認知症の母と同居する50代会社員 デイサービスが休業だったGWは事実上の介護休暇に 心身消耗し「もう限界かも」【社会福祉士が解説】
50代の会社員、目黒さん(仮名)は、ゴールデンウィークを深い溜息とともに終えました。カレンダー通りに休みが取れたものの、その実態は「介護休暇」そのもの。ちょうど利用していたデイサービスが休業となり、自宅で介護をしている認知症の母親の食事や入浴のサポート、そして徘徊対応に追われました。
連休が明け、職場に戻った目黒さんを待っていたのは、「もう限界かもしれない」という蓄積した疲労感と孤独感でした。仕事中も母のことが頭を離れず、かといって「介護することを休むために母をどこかに預けるのは、家族として無責任ではないか」という強い罪悪感に苛まれていました。
■制度で防ぐべき介護者の「燃え尽き」
ゴールデンウィークのような長期休暇は、ビジネスパーソンにとっての一般的なリフレッシュの機会ですが、普段利用している地域の介護サービス(通所介護など)が止まる場合もあり、在宅介護を担う家族にとっては、負担が一点に集中する「試練の期間」となります。
ここで重要なのは、介護者が心身を壊すことは、要介護者にとって最大の不幸である「共倒れ」を招くという視点です。
専門用語で「レスパイト(Respite)」と呼ばれる概念があります。これは「休息」「息抜き」を意味し、介護者が一時的に介護から解放され、心身をリフレッシュさせることを指します。そして、介護者が休息をするための支援が「レスパイトケア(Respite Care)」です。これは単なる「手抜き」ではなく、持続可能な在宅介護を継続するための「介護者の必須のメンテナンス」です。
■医療型のレスパイトケア「レスパイト入院」
医療的なケアが必要な場合、または一般的な高齢者施設での受け入れが難しい場合に検討したいのが「レスパイト入院」です。
1.利用条件と特徴
主に「地域包括ケア病棟」を持つ病院などで実施されています。他にも「療養病棟(医療療養病床)」や「精神科病棟」、状況によっては「緩和ケア病棟(ホスピス)」でも受け入れ可能な医療機関もあります。
対象となるのは、経管栄養(胃瘻など)、痰の吸引、点滴管理、褥瘡(床ずれ)処置など、医療的処置が必要な高齢者です。期間は、1回につき数日から2週間程度が一般的です。
2.費用の目安
医療的処置が必要な高齢者のレスパイト入院には「医療保険」が適用されます。
自己負担としては医療保険の負担割合(1~3割)に応じた入院基本料と、別途費用として食事代(標準負担額)、差額ベッド代(個室希望時)、おむつ代などの実費が必要です。
おおよその総額の目安として1日あたり約7000円~1万5000円程度(所得や病棟の種類により変動)になります。
3.手続きの手順
まずはかかりつけ医、または入院を希望する病院の「地域連携室」に所属するMSW(メディカルソーシャルワーカー:社会福祉士・精神保健福祉士などの専門家)に相談しましょう。
入院時には、事前に現在の主治医による診療情報提供書(紹介状)が必要になります。これをもとに病院側で受け入れ可能かどうかの検討が行われ、利用可否が決定します。
■福祉型のレスパイトケア「ショートステイ」
比較的お元気な方や、医療的処置が比較的少なく、介護施設での短期入所が可能な場合に適しているのが、介護保険サービスの「ショートステイ(短期入所生活介護)」です。
1.利用条件と特徴
対象となるのは要支援1以上、または要介護1~5の認定を受けている方で、利用日数には、要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないという上限があり、ケアプランに基づいて利用します。
2.費用の目安
ショートステイは「介護保険」が適用されます。そのためサービス利用料の1~3割の自己負担があります。滞在費(部屋代)と食費は全額自己負担ですが、所得に応じて「負担限度額認定(補足給付)」が受けられます。
自己負担額の総額の目安としては、多床室(相部屋)の場合、1日あたり約2500円~5000円程度。ユニット型個室の場合は約5000円~8000円程度になります。
3.手続きの手順
まずは担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に「レスパイト目的でショートステイを利用したい」と相談しましょう。ケアマネジャーが施設の空き状況を確認し、予約を入れます。特に連休前後は混み合うため、早めの相談がおすすめです。
また、初めて利用する施設の場合、事前に施設側の面談や施設との契約が必要となることにも注意が必要です。
■介護者の休息も「ケアプラン」に組み込む
多くの介護者がレスパイトの利用をためらう理由は、金銭面よりも「心理的障壁」にあるのではないでしょうか。「親を施設に預けて自分だけ楽をするなんて…」という罪悪感です。
しかし、介護者の休養はケアプラン(居宅サービス計画)に組み込まれるべき正当な項目です。近年、レスパイトは介護保険制度の重要な目的の一つとして位置づけられつつあります。
「自分が楽をするため」と考えるのではなく、「最良の介護を長く続けるために、親をプロの手で安全に見守ってもらう時間を作る」と捉え直してみてはいかがでしょうか。
■一人で頑張らなくても良いんです
目黒さんは、事情を知っている職場の上司や産業医との面談をきっかけに、担当のケアマネジャーへ「もう限界です」と正直な胸の内を明かしました。
ケアマネジャーは即座にレスパイトの重要性を説き、翌月には2泊3日のショートステイを組んでくれました。最初は「見捨てられた」と母に責められるのではないかと不安だった目黒さんですが、施設から戻った母親は、楽しそうに施設での出来事を話してくれました。
目黒さん自身も、この間「自分のために使える時間」を持てたことで、心に余裕を取り戻しました。今では「月に一度のショートステイ」を定例化することで、以前よりも穏やかな気持ちで母親と向き合えています。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)
社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。
(まいどなニュース/もくもくライターズ)
