岩貞次は勝つ!4回4失点黒星デビュー

 「阪神3-7広島」(10日、京セラ)

 勝利で飾りたかった。プロ初登板初先発となった阪神のドラフト1位・岩貞祐太投手(22)=横浜商大=は、味方のまずい守備もあり、4回を5安打4失点(自責3)で敗戦投手となった。苦いデビュー戦となったが、随所に可能性を感じさせた投球に、首脳陣は次回の先発登板を確約した。12日からは、1・5ゲーム差で追う巨人と首位攻防戦。しっかりと切り替えて、宿敵をたたく。

 思い切り左腕を振り抜いた。岩貞がようやくたどり着いた、初めての1軍マウンド。思い描いた結果ではなかった。それでも、腕を振り抜く。その悔いだけは残さなかった。

 「置きにいって打たれるのも、腕を振って打たれるのも同じ結果なら腕を振ろうと。それだけはできました」

 プロ初登板。その第1球。投げた直球はワンバウンドした。「だいぶ硬くなっていました」。経験したことのない緊張感に、制球は乱れた。鶴岡から何度も「肩の力を抜け」とジェスチャーで指示された。だが、自分の球を抑えきれなかった。

 だからこそ、腕だけは思い切り振った。初回1死一、二塁の場面。エルドレッドを空振り三振に仕留めた球は、鶴岡の構えた位置とは全く違う外角高め。和田監督が「球のキレはあった」と評したように、逆球でも威力があったから鯉の主砲に空を切らせた。

 2死からキラに浴びた中堅への大飛球。打ち取ったと思ったが、伊藤隼が捕球できず、フェンスを直撃した打球は転々とした。無失点が2失点に。一瞬、両膝に手をついた。気落ちしたのか、続く梵にも適時打を許し、いきなり3点を失った。

 1軍デビューまで290日。昨年10月24日、ドラフト1位指名を受けてから苦しみ抜いた。2月、宜野座キャンプ中の楽天との練習試合後、左肘痛を発症。「このまま投げられなくなるのでは」。最悪の事態が頭をよぎるほど落ち込んだ。7月の実戦復帰まで5カ月。つらいリハビリを乗り切れたのは、周囲の支えがあったからだ。

 ケガをしたから見ることができた、トレーナーら裏方の仕事ぶり。「多くの方が支えてくださっているんだなと。皆さんに恩返しする思いで投げないといけない、という気持ちが芽生えました」。

 4回まで投げて降板した。ベンチでは眉間にシワを寄せて、唇をかんだ。自己評価は「5点」。船出は厳しかった。だが、大きな試練を乗り越えてきたドラ1左腕。壁にぶち当たった分だけ、成長していく。この敗戦も糧となる。この次は、恩返しの初勝利を手に入れる。

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