外国人も思わず「ブラボー!」 高校生も足を運ぶインディーズバンド・アポンタイム 出発点はビートルズ

出発点はリバプール出身のあの世界的バンド。

懐かしくも新しい。インディーズバンドのアポンタイムが、心地よいサウンドを奏でている。

三輪卓也(Vo.Gt.)、のん(Key.)、向井ユウスケ(Dr.)からなる同バンドは、2019年夏に結成。翌年の2020年には、吉祥寺音楽祭のバンドコンテストでグランプリを受賞した。2024年には『ハイウェイバス』が南海バスグループのテレビCM/PRキャンペーンソングに選出。現在まで精力的なライブ活動と並行してアルバム2枚とシングル曲をリリースし、2026年は新曲の発表にも注力。これまで以上の活動にブーストをかけている。

■懐かしくも新しい音像

アポンタイムという柔らかな響きのあるバンド名には、イギリス北東部に位置するニューカッスル・アポン・タインという街の名前と“Once upon a time”という慣用句が由来としてあるそうだ。

リーダーの三輪は「僕は学生時代にイギリスの大学に留学していたのですが、自分の住んでいた場所から少し北に行ったところにあったのがニューカッスル・アポン・タインという街。“アポン・タイン”という響きが好きで、ずっと印象に残っていました。そこに、英語の“むかしむかし”という意味の“Once upon a time”を掛け合わせてアポンタイム(APONTIME)にしました。英語表記が“Upon”の“U”ではなく“A”から始まるようにしたのは、字面のポップさを意識してのことです」と命名理由を明かす。

三輪が音楽活動を志し、生まれ故郷の岐阜県から24歳で上京したのが全ての始まり。東京で出会ったメンバーとアポンタイムを結成した。バンド公式プロフィールには、彼らの音楽性を示す“優しくて人懐っこくて力強い、今どきありそうでなかったグッドミュージック”という文言がある。耳心地の良いサウンドとキャッチーなメロディ、そして時にブルージーな三輪の声色によって生み出される懐かしくも新しい音像。それらが一体となった独自の音楽性こそ、彼らの魅力であり最大の特徴だ。

■海外オーディエンスから…

アポンタイムのグッドミュージックは、あらゆる“境界線”を曖昧にする。彼らの楽曲の歌詞は日本語でつづられているが、いざライブで披露してみると外国人オーディエンスの反応がすこぶるいい。たまたま会場に居合わせたオーストラリア人の観客から「ブラボー!」と称賛される一幕もあったという。

「自分たちのライブで、外国の方のいいリアクションを肌で感じることは多くて。日本語歌詞であったとしても、僕らの鳴らす音やリズム、グルーヴだけで世界に伝わるものがあるのかも。初めて耳にしてもスッと入って来れるような楽曲を作ったり演奏したりすることには意識的なので、海外の方がいい反応をしてくれるのはうれしい限りです」

言語や国境を越えてさまざまな観客から反応を引き出す背景には、三輪が自身の音楽的ルーツとして挙げる”世界的バンド”の存在も関係していそうだ。

「幼少期は両親の車で聴いていたサザンオールスターズやスピッツが好きでした。中学時代からは音楽好きの父の影響でレッド・ツェッペリンやザ・ローリング・ストーンズなどの洋楽ロックにドハマり。自分で曲作りを始めた18歳の頃に本格的に聴きはじめたビートルズは、間違いなく僕の血肉になっています。イギリスに留学したのも間違いなくビートルズをはじめとする英国ロックの影響です」

ビートルズとの出会いをきっかけに、さまざまな音楽へと食指が動き、ジャンルの垣根なく多種多様な音楽性を吸収。そのアウトプット先がアポンタイムだ。特定の音楽ジャンルに固執せずに、あえて“グッドミュージック”と自称するのは、古今東西、世界中の音楽から受け取ったものを、今の自分たちの感性で再構築しているからだろう。

■16歳にも“刺さる”

ある曲はエイモス・リーを、またある曲はビーチ・ボーイズを想起させたりしながら、J-POPのようであって、J-POPの枠組みからはみ出す個性。ポップさの中に隠されたトゲや芯のある文学性。前向きながらも苦みのある言葉を散りばめて、メロディアスな旋律に乗せて切実に歌う。

「自分たちが影響を受けた昔の音楽をそっくりそのままやるのではなく、今の僕らの感性でアップデートして再構築。特定のジャンルに囚われることなく、文字通り自由に曲作りやアレンジをしている。それがアポンタイムとしての色であり強みだと思います」

DIYマインドを武器に、MVやジャケットデザイン/グッズデザインなども完全セルフプロデュース。アポンタイムとしての世界観を自分たちの手で独自に構築する一方、最近は若年層からのリアクションもジワジワ実感しているという。

「テレビの音楽番組で流れたMVを気に入ってくれた16歳の高校生がライブに来てアルバムを買ってくれたり、最近はとくに若いリスナーやお客さんが増えていてうれしいです。今年は間口を広げて、いろいろな人の耳にアポンタイムの楽曲を届けるフェーズ。たくさんの方々に知ってもらえるように頑張っていきたいです」

9月16日には待望の新曲『The Cox』をリリース。懐かしいのにどこか新しい、そんな相反する感覚を鳴らすアポンタイムの音楽は、少しずつ新たなリスナーへと届きはじめている。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)

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