友達が部活で汗を流す放課後、私は祖母のオムツ交換--バスケ部を諦めた16歳 中高生20人に1人「ヤングケアラー」の見えない現実【社会福祉士が解説】

「友達が部活で汗を流している時間、私は祖母のオムツ交換をしていました」。そう語るのは、関東地方に住む高校1年生のAさん(16歳・仮名)です。中学入学と同時に祖母の介護が始まり、憧れだったバスケットボール部への入部を断念しました。シングルマザーで夜遅くまで働く母に代わって、放課後はまっすぐ帰宅し、夕食の準備や祖母の身体介護を担う日々。部活動の話題で盛り上がるクラスメイトの輪にも入りづらく、「誰にも相談できなかった」といいます。

こうした子どもたちは「ヤングケアラー」と呼ばれ、家族の介護や世話を日常的に担っています。文部科学省と厚生労働省の調査によれば、中高生の約20人に1人がヤングケアラーに該当すると推計されており、学業や進路、心身の健康に深刻な影響が出ています。

■ヤングケアラーとは

ヤングケアラーとは、子どもの心身の成長・発達にとって過度な負担となりうる、本来大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行っている18歳未満の子どもを指します。具体的には、障がいや病気のある家族の介護、幼い兄弟の世話、日本語が不自由な家族の通訳、家計を支えるための労働などが含まれます。

■ヤングケアラーの実態

文部科学省が2021年度に実施した全国調査では、中学2年生の5.7%、全日制高校2年生の4.1%がヤングケアラーに該当すると回答しました。これは中学校で1クラスに1~2人、高校で1クラスに1人程度の割合です。

さらに深刻なのは、ケアが学業や進路に与える影響です。ヤングケアラーは家庭での役割が大きいため、放課後や休日の時間が制約され、部活動や自主的な学習、進路について考える機会を十分に持てない状況に置かれがちです。その結果、学校生活や将来設計に影響が及ぶことが指摘されています。

厚生労働省の調査(2021年)によれば、ヤングケアラーの約半数が「自分の時間が取れない」と回答し、3割以上が「睡眠時間が足りない」「勉強時間が取れない」と訴えています。

■なぜ見えないのか

ヤングケアラーが「見えない」理由は複数あります。子ども自身が家族の世話を当然と考え、自分がヤングケアラーだと認識していないケース、家庭内のことを他人に話すのをためらうケース、周囲の大人が気づいても介入をためらうケースなどです。

また、学校現場でも教員がヤングケアラーについて十分な知識を持っていない場合があり、「家庭の事情」として見過ごされることがあります。

■利用できる支援

現在、国や地方自治体、民間団体によるヤングケアラーへの支援体制の整備が進みつつあります。

まず、各自治体の相談窓口や「24時間子供SOSダイヤル」などを通じて、必要に応じて相談・支援につなぐことができます。学校現場ではスクールソーシャルワーカーを含む教育支援スタッフが支援に関わる場合もあり、学校を通じて支援につながることもあります。

具体的な支援内容としては、訪問介護サービスやデイサービスなどの介護保険サービスの利用による負担軽減、学習支援、居場所づくり、進路相談などがあります。

経済的な支援が必要な場合は、生活保護や就学援助、生活困窮者自立支援制度なども利用できます。また、障がいのある家族がいる場合は、市区町村の障害福祉課で居宅介護や短期入所などのサービスを利用できます。

オンラインでは、自治体や民間団体(NPO等)が運営するSNSやチャットベースの相談窓口やオンラインコミュニティがあり、ヤングケアラー当事者同士や専門家と匿名で交流・相談できる場が複数あります。また、こうしたオンラインサロンやコミュニティ運営は全国的に広がりつつあります。

■周囲の大人ができること

教員や地域の大人は、子どもの遅刻や欠席の増加、提出物の遅れ、成績の急な低下、表情の変化などのサインに気づくことが重要です。「何か困っていることはない?」と声をかけるだけでも、子どもにとっては大きな支えになります。

また、ヤングケアラーについて学び、正しい知識を持つことも大切です。家族を大切にする気持ちを尊重しつつ、子どもが子どもらしく過ごせる環境を整える視点が求められています。

■「このままでいい」と諦めないで

Aさんは、シングルマザーである母に気を使い、また「祖母のため」と自分に言い聞かせながら学校生活を送ってきました。Aさんがやりたいことを我慢するのは当たり前で、学校を卒業するまで「このままでいい」と思ってきました。

しかし、ある時Aさんは「本当にこのままでいいのかな…」と感じ、思い切ってスクールソーシャルワーカーに相談したところ、母と話し合いの場を持つことになりました。今後、祖母の利用する介護保険サービスの見直しや、自治体の実施する支援制度を利用することになり、Aさん自身の時間も確保できる見通しが立ったそうです。

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。

(まいどなニュース/もくもくライターズ)

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