独居の79歳父 「よく道に迷っているみたい」とご近所さん 大量の同じ食材、賞味期限切れも…気づきたい”小さな違和感“【社会福祉士が解説】

ゴールデンウィークに久しぶりに、父親(79歳)が一人で暮らす実家へ帰省した川本さん(52歳・仮名)は、冷蔵庫を開けて驚きました。同じ食材が何袋も詰まっていて、賞味期限の切れた食品も目立ちます。トイレや洗面所も以前より汚れている様子に気づきました。「父が同じ話を繰り返すことが増えたな」とも感じていましたが、「まだ大丈夫だろう」と深く考えずにいました。しかし、帰り際に近所の人から「最近お父さん、よく道に迷っているみたい」と言われ、はっとしたのです。道に迷うということは、事故に巻き込まれたり行方不明になったりしてしまう、命に関わるリスクの高いサインだと思ったのです。

春先やゴールデンウィークの帰省連絡のタイミングは、親の暮らしの変化に気づきやすい時期です。気づいたときに一人で抱え込まず、どこに相談できるのかを分かりやすくお伝えします。

■春先やゴールデンウィークの帰省で見えてくる親の変化

春は年度の変わり目やゴールデンウィークで、帰省する機会も多い季節です。久しぶりに親と会うことで、日常生活の小さな変化に気づくことがあります。

例えば、冒頭の川本さんのケースのように、これまできちんと管理されていた冷蔵庫の中が乱雑になっていたり、同じ食品が大量にあったりする場合は注意が必要です。また、水回りの掃除が行き届いていない、車体や車庫の壁に傷が増えているといった変化も、暮らしの状態を示すサインとなります。

会話の中で同じことを何度も聞いてきたり、通い慣れた道で迷うようになったりする様子があれば、認知機能の変化の可能性も考えられます。厚生労働省の2022年国民生活基礎調査では、要介護者が介護が必要になった原因の1位は認知症で23.6%を占めています。

こうした変化は、決して「すぐに介護が必要」という意味ではありません。しかし、早めに気づいて適切な対応をすることで、親の健やかな生活を長く保つことができます。

■気づいたサインのチェックポイント

親の変化に気づいたとき、以下のような点をチェックしてみましょう。

▼日常生活の変化

・同じ話を何度も繰り返す

・料理の味付けが変わった、家電の使い方を忘れる

・外出の機会が減った、以前の趣味に興味を示さなくなった

▼身体機能の変化

・食事の際によくむせる、咳き込む

・歩き方がおぼつかない、転びやすくなる

・服装が季節に合っていない

▼住環境の変化

・部屋が散らかっている、掃除が行き届いていない

・冷蔵庫の中に賞味期限切れの食品が多い

・郵便物がたまっている

これらの変化があっても、必ずしも介護が必要というわけではありません。ただし、複数のサインが見られる場合は、専門家への相談を検討する良いタイミングと言えるでしょう。

■一人で抱え込まない、相談できる場所

親の変化に気づいたとき、「まだ大丈夫」と一人で悩んでしまうケースが少なくありません。ダスキンが2024年に実施した調査によると、介護について親子で話した経験は親世代で16.5%、子世代で25.2%と少なく、「親が病気や入院、介護が必要になって」初めて話し合った人が約50%という結果が出ています。

しかし、気づいたときこそ、専門家に相談する良いタイミングです。全国には相談できる場所があります。

▼地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを支える総合相談窓口です。2024年4月末現在、全国に5451カ所(支所を含めると7362カ所)設置されており、相談は無料です。 

保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなど専門知識を持った職員が常駐しており、介護に関することだけでなく、日常生活の困りごとや健康面の相談にも対応してくれます。

地域包括支援センターでは、以下のようなサポートを受けることができます。

・介護保険の申請手続きのサポート

・適切な介護サービスの紹介

・認知症に関する相談

・健康面や生活全般に関する相談

離れて暮らす親について相談したい場合は、親が住んでいる地域の地域包括支援センターに問い合わせます。お住まいの市町村のホームページや介護保険担当窓口で、担当センターの情報を確認できます。

▼かかりつけ医

親が定期的に通っている病院やクリニックがあれば、まずはかかりつけ医に相談するのも良い方法です。健康診断のタイミングで医師に相談すれば、必要に応じて専門医を紹介してもらえることもあります。

■今からできる備え

春の帰省をきっかけに、親の介護について家族で話し合ってみることをおすすめします。

まずは親の希望を聞いてみましょう。「もし介護が必要になったら、どのように過ごしたいか」「自宅で暮らし続けたいか、施設を考えるか」など、元気なうちから話しておくことで、いざというときに慌てずに対応できます。

また、以下のような情報を家族で共有しておくと安心です。

・かかりつけ医や服用している薬

・健康保険証や診察券の保管場所

・地域包括支援センターの連絡先

・親の日常的な生活パターン

また、介護が必要になったときに、お金の管理をどうするか、手続きや受診の付き添いを誰が担うかといったことも、家族で話しておくと安心です。

センシティブな話題ではありますが、「困ったときに相談できる場所がある」ことを知っているだけでも、気持ちが楽になるのではないでしょうか。

◇  ◇  

春の帰省は、親の暮らしの変化に気づく良い機会です。小さなサインを見逃さず、気になることがあれば地域包括支援センターやかかりつけ医などに相談してみましょう。「うちはまだ大丈夫」と思っても、専門家への相談は決して早すぎることはありません。

厚生労働省の介護保険事業状況報告によると、要介護(要支援)認定者数は736.1万人となり、前年度から1.7%増加しています(2025年11月末現在)。誰もが向き合う可能性のある介護だからこそ、早めの情報収集と準備が大切となります。

一人で抱え込まず、利用できる制度やサービスを活用しながら、親も子も安心して暮らせる環境を整えていきましょう。

【出典】

厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)

ダスキン「親⼦で向き合う介護レポート」(2024年)

厚生労働省「地域包括ケアシステムについて」(2024年)

厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定版)」(2025年11月)

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)

社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。 

(まいどなニュース/もくもくライターズ)

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