【藤川球児一問一答・3】自分が一番タイガースに似合ってる

 阪神・藤川球児投手(40)が1日、西宮市内で引退発表会見に臨み、入団時に目標に掲げた3度目の優勝を約束した。一問一答は以下の通り。

  ◇  ◇

 -タイガースに入って良かったか。

 「この人生しかないし、名前が藤川球児で、球児じゃないですか、他のたくさんの選手に失礼かもしれないけど、みんなも同じようなことを思ってると思うけど、自分が一番タイガースに似合ってると思ってます」

 -これまで有言実行できたが、最後はどういう形で終わるか。

 「そうねー、有言実行ができなかったシーズンやからね、今年は。だから辞めていくわけやし。さっき言った景気のいいことは言えない。だけど、彼らが支えることもできるし、別に自分じゃなくていいんですよ。何年後かして、そういうエキスが残って、このチームが素晴らしいチームになっていくはずなんですよ。だから、約束はまだ早いんじゃないですか。長い目で見て、今いる若い選手たちが僕がいると、僕以上出てこないかもしれないし、いなくなった方が出てくる気がします」

 (地元の高知新聞の記者が指名される)

 「高知新聞やん、入れたん?(笑)ありがとう」

 -二つ質問があります。

 「坂本龍馬の質問ですか?」

 -違います。中学時代の上田先生、高校時代の正木先生からの教えは。

 「僕に限らないかもしれないけど、これぐらいの年数までやった選手だったり、一般のといったら言い方が悪いですけど、違う業種の方々も含めてなんですけど。成長する時というか成長しようとした時、何が自分を成長させてくれるかというと、優しい言葉じゃないんです。きつい言葉なんです。『お前みたいなやつはダメだ』とか。僕はどっちかというとそうだった。なので、正木先生は僕の性格を知っているから、『嫌だったらすぐ辞めるだろ。そうじゃなくて、細く長く我慢して、10年やりなさい』と言われたのが自分の中にずっしり来ていて。嫌だったんですよ、実は。ケガばっかりして、クビにはなりそうになるし。いつでも辞めてやろうと思っていたし。今考えるとただのしょうもないクソガキなんで。恩師の言葉っていうのはそういう自分にはないもの、一番嫌うであろうと言ってくれた言葉の方が記憶に残っている。岡田監督だったら10連投した時、ピッチングコーチも『頑張ってくれている。無理する必要はない。無理なら無理と言ってくれ』と守ってくれて。岡田監督は『投げられなかったらベンチ入るな』と。ドライなんです。仕事をするってそうなんです。『俺はそんなもんじゃない、やると決めたらとことんやれ』と。僕はすぐ逃げたがるんですよね。弱い自分がいた時にさらにきつい言葉を掛けられると、頑張れるんですよ。甘い言葉はいらないのかもしれないですね、本当の自分を作り上げるとするなら。親だけでいいんじゃないですか、それは。傷つきながら立ち上がっていく選手ほど強いものはいないと思いますね」

 -指標か。

 「みんな持っていると思うけど。土佐のいごっそうだと自負しているから。今後は後輩のために役立てる人生にしたいし、もっともっと自分を探していきたいですね」

もぬけの殻で力が…

 -15年には独立リーグでプレー。高知で見ていた子どもが中学、高校球児になっている。残り60試合でどんな姿を見せたいか。

 「今、自分が見せられるっていうことは、最後のひと踏ん張りのところまできている。それは年齢を問わないんですよ。自分が子どもたちに、どう何かを与えようとか、どう希望を持ってもらおうとか選べないんですよ。だから、自分がやれることをやるだけで、何を相手や周りの人が感じてくれるかは後のことなんで。とにかく自分が正解だと思うことを貫いてやりきる。みんな受け取り方は自由なんで。せっかくこういう仕事をさせてもらっているんだから、誰かに影響されてそれを狙わずに、自分なりの生き方をして。それが人にどう映るかというかの方が自分の中でリラックスできて楽しいし、グラウンドで自由に暴れ回ることができるような気がします。見て感じて、皆さんのペンの力や、取材の力でそれをやってきてもらったわけだから。自分が思う自分以上の自分が育ってしまったんで。今ここにいる自分じゃない自分がグラウンドにはいますから。同じように作り上げてもらえたら、子どもたちのためになるのかなと思います」

 -ぜひ、もうひと踏ん張りをしてください。

 「いつでも頑張るし(笑)。自然に身についているんで。逃げたくなる自分がいてもそんなに甘くくないですよ。自分に厳しいことを言ってくれる人から逃げずに、その人について回るぐらいになったら、絶対あとからいいものになる」

 -現在のトレーニングは。9月中復帰か。

 「言えないです。それは言えないです。戦っているんですから、グラウンドは。グラウンドは戦いなんで。申し訳ないんですけど、個人的な私情は一切挟まないんです。オールスターとかは別ですよ、自分を表現するというのは。出た時にどう感じて、どうなるかっていうのはアドレナリンが(出たりするのが)あると思うんですよ。だから、5000人のファンじゃなくて(もっと)ほしい、5000人じゃなくて。無観客で始まってこんだけ寂しいことないと思いましたから。僕の中で『プロはそんなもんじゃない。お客さんがいようが、いまいが100パーセントの力を出すのがプロ』と思っていましたけど。本当にもぬけの殻だったから、力が出ないんですよ。言い訳として取られても、もうなんでもいいんですけど、それだけ(ファンの存在は)大きかったですから。今の選手は5000人の熱い声援で頑張っているんだから尊敬に値します。僕はそこまでモチベーションがそこまでいけていない。いつ投げるかは言えない。それは自分の体と向き合わないといけないし。次、止まる可能性もあるんですよ。その時点で終わりなんですよ。もう2カ月半しかないから。プレッシャーはかけていますけど。1日も早く、1分も早く」

 -チーム内には若手が出てきている。

 「僕の代わりがじゃないんですよ。チームが勝てればいいんですよ。七、八、九回を投げるピッチャー、これだけでいいんですよ。あとは球団がやってくれますから、その選手たちも。補強だったり育成だったり、みんなスタッフが頑張ってますよ。僕ができることは、いい投手をつくるとか、刺激を与えるとか。今ならば通ってきた道を見せるということしかできないんで。もしタイガースで引退がなければ、こういう話も全くなかったと思いますから。タイガースでユニホームを脱ぐことができるので。生え抜きが育つ大変さとか含めて、何か全部を出さないといけない時が来てるんだなと思うんで、こう話をしているんですけどね」

 -記録に対しては、周りの期待があるから達成したいという思いか。

 「周りの気持ちは関係なく、思わなかったです。正直なところ。無理なんで、それを思うと。僕は勝ち負けにしか興味がないから。1イニングを抑えて勝つことは、僕にとっての幸せですけど。だけど、歴代の名選手、大事な大事なプロ野球を作り上げた先輩たちがやってきたことですから、それ(記録)を目指さないとは言えないし。価値観が違う生き方があるっていうのはものすごく言いづらいことですし。今も言いながらこれでいいのかなと。結局、僕は達成できていないですから。達成されていない、そこ(記録)とは一線を画した違う戦い方をしたOBで大好きな先輩はたくさんいますから。選ぶのは自由じゃないですか。自分がどんな人に憧れるかは。僕はそこ(記録)にいった人たちよりも、熱く生きている人が好きなんで。僕は(元巨人の)斎藤雅樹さんが好きなんですけど。全然、そんな感じじゃないし。ピッチャーで200勝、250セーブ達成する。そんなことよりも、という思いが強すぎて。1セーブ挙げるために九回ぎりぎりのところで出ていって抑えたりとか、点差が同点では投げないとか、意味あるんかなって。ファンの人に失礼じゃないですか。僕はお客さんでも家族なんですけど、家族だから感情でけんかになったり、『なんでこんなに頑張ってるのに認めてくれないんや』って思っていることもありましたし。家族げんかみたいなもんですから。でも、そんなの好きだったんで」

 -巨人戦は特別だったか。

 「当たり前です。それは誰に何を言われても、絶対に言わないといけないです。阪神の先輩方から伝統を預かって、今年限りでその選手としての任を解かれるわけですけど、それも含めてつながないといけないんですよ。やっぱりこれはファンの思いなんです。それは僕らにしか分からないかもしれない。阪神に入った時にそういう教育があったから、18(歳)で。それはもう外せない。FAで来られた選手は力はあるし、目いっぱいタイガースで暴れ回って、タイガースのために働いて貢献してほしい。だけど、生え抜きの大変さは必ずあるんです。そこはものすごく重要なことなので、尊重しないといけない。誰がなんと言ってもこれだけは譲れない。譲らないです、僕もそれは。向かっていかないといけない。特に原監督ですし」

 (最後に藤川から切り出して、デイリースポーツの松下雄一郎記者へ)

 「松っちゃん、(質問は)ないの?」

 松下記者「まさにそれ(巨人のこと)を聞きたかったんや」

 球児「ハッハッハ」

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