「想像以上に焦げてきた(笑)」完全に別猫…元保護猫のビフォーアフター 車いすバスケ選手・北田千尋さんと「ふぅさん」の出会い

「保護当時の尖っているころを懐かしく思い、スマホのアルバムを見ていてビフォーアフターに笑った」

そんなコメントとともに投稿されたのは、1匹の猫の変化を伝える写真。そこに写っているのは、元保護猫の「ふぅさん」(推定4歳半・女の子)です。

飼い主は、車いすバスケットボール選手の北田千尋さん。2020年東京、2024年パリと2大会連続でパラリンピック日本代表を務めたアスリートです。

もふもふとした被毛の印象から、“ふ”に着想を得て名付けられたふぅさん。保護当時は、顔や耳、尻尾にうっすらと色が入る白っぽい毛並みでしたが、ともに暮らすなかで少しずつ茶色みが広がり、今では全体的に濃く色づいています。

さらに印象的なのが、表情の変化です。ケージの奥で体を縮こまらせ、イカ耳で緊張した様子を見せていた当初から一転、今ではまん丸の目で安心しきった表情に。椅子の上で、“へそ天”になってくつろぐ姿も見られるようになりました。

まるで別の猫のように変化を遂げたふぅさん。その背景には、「野生」との向き合い、そして震災をきっかけに芽生えた覚悟があったといいます。北田さんに話を聞きました。

■想像以上に“焦げてきた”!?

ふぅさんを保護したのは、2022年12月1日。北田さんは、野良猫だったふぅさんを家族として迎え入れたこの日を、誕生日であり“うちの子記念日”として大切にしています。

出会った野良時代、ふぅさんの背中は真っ白でした。

「目が青く、ポインテッドのトラ柄でシャム猫さんの血が入っていることはわかってたので色は変わっていくだろうなとは思ってましたが想像以上に焦げてきました(笑)。出会った野良時代は背中は真っ白だったのでやはりまだ子猫寄りの猫さんだったんだと思います。そう思うと早い時期に保護できたことで家猫として寿命を全うしてもらえるチャンスができてよかったなぁ、と思います」

■「一生触れなくても…」考えを変えた震災

保護当初のふぅさんは、まさに「野生」そのもの。人の前でご飯を食べたりトイレをしたりすることはもちろん、おもちゃに慣れるまでにも半年を要しました。爪切りのためにネットに入れようとして噛まれたことも一度や二度ではありません。

「夜鳴きもひどく、毎晩のようにふぅさんのケージの前で声をかけ続けました。お互い恐怖心との戦いと試行錯誤の毎日でした」

北田さんは当初、ふぅさんが健康に過ごしてくれれば「一生触れなくても良い」とさえ考え、積極的な人馴れ訓練はしていませんでした。しかし、その考えを一変させたのが、北田さんが拠点とする滋賀県でも大きな揺れを観測した能登半島地震でした。

「避難を考えたとき、ふぅさんの命に最後まで責任を持つためには一緒に避難できるようにならなきゃ、と思ったんです」

そこから本格的な訓練を開始。1年ほど根気よく続けた結果、今では大好物のチュールを食べている間のみは撫でることができるようになりました。

「こんな未来を想像していなかったのでとても幸せです」

■言葉も理解、賢くて頑固なふぅさん

ふぅさんは現在、北田さんが驚くほどの賢さを見せています。カーテンレールからカーテンを外してしまうためロールスクリーンに変更したり、引き出しにチャイルドロックをかけたりと、知恵比べの毎日です。

「おそらくかなりの日本語を理解しているな、と思う場面も多々あります。私が長期間留守にして帰宅すると、大好物のチュールを差し出しても顔を背けます。私が『お留守番ありがとう』としっかりお礼を言ってしばらくすると機嫌が良くなりおやつも食べてくれます」

■ふぅさんがもたらした変化…かけがえのない存在に

ふぅさんとの暮らしは、北田さんの周囲にも温かな変化をもたらしました。ペット可の物件探しを親身に支えてくれた担当者や、アドバイスをくれる猫好きの仲間たち。さらには「ふぅさんがきっかけで私を知り、車いすバスケの試合を見に来てくれた方もいます」といいます。

何より、北田さん自身の内面に変化がありました。

「ふぅさんにはポジティブな声かけしかしないと決めているので、それが私自身にもとても良い影響を与えていて、すっかり怒るのが下手になり『丸くなった』と周りから言われることがあります。不思議な出会いから一緒に暮らし始めたふぅさんですが、私の人生にとってなくてはならないとても大切な家族になりました。この出会いにとても感謝しています」

幼少期から実家で多くの野良猫を保護してきたという北田さん。現在は弟さんも保護猫と暮らしており、「家族まるまる『NNN(ねこねこネットワーク)』に目をつけられているのだろうと思います(笑)」と冗談めかして語ります。

「合宿とか大会ばっかりでお家におらんけど仲良くしてね」

そう投稿に綴る北田さんの優しい眼差しの先には、今では穏やかな表情を浮かべるふぅさんの姿が。お互いにかけがえのないパートナーとなった“ふたり”の温かな物語は、これからも続いていきます。

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)

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