危ない!車の前に飛び出した子猫を保護 目の瞬膜にハンデを抱えながら、愛情深い猫に成長
殺処分ゼロが進む一方で、路上で命を落とす猫は後を絶ちません。特定非営利活動法人「人と動物の共生センター」が実施した最新の「全国ロードキル調査」(2025年1月30日発表)によると、交通事故などで死亡した猫は、年間推計22万3,366頭にのぼり、殺処分数の約24倍にあたることが報告されています。
2025年6月8日、そんな現実を突きつける出来事が起きました。車の前に、1匹の子猫が飛び出してきたのです。運転していたのは、Instagramユーザー・hiro_8083さん(@hiro shima)。幸いにも小さな影に気づき、すぐに車を停めることができました。そうして保護されたのが、ハチワレ柄の子猫「まぎ」ちゃんでした。
■車道に現れた小さな命 とっさの判断が未来を変えた
その日、飼い主さんは車を運転中、生まれて間もない子猫が道路に出てくる姿を目にしました。急いで車を停め、駆け寄ると、そこにいたのは黒と白のハチワレ柄の子猫。まぎちゃんは、明らかに衰弱している様子だったといいます。
「まぎは、当時、猫風邪をひいていて、ひどい鼻水が出て、目やにで目がふさがっていました。周囲を見渡すと、遠くに母猫とその子猫らしき姿もありましたが、こちらを気にかけている様子はなく、立ち去ってしまってーーまぎの健康状態が著しく悪かったため、『この状態では、育児放棄されたのかもしれない』と思いました」
突然の出来事に、母猫を追うべきかどうか迷いもよぎりました。しかし、腕の中のまぎちゃんは、今にも消えてしまいそうなほど弱っていたといいます。さらに、その場には別の危険も潜んでいました。
「ちょうど上空を、2羽のトンビが旋回していたんです。まぎを狙ってのことかはわかりませんが、このまま放っておけないと思いました。まぎを連れて車に乗り込み、帰宅したんです」
飼い主さんは猫と暮らしていたこともあり、比較的落ち着いて対応できました。その日は自宅でできる限りのケアを行い、まぎちゃんの様子を見守りながら一夜を過ごし、翌日、すぐに動物病院へ向かいます。
「生後40日ほどで女の子、目の瞬膜が開ききっておらず、このまま目が塞がってしまうかもしれないと言われました」
さらに、自力での排尿が難しい可能性もあると告げられ、不安は尽きませんでした。
「いろいろ心配は絶えませんでしたが、まぎは帰宅後、自分で排尿してくれました。今も目の瞬膜は完全には開いていませんが、保護当時に想定していたよりは開いています」
こうして、まぎちゃんは飼い主さん家族の一員に迎えられました。あたたかな家の中で、手厚いケアを受ける日々が始まったのです。
■目の瞬膜に問題が… 懸命なケア、そして先住猫との対面
まぎちゃんは、決して万全な状態ではありませんでしたが、確かな生命力を持っていました。家には先住猫たちがいたため、体調が回復するまでは隔離して過ごすことに。ケージを用意し、療養生活がスタートしました。
「ワクチン接種後、ようやく先住猫たちと対面できると思った矢先、まぎの食欲がなくなってしまい、自分でミルクなどを飲まなくなってしまいました。そのため、シリンジでの給餌を始めると、しばらくしてペースト状のご飯も自分で食べることができるように。それからは、どんどん元気になりました」
少しずつ体力を取り戻したまぎちゃん。元気になるにつれて、最初に用意したケージは手狭にーーそこで飼い主さんは、まぎちゃんが快適に過ごせるよう、ケージを3階建てにDIYするなど工夫を重ねたといいます。
「ケージが広くなると、まぎは上へ下へと元気に動き回るようになりました」
そうしてガラス越しに顔を合わせていた先住猫たちと、いよいよ会わせてみることにしました」
当時、家には黒猫の母猫と、その子猫6匹が暮らしていました。最初は母猫が威嚇していたものの、子猫たちはすぐにまぎちゃんを受け入れてくれたそうです。
「数日後には、母猫も自分のご飯を譲ってあげるなど、まぎを受け入れてくれました」
■甘え上手な美猫に成長… 命を預かる覚悟と誓い
まぎちゃんは現在、生後推定6カ月。優しい飼い主さんと先住猫たちに囲まれ、にぎやかで穏やかな毎日を送っています。
「まぎは、とても賢くて天真爛漫です。先住猫たちの懐にすんなり入ってかわいがられ、まぎもまた先住猫たちを受け入れて心を開いています。一緒に寝る相手をちょくちょく変えるなど、八方美人ぶりを発揮中です」
すべては、あの日の予想外の出会いから始まりました。小さな体を抱き上げ、家に連れて帰ると決めた瞬間の覚悟を、飼い主さんは今も忘れていません。
「命に手を伸ばした以上、虹の橋を渡るそのときまで添い遂げます。子猫を産んだり、外に出たりはさせてあげられませんが、それでも不自由なく過ごせるように努力するからね」
飼い主さんの膝の上でくつろぐまぎちゃんの表情は、とても穏やかです。かつて道路で命の危険にさらされていたことが、もう遠い過去のように感じられるほど。これからも、たくさんの愛情に包まれながら、幸せな猫生を歩んでいくことでしょう。
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)





