映画「栄光のバックホーム」でトレーナー役 上地雄輔の原動力は喜んでくれる誰かの笑顔 「受け手なんです、キャッチャーなので」
俳優、アーティスト、タレント……多彩な顔を持つ上地雄輔の尽きることのないエネルギーは、どこから湧き上がってくるのだろう。
映画『栄光のバックホーム』(11月28日公開)で、不屈の魂を持つ主人公・横田慎太郎に寄り添うトレーナー・土屋明洋を演じた上地は、自らのバイタリティの原動力について、驚くほどシンプルで、温かい答えを口にした。上地の心を突き動かすのは、創作への渇望や自己表現の欲求ではない。ただひたすらに、目の前の“人”の笑顔だった。
■ すべての原動力は「人が喜ぶ顔」
「僕は人が好きなんです」と笑顔で語った上地。「野球が好きとか、芝居が好きという以上に、人が好きで。その現場がどれだけ楽しくなるか、楽しんでもらえるか。ライブもそうですが、歌うことが好きというより、そこにいる人たちが喜んでいる顔が好きなんです」と強調する。
「きれいごとにも聞こえるかもしれない」とも言う。だが、その言葉には確固たる信念が宿っている。仕事である以上、責任は伴う。しかし、それ以上に、出会った人々と共に笑い、楽しい時間を共有したいという純粋な想いが上地を突き動かす。時代と共にエンターテインメントの受け取られ方も変化する。だからこそ、挑戦に終わりはない。
「僕が携わる人たちには、せっかく出会ったのだから、一緒に笑ったり、楽しい時間を過ごしたいなと思う。その気持ちがあると、何をしても飽きることがないんです。自分の好きなことをやり続けるのは大変なこと。僕はそれよりも、その人たちが好きだからこれをやっている、ということが多いです」
■“受け手”に徹する生き方
その哲学の根底には、彼の野球経験、特に「キャッチャー」というポジションが深く関係している。「自分がこれをやりたい」という主張よりも、相手が投げかけるものを受け止め、どう活かすか。彼の生き方は、まさに捕手のそれだ。求められる役割があり、喜んでくれる誰かがいるのなら、どんな努力も厭わない。
「受け手なんです、キャッチャーなので。『僕がこれをしたい』という思いはあまりないんですよ、ありそうで(笑)。バッティングセンターにも行かないし、ゴルフをやっていても打ちっぱなしにも行かない。ただ、そこに大会があったり、誰かが喜んでくれそうだったら、めちゃめちゃ練習するし、役作りもする。トレーニングやボイトレ、ダンスをしたり」
自分自身が快感を得るためではない。ステージの上で輝く自分に酔いしれるためでもない。観客が、仲間が、スタッフが喜ぶ顔を見て、初めて彼の心に充足感が満ちてくる。エンターテインメントとは、徹頭徹尾、人のためにあるべきだという矜持がそこにある。
「歌っていて気持ちいいとかはなくて、そこでみんながうれしそうな顔を見て、やっと気持ちよくなり始めるんです。誰かに喜んでもらう、ということに重きを置いているので」
上地の最初の観客は、テレビの前の視聴者やライブ会場のファンではない。共に作品を創り上げる監督であり、共演者であり、スタッフたちだ。「上地雄輔を使ってよかった」と彼らが思ってくれるか。仲間の期待という名のサインに、どう応えるか。その真剣勝負の先に、多くの人の心を動かす作品が生まれると信じている。
「最初は監督やスタッフさんに『こいつを使ってよかったな』と思ってもらえるか、いい意味で期待を裏切るようなお芝居ができるか。お客さんもそうですけど、みんなの期待をどうやって乗り越えられるかが大事。役というボールを投げていただいて、『オッケーです、こうやって料理します』みたいな」
映画『栄光のバックホーム』は、横田慎太郎さんという人間を通して、観る者の心を激しく揺さぶる。上地が演じたトレーナー・土屋もまた、横田さんに魅了され、喜びや苦しみを分かち合い、支え続けた人物だ。上地雄輔という人間の根底に流れる「人が好き」という温かい想いが、この役に血を通わせ、物語に深い感動を与えている。
(まいどなニュース特約・磯部 正和)





