撮休の朝、津田寛治は午前11時カラオケボックスへ ドラマ「9係」で共演した故渡瀬恒彦さんに少しでも近づくために

名バイプレイヤー・津田寛治(60)の撮休は、午前11時のカラオケボックスから始まる。

■ほとんど一人カラオケ?

津田が俳優・津田寛治を演じるという、主演映画『津田寛治に撮休はない』が3月28日に公開。現実世界の御本人さながらに撮影現場を渡り歩く津田寛治が、俳優という名のラビリンスに迷い込む。

「タイトルに僕の名前が入っていて画面にも出ずっぱり。胸焼けするくらいに僕、僕、僕…。もうお腹いっぱい!と思われないか心配です」

そう恐縮しながら頭をかく津田の昨年2025年の出演本数は、なんと20作品超。タイトルに『撮休はない』を入れたくなるのも無理はない。業界内には「困った時の津田寛治」という言葉があるという噂も、あながち嘘ではなさそうだ。

劇中の津田とは違い、さすがに現実の津田には休日はあるそうだが、その時間のほとんどはカラオケボックスで費やされる。

「撮休日はワンデープランの始まる午前11時から、ほとんど一人カラオケで過ごすことが多いですね」

まさかの歌好き?還暦とは思えぬハキハキと力強く通る声はそのたまものか。

「ハハハ。歌唱のないビジネスプランで入るので歌えません」

■がぶ飲みドリンクバー

ならばカラオケボックスの個室で一体何を?

「そこでやっているのは滑舌チェックと発声とセリフ覚えです。僕は声を出さないとセリフを覚えられないタイプ。自宅でやると家族に迷惑がかかりますから」

入店したらまずは滑舌チェックや発声を20分程行う。そこから次回作の台本をト書きも含めて最初から最後まで音読するという。

「黙読するよりも音読の方が物語の全体像がクリアになって脚本の意図を掴みやすいし、新しい発見も生まれます。それを何度かやってから、相手役のセリフをICレコーダーに吹き込んで自分の芝居を試してみる。さすがに家では出来ませんよね」

熱中し過ぎて、時には夜まで個室に籠る日も。津田にとってカラオケボックスとは、さながらトレーニングジム。俳優としての技術の鮮度を保つための鍛錬の場だ。

「飲み放題のドリンクバーもあるのでガンガン飲んで喉を潤して、ちょっと疲れたらスマホで日々のニュースをチェック。昨年末は休憩中に年賀状を書きました。カラオケボックスはテーブルが広いから助かります」

帰り道では脳内で50音をひたすら暗唱し、街の雑踏に耳を傾ける。

「喋る時にどれくらいの間隔で人はブレスを入れているのか?どのくらいのテンポで喋って、どのくらいのタイミングでレスポンスするのか?そういった事を日々意識しながら周囲の人たちの会話を耳に入れています」

■故・渡瀬恒彦さんの凄み

『津田寛治に撮休はない』では、現実と虚構の狭間を突くかのような新境地の表現を目指した。北野武監督作『ソナチネ』(1993年)で俳優デビューしてから33年。キャリアや経験の蓄積に溺れることなく、自己ベストを更新し続けようとする姿勢を支えるもの。それは故・渡瀬恒彦さんの忘れえぬ背中だ。

10年以上続いた人気テレビドラマシリーズ『警視庁捜査一課9係』での初共演。稲妻に打たれた、という表現もオーバーとは言えない出会いだった。

「僕自身年齢を重ねると、物理的にも精神的にも体が追い付かない事を実感するようになりました。そうなるとどうしても型にハマった芝居の方が楽なのでパターン化に陥りやすい。ぶっちゃけた話、セリフは節をつけると覚えやすいんです。年配になればなるほどそちらに行きがちになる」

だが、渡瀬さんはその対極にあった。

「渡瀬さんは節をつけるようには絶対しなかった。セリフのテンポ含めて同年代の俳優とまるで違う。相手の“ニョロニョロ~”なセリフに“ズバパッパッ!”と瞬時に反応する。その瑞々しさを目の当たりにした瞬間“俺も習得したい!”と思ったんです」

今は亡き大先輩の境地に一歩でも近づけるように、今日も津田はカラオケボックスへと向かう。小脇に次回作の台本を抱えて。まさに『津田寛治に撮休はない』だ。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)

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