井川慶が伝授…遥人に「声出しチェンジアップ」のススメ 新旧「29番」投手対談 

 対談前編では井川慶氏(40)から試合中の考え方などを伝授されるとともに「遥人君が頑張れば阪神は優勝できる」と発破をかけられた阪神・高橋遥人投手(24)。後編では緊張が解けてきたのか、オフやローテーション投手の1シーズンの調整法などについて、次々と質問を投げかけた。

  ◇  ◇

 -今季後半はカード初戦を任されるように。背負い込んでしまった部分もある。

 高橋遥人投手(以下、高橋)「後半9月に勝たなきゃいけないところで全部試合を壊したんで…。井川さんはエースとして背負いすぎることはありましたか?」

 井川慶氏(以下、井川)「あんまり考えてなかったかな。それよりも1シーズンを先発で投げるとしたら、多くて30試合ぐらいでしょ。その30試合をどうやって投げていくかっていうことを1年間考えていたね」

 高橋「シーズン最初から全部ですか?僕だったら目の前の1試合という感じで」

 井川「そりゃ出始めはそこまでは考えていなかった。ただ1シーズン、ローテで回って初めて何がダメだったかっていうのを考えて。1年のスパンで考えるようになった」

 高橋「それで何を変えたんですか?」

 井川「絶対に『山』ってあるでしょ。自分は夏って難しいんで、そこをピークに持っていきたかった。4、5月は8割ぐらい、9、10月も8割ぐらい。7月アタマぐらいから8月をピークに持っていくという考えを持っていた。それを計算に入れながらキャンプも過ごしていたし」

 高橋「オフからキャンプまでって、僕は投げないと不安になるタイプなんです。新しい球種も投げられるようになりたいとかもあるし。そのあたりを井川さんはどうしていたのかなって」

 井川「オフの過ごし方ね。自分は12月は一切投げないで、とにかくトレーニング。で、鍛えたことで1月に体を変えたつもりで、その体に合わせて投げていく。キャンプでは投げて投げて状態を悪くしていく。それで3月にオープン戦が始まる頃から徐々に上げていく感覚かな」

 高橋「12月は鍛えるだけですか…。トレーニングはどこを鍛えたら一番効果がありますか?僕は大学の時に下半身を鍛えて球が速くなったのですが」

 井川「う~ん、やっぱり全体的にやるっていうか。全体のベースを上げていく感覚かな。だから走る方もやるしウエートもしっかりやるし」

 高橋「毎日されていたんですか?」

 井川「6勤1休で3日間はランニング、ウエート、プールを各2時間やって。残りの3日間はランニング、ウエートっていう感じだったかな。ランニングも長距離、短距離に中距離、インターバル系をやって。ウエートもオーソドックスにやったり、軽いのをゆっくりやったり、瞬発力系をやったりとか」

 高橋「すごい…めちゃくちゃ考えて量もやられていますね」

 井川「パーソナルトレーナーはいないの?」

 高橋「いないです…」

 井川「そこが結構違うかも。自分はもう2年目かな、19、20歳ぐらいに付けて。トレーニングをマンツーマンで毎日やってもらって、最後に体のケアもしてもらってた。そこにお金をかけていたかな」

 高橋「すごい…すごいです。19とかですよね」

 井川「ローテに入るのはいいけど、さらにその上もある、またその上もあると思うから。そこを目指すにはやっぱり普通じゃいけないっていうか。例えば飲みに行く時間よりも鍛える方に時間を使っていた。どうせこの仕事、10年、20年しかできない。そう思ってやっていたね」

 (話は変わってチェンジアップの握り、投げ方を実際にボールを持って井川氏が指南)

 井川「よくチェンジアップって腕を振れって言われるよね。それは当たってる。振った方がいいんだけど、結局バッターから見て、一生懸命振っていても、多少抜いてもばれない。ビデオ見ていてわかったんだけど、顔とか表情とか、ごまかしておけば大丈夫。声出しながらチェンジアップとかね(笑)」

 高橋「それやられていたんですか?」

 井川「やってた、やってた。めちゃくちゃ気合入れながらチェンジアップとかね。バッターって表情とか雰囲気を見ているから。いかに真っすぐっていうのを見せたいのよね。それをやってた」

 -チェンジアップを習得したい。

 高橋「本当にものになるんだったら…。今年最後打たれましたけど、チェンジアップがあるだけで全然違うと思うので。今は相手が全部速いってわかっているので、球威や球速が落ちてきた時に打たれてしまう。チェンジアップがあるだけで、直球が落ちてきてるってこともそこまで感じないと思うので。ストレートだけではどうしても…。エグい人はエグいですけど」

 井川「遥人君もエグいよ。他球団のOBの人たちとかも話す機会があるけど、あの子いいよって。遥人君のこと言ってたよ。真っすぐがエグいって、みんな言ってた」

 高橋「(照れながら)うれしいです」

 井川「だからみんな真っすぐが速いっていう意識はあるよね、どの球団も。そこで緩いボールがあったら、そのボールが厄介だなって思ってくれる。精度がそこまでじゃなくても投げた方がバッターは嫌がると思う」

 高橋「井川さんのチェンジアップって逃げる系ですか?下に落ちる系?ただ遅い真っすぐですか?」

 井川「たぶん遅い真っすぐ。結局チェンジアップって、どっちかといったら奥行きのボールだから。普通の真っすぐのように腕を振っているんだけど、ボール来ないっていうのが一番最高のチェンジアップ。だからそこまで変化させようとか思わない方がいい」

 高橋「僕が投げた試合を見ていただいたことはありますか?何が足りなかったですか?」

 井川「単純に球がエグいなって思ったよ。まあ、もっと緩い球あれば楽だよね。ずっと速いの速いのでいってたら、大変だし、すごい腕振っているのもわかるから。そうすると疲れてきちゃうし、肩肘に負担もかかるじゃん?楽するためにも緩いボールが欲しいよね。長く野球をやるためにも」

 -CSでは中2日で巨人戦、最後は中3日で第5戦に投げる予定だった。

 井川「クライマックスって特別で負けたら終わり。そういう大事なところで投げて得るものはあった?」

 高橋「なんとしても点はやらないぞとか、そういう気持ちはすごくありました。でも僕はちょっと楽しかったです。『よっしゃ、中2日だ』って。最後の5戦目も中3日だったので。『またマウンド上がれるぞ、俺』って(笑)」

 井川「楽しかったんだよね?」

 高橋「楽しかったです!!」

 井川「その経験は絶対にこの先に生かせると思うから。いい経験だったと思うよ」

 高橋「確かに。負けたら終わりという中で、しっかり投げられたのは自信になりましたね」

 -最後に改めて来年の目標を。

 高橋「まずは今季以上に投げたい…目標は開幕ローテに入ることです。僕しょぼいですよね…目標が」

 井川「入る予定なんでしょう?メッセンジャーがいなくなって1枠空いたし。それならもっとあるんじゃない?」

 高橋「チームの勝利が一番大事ですけど、僕だったらやっぱり左投手をものすごく見るんです。中日の大野さんとか、DeNAの今永さんとか…何とか2人に食らいついていきたいなと思います。大野さんだったら、僕と同じような球種なのに、なんで抑えられて、僕は抑えられないんだろうって。すごく見ます」

 井川「ローテーションを守れば、ある程度は結果は出るはずだから。頑張って!!」

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