大山、あきらめない激走で珍ランニング弾 掛布以来 虎戦士甲子園30年ぶり
「阪神3-4DeNA」(27日、甲子園球場)
立ち尽くす相手守備陣の間を、矢のように駆け抜けていく。異変は察知しても、止まるつもりなどなかった。阪神・大山悠輔内野手がプロ入り初の2点ランニング本塁打。今季11号は珍しい形で飛び出した。
2点を追う五回、2死一塁。簡単に追い込まれた後のカーブを捉えた。中堅左へライナー性の打球が伸びる。中堅・乙坂は飛び込んでグラブに打球を収めたが、判定はワンバウンド捕球だった。
ノーバウンド捕球と思い込んだ乙坂はどこかを痛めたのか、顔をゆがめて立ち上がらずにいた。その間に一塁走者は楽々と生還し、大山は全速力でベースを回る。猛スピードで走る2人を横目に、DeNAの9人は固まったままだった。
大山が三塁を回った頃にようやく返球されたが、時すでに遅し。「インプレーだと思っていたので」と最後まで緩めることなくダイヤモンドを一周。相手のラミレス監督がノーバウンド捕球ではないかとリクエストしたが、リプレー検証でも判定は変わらない。「僕の位置からは(捕球したかどうか)わかりませんでしたが、プレーが切れていなかったので、諦めずに全力でホームまで走りました」と振り返った。
阪神選手のランニング本塁打は、2017年8月1日・広島戦(マツダ)での上本以来。甲子園では1988年4月26日・大洋戦での掛布雅之以来、30年ぶりだ。大山はこの日のマルチ安打で6試合連続安打。月間10本塁打まであと1とした。
この日はプロ入り初の2番に座った。「打順は関係ない。その時、その時でしっかりプレーしていきたい」。試合後の通路では敗戦に悔しさをにじませながらも、一言一言に最後まで力を込めた。攻撃的2番として結果を残したが、勝利に飢える若虎に一切の喜びはなかった。