V2巨人ストップへ阪神がキャンプで取り組むべき課題とは?世界一の名参謀が指摘

 今年からデイリースポーツ・ウェブ評論家に就任した高代延博氏(66)が、2月1日にキャンプインする古巣・阪神へ、打倒・巨人に向けて取り組むべき課題を挙げた。矢野監督が強烈に意識する宿敵を倒すために、“日本一の三塁ベースコーチ”が指摘したポイントとは-。

  ◇  ◇

 私は矢野監督が就任した2019年から2軍コーチに配置転換となったため、直接ではないが、阪神と巨人の戦いを見てきた。

 対戦成績は19年が10勝15敗、20年も8勝16敗。打線が打てれば勝つが、接戦を落とした印象が強い。対戦成績を改善しなければ、優勝は見えてこないが、巨人からは「くみしやすい」と思われているだろう。

 原因の一つは、やはり2年連続でリーグワースト失策に終わった守備力。中でも今年は特に投手が絡んだミスが目に付いた。チームの85失策とともに、投手の17失策もリーグワーストだった。

 矢野監督は守備を課題として挙げている。キャンプでも改善に取り組むと思うが、投手の守備練習の質や量を見直し、「意識」を高めてもらいたい。

 2軍コーチも、1軍キャンプの練習メニューを見るのだが、阪神では投手と野手が合同で行う練習は、午前中の投内連係などで済まされることが多かった。その後はサブグラウンドで別々に守備練習が行われていた。

 キャンプは約1カ月間あり、投手と野手が一緒に練習する時間を確保することができる。阪神は投手の守備への意識を高めるためにも、実戦に即した全体での守備練習にもっと時間を費やすべきだと感じている。

 多くの目が行き届くメイン球場を使い、ノッカーは投内連係やケースノックでも常に選手が「え?」と思う打球を打つ。緊張感も高めた練習を野手と行うことで、投手も守備への意識が上がってくるはずだ。

 投手だけで行うノックも意識を変える必要がある。キャンプの見学をしたことがある人は、投手がファウルグラウンドでノックを受けるシーンを見たことがあると思う。

 これもワンバウンドの簡単なゴロを処理するのではなく、バウンド数を増やすなど、実戦を想定してやるべきだ。ワイワイやる「消化型」の練習では、意識改善へつなげることは難しい。

 過去を振り返っても、強いチームは投手を含めて守備への意識が高い。私は04年から中日・落合監督の下でコーチを務めたが、同年はリーグ最少の45失策で優勝した。荒木、井端の二遊間を含めた高い守備力が注目を浴びたが、投手も守備の意識が高かった。

 当時、森繁和投手コーチも守備を重視していた。あるナイターの試合でエース・川上憲伸がベースカバーに遅れた。すると翌日に、野手の早出特打よりもさらに前に、森コーチと川上が守備練習をしていたことがあった。

 もちろん、阪神にも青柳のように送球が苦手と認めて、課題克服に取り組む意識が高い選手はいる。

 一方で意識が低い選手もいる。昨年、2軍で送球に難がある投手に、改善策として「捕球して送球」ではなく、「捕球して間を入れるステップをして送球しよう」と伝えたことがあった。

 だが、その投手は何度言っても同じことを繰り返した。技術より、意識の問題だ。投手陣全体の守備への意識が高まれば、選手一人一人も変わってくる。

 2連覇中の巨人でも去年から成長がなければ、3連覇は厳しいと思っているはずだ。阪神が巨人に勝って優勝するには、現状維持の練習をしていては勝てない。課題が明確なだけに、練習メニューからがらっと変えていく必要があるだろう。

 野球は1点を取ることは難しいが、与えることは簡単だ。野手では大山、木浪らが守備で成長を見せている。投手も含めてスキのない野球ができるようになれば、打倒・巨人への道が見えてくるはずだ。

 ◆昨季の阪神投手陣の主なミス

 7月26日・中日戦(ナゴヤドーム) 岩貞が三回1死一塁で二塁へ悪送球。傷口を広げて先制を許す。

 8月4日・巨人戦(甲子園) 馬場が1点ビハインドの八回無死一、二塁で投ゴロを二塁へ悪送球。この回4失点へつながる。

 9月19日・中日(ナゴヤドーム) 秋山が4失点の全てに絡む2度の悪送球。

 ◆2020年の投手失策数

 巨人2、広島7、DeNA8、中日9、ヤクルト10、阪神17

 ◇高代延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日、奈良県吉野郡出身。智弁学園(奈良)から法大、東芝を経て、78年ドラフト1位で日本ハムに入団。79年に新人王に輝いた。引退後はロッテ、中日、オリックス、阪神などでヘッドコーチや内野守備コーチを歴任。WBCでも日本代表コーチを務め、09年の第2回大会では世界一に貢献。昨年限りで阪神のコーチを退任した。

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