ますね」と影響を受け、己を高めるために動画を見て研究を重ねる。

　一方で夏の風物詩とも言える怪談・怖い話には「夜にトイレに行くのが怖くなったら嫌なので」と繊細な一面をのぞかせる男。「チームに貢献できるような打撃をして、首位をキープしたい」。残り５５試合、まだまだアーチを積み重ねる。