清水誉捕手 芽生えつつある新たな夢「野球を教えたい」

 今オフ、18選手が阪神を退団した。新たな人生にチャレンジする虎戦士の思いを伝える。清水誉捕手(32)の決意とは-。

 武者震いした。14年開幕戦は伝統の一戦。敵地東京ドームは試合前から、異様な雰囲気に包まれていた。前年に自己最多39試合に出場した清水は、プロ8年目で初の開幕マスクを託された。しかも尊敬する能見とのバッテリーだ。正捕手へ、最も近づいた瞬間だった。

 「ああいう経験は他ではできない。幸せだし、ありがたかった」

 結果は原巨人の猛攻に遭い、5回10失点。捕手として責任を痛感した。苦い記憶として刻まれたが、4カ月後にきっちりリベンジを果たす。8月9日・広島戦(京セラ)。再び左腕とコンビを組み、勝利すると、2人でお立ち台に呼ばれた。

 「あの試合、オレも能見さんも途中交代。でもヒーローインタビューに呼ばれてコイツのせいじゃないと言ってくれて…」

 左腕の気遣いがうれしかった。地元兵庫の小野高、関学大を経て、06年度の大学・社会人ドラフト4位で入団した。矢野、城島、藤井、鶴岡…。目の前にはいつも高い壁がそびえていた。正捕手への道のりは険しかったが「チームの力になりたい」という一心で、大好きな野球と向き合ってきた。投手の何気ない言葉が、励みだった。奪三振タイトルを争っていた能見を三振奪取に導くと「なかなかいいリードやった」と声を掛けられ、久保(現DeNA)のフォークを体を張って止めると「よく止めてくれた」とねぎらわれた。マウンドで安藤からポンと頭をはたかれたことも、メッセンジャーに抱きかかえられたことも大切な思い出だ。捕手の誇りでもある。

 今季はわずか2試合の出場に終わり、10月中旬に来季戦力外を通告された。「小学校からやってきた野球やから…」。未練はある。現役続行を真剣に検討した。「自分の好きなようにしていいよ」。愛妻は背中を押してくれた。人生の岐路に立ち2人の子どもの顔も思い浮かんだ。高校、大学の恩師と相談し、悩んだ末、ユニホームを脱ぐ決断を下した。10年間の現役生活にピリオドを打ち、今は感謝の気持ちしかない。

 「家族もいるし、今32歳。この先も働かなあかんから。野球を嫌いになって辞めるんじゃない。いつか辞める時が来る。家族や周りの人の支えがあったから、ここまで野球ができたんだと思う」

 1軍サブマネジャーとして新たな人生を歩む。試合準備、遠征の荷物出し、キャンプの設営が主な仕事だ。「きっちり仕事をして少しでもチームの力になれたら」。清水は現役の時と同じフレーズを繰り返した。新たな夢も芽生えつつある。

 「子どもたちに野球を教えたい。球場へ行こうとかキャッチボールやってみようとか。野球をやってくれる人が増えたらいいな」

 誠実な人柄は誰からも愛される。大好きな野球へ恩返しするため、清水らしく、第2の人生を歩んでいく。

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