【今週のばけばけ】突如始まった「名探偵正木の事件簿」焼き網を盗んだのは一体誰!? 正木役・日高由起刀と丈役・杉田雷麟の魅力にも注目
今週放送中の連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)第20週「アンタ、ガタ、ドコサ。」は異例の展開を見せている。というよりも、これがふじきみつ彦脚本の、ある意味「真骨頂」と言えるのかもしれない。
……何も起こらないのだ。
松江を離れて熊本に居を移したヘブン(トミー・バストウ)と松野家。ヘブンが働き者の女中・クマ(夏目透羽)を雇い、彼女が全ての家事をこなしてしまうため、トキ(髙石あかり)とフミ(池脇千鶴)は毎日何もやることがなく、張り合いがない。司之介(岡部たかし)も漬物作りや草むしりに飽きて、家の金庫から金をくすねて相場に手を出すが、あろうことか(?)大きな利益を出してしまう。
そんな中、台所の焼き網が消えるという事件が発生。ヘブン邸に下宿している書生の正木(日高由起刀)と丈(杉田雷麟)も巻き込んで「焼き網を盗んだのは誰だ問題」の追及がはじまる。
2月19日に放送された第99回では、正木がさながら名探偵のような振る舞いで、全員に対する「犯人の可能性」を分析してみせた。この『名探偵正木の事件簿』というスピンオフドラマが始まったかのようなシーンはいかにして生まれたのか。制作統括の橋爪さんに聞いた。
■「どうしようもない、人どうしの関わり合い」から執筆のヒントを得るほうが『ばけばけ』らしい
橋爪さんは、「正直な話、第20週の作劇は、迷ったんです」と言い、こう続ける。
「モデルであるラフカディオ・ハーンは『泥棒』を題材にした怪談や民話をいくつか残していて、それらにヒントを得てはいるのですが、この『焼き網事件』はドラマオリジナルです。ハーンは松江で見つめた『日本の風景』をつぶさに記して『知られぬ日本の面影』(ドラマ内では『日本滞在記』)を著しました。熊本に引っ越してからは、ハーンもヘブンも『日本人の内面』を書いていくフェーズに移るのですが、そのきっかけとなる出来事として、『焼き網事件』のエピソードを作りました」
「ハーンが書いた泥棒の話は、屋敷に泥棒に入った男が結局何も盗まずに逃げて、『泥棒にも人の心がある』というような結末で終わる人情話が多いのですが、それをそのままドラマにするのも何か違うような気がして。本物の泥棒を登場させるよりは、『どうしようもない、人どうしの関わり合い』みたいな中で、ヘブンが何か執筆のヒントを得るという流れのほうが良いのではないかと。そんな経緯で『全員を巻き込んだ焼き網事件』ができました。言ってみれば本当に『しょうもない』ことなんですよね(笑)。でもその『しょうもない』ことを楽しめる、わかりやすいエンタメにできたらいいなと思って作りました」
■芝居の「打ち返し」がきれいな日高、独特の「間」を持った杉田
また橋爪さんは、「熊本編」からヘブン邸に身を寄せる書生、正木と丈を演じる日高由起刀と杉田雷麟の魅力についても語った。
「日高由起刀さんと杉田雷麟さん、そして第10週でトキに恋をするエピソードでスポットが当たった小谷を演じた下川恭平さんは、『松江中学の学生役』で募ったオーディションで選ばせていただきました。お三方とも間違いなくネクストブレイクの逸材…というか、既にいろんな作品で魅力と実力を存分に発揮していらっしゃいますが」
と橋爪さん。第99回で“名探偵”として活躍した正木を演じる日高由起刀については、
「日高さんはとても純粋で、どちらかというと“ド直球”なお芝居をされる方なのですが、ものすごく芝居勘がいいんです。相手が喋ったことに対して『きれいに打ち返してくる』という印象があり、本当にうまいなと思います。第99回で正木が“名推理”を披露する場面は、『会話劇だけでいかに楽しませるか』というシーン。人数が多い上に全員に台詞があって、おまけに正木にはたくさんの長台詞が。日高さんは撮影当日とても緊張していたようで、『長いよ! 台詞が長い!』と嘆いていました(笑)。でも本番では見事にこなしていました」
と絶賛する。
また錦織(吉沢亮)の弟で、正木とともにヘブン邸に下宿する丈を演じる杉田雷麟についても、
「オーディションで彼を見た瞬間に『吉沢亮さんの弟はこの人だ』と思いました。おふたりには、何かとても似た雰囲気があるんです。前の19週で、錦織と丈のシーンがいくつかありましたが、吉沢さんと杉田さんだから作ることのできる空気感がありました。杉田さんは誰にも真似のできない、独特の『間』があって、それがとてもいいんですよね。稀有な存在だと思います」
と、その魅力を語った。
■「この人ならどう盗むか」の演技合戦が繰り広げられた「焼き網事件」
また、“正木探偵”が推理を述べるシーンで流れた、それぞれの人物が焼き網を盗むイメージシーンについても裏話を明かした。
「みなさん、それぞれのキャラクターに合わせて『この人ならどう盗むか』と工夫して演じていらっしゃいました。台本上には、盗む人の名前と『焼き網を盗む』としか書かれていないので、大変だったと思いますが、みなさん楽しんで、演技合戦みたいになっていました(笑)」
第99回のラストシーンでは、おクマが焼き網をなくした責任を取って女中を辞めると申し出た。明日放送の第100回では、焼き網事件の“犯人”が明らかになるという。
(まいどなニュース特約・佐野 華英)





