【超変革を検証】「裸の王様」検証その3

 金本知憲と矢野燿大は現役時代から、プライベートで連絡を取り合うことも、一緒に食事に出掛けることもなかった。だからこそ、金本は真っ先に矢野に入閣を打診した。普段ベッタリの関係ではベンチでなれ合いになる。そんな信念のもと金本は矢野に意見具申を求め、同級生もそれに応えようとした。

 藤浪の161球は金本の裁量であり、後悔のない決断だった。矢野は金本の意図を推し量ったうえで、その場で異を唱えることはなかった。

 矢野「そのときだけのことを考えてやっているとは思っていないし、やっぱり期待の裏返しであったり、(藤浪の)成長の中でそれが必要だと思ってやっていること。感情的にやっているだけのことではないから」

 藤浪が「超」のつく一流に育てるべき素材であることは誰だって分かる。ただ、そのプロセスの正解は5年後、10年後にしか分からない。「161球」は科学的な見識が常識になった今の球界では「否」が「賛」を上回る。金本は藤浪への「懲罰」が物議をかもすことは分かっていた。そして、矢野も分かっていた。もし、金本がカッとなって課した制裁と感じたならば…矢野は間違いなくストップをかけていた。でも、かけなかった。それは矢野が遠慮したからではない。将来これが「正解」となることを信じて、金本の選択を支持したのだと思う。

 矢野「色んな人が色んなことを言うでしょ。自分は解説をやっていたし、(逆の立場も)分かるけど、外の人にはすべて(チームの内情は)分からないわけでさ。こちらは(外部に)言えないことのほうが多いわけだし、自分たちは信念を持ってやっていくことが必要なんだろうなと思う。特に今年はいい結果が出ていないから、特に監督は精神的に大変だったと思う」

 結果がすべての世界であることは、今年の広島が好例を示したと言える。僕の取材の限りでは、セ・リーグ覇者の将、緒方孝市には昨季「裸の王様」の予兆があったという。

 繰り返しになるが、その定義は「自分にとって都合の良いことを言う人間だけを周りにおいて-」である。

 例えば、有権者が意に沿わない者を除外するような態度をとれば、その周囲にイエスマンが集まる。広島のチーム関係者によれば「今年、明らかに緒方監督は変わった」という。「選手やスタッフとのコミュニケーションの時間を意図的に設けて、それぞれの立場、考え方を理解しようとしていた」のだと。つまり、昨年は…。

 「勝てば、すべて良い方向へ変わっていくんですよ」。今季から広島の1軍打撃コーチを務める東出輝裕は優勝を決めた直後、そう言った。

 矢野「監督とは互いに、チームが勝つため、選手が良くなるため、という思いがあるので、そこはもう少しぶつかり合ってもいいのかもしれないし…」

 「裸-」の検証に結論を出すのは、まだ少し先になりそうだ。(終わり)=敬称略=

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