走り切ったのは親。植物は枯れ果て、ペットボトルロケットは忘れられ…自由研究は誰の宿題!?
夏休みは楽しいけど、考えるだけで憂鬱になる大量の宿題が課されるのが一般的。特にラスボスは自由研究です。その舞台裏では、子どもよりも親が汗をかき、涙をのみ、時に家庭内の火花を散らしながら完成へとこぎつけるドラマが繰り広げられています。
■「今年は子ども一人に任せられるかも」と思ったけれど
▽埼玉県在住Nさん(40代母)+小4男子
今年の夏、Nさんの小学4年生の息子が選んだ自由研究は「段ボールでつくる未来の街」でした。平面で設計図を書き上げ、意欲的なスタートにNさんも夫も「今年は子ども一人に任せられるかも」と期待を抱きます。しかしその希望は、工作初日にあっさり崩れました。
カッターで思うように線が切れず、息子は泣きわめき「もう無理!」と放り出します。もともと手先は器用ではないNさんが手を貸すと、「もういい!ママは下手!自分でやる!」と怒る息子。「手伝ってほしいけれど、自分の思い通りにしたい」という矛盾に振り回され、Nさんの疲労は増すばかりでした。
■ホウセンカの観察日記は2日で終了
▽東京都在住Tさん(30代母)+小2男子
生活科の授業で春に種まきをし、学校での観察記録の続きが夏休みの宿題になっていました。Tさん宅は高層マンションに囲まれており、ベランダの日当たりは一日のうち数時間だけ。気温35度が続く中、息子に毎朝の水やりを促すと「えー暑い、明日でいいじゃん」と抵抗し、観察ノートは白紙のまま。育つのは草ではなく、Tさんの焦燥感でした。
さらに追い打ちをかけたのが、10日間の帰省。枯れる不安から水を入れたバケツに鉢を浸けて出発しましたが、帰省先で何度も「枯れてないかな…」と頭をよぎります。案の定、戻ると全て枯れており、息子は茶色くしなびた茎だけを記録。夏休み明け、土の入った鉢だけを持って登校しました。
■ペットボトルロケットは夢半ばで放置
▽千葉県在住Yさん(30代父)+小3女子
図書館で借りた図鑑に影響され、小学3年生の娘が熱望した「ペットボトルロケット」作り。理系の腕が鳴ると意気込んだYさんでしたが、制作途中で娘は「部品が足りない」「空気入れが壊れてる」と不満を並べ、手を止めてしまいます。
酷暑で公園実験もできず、進捗ゼロのまま8月に突入。ロケットのことを忘れた娘に「これ、どうするの?」と尋ねても「もういいよ、別のにする」と素っ気ない返事。努力が泡と消えた瞬間でした。
ちなみに8月後半にさしかかったころ、「このままでは何も完成しない」と危機感を覚えたYさんは深夜に工作を再開。そこへ妻が「手伝おうか?」と加わりますが、やり方に違和感を覚えたYさんが指摘を重ねるうち、思いがけず夫婦の口論に発展しました。自由研究は夫婦間のチームワークを試す装置だったのかもしれません。
■終わったと聞いていたはずの、読書感想文の地獄が残っていた
▽関東地方在住Sさん・(30代母)+5年生男子
夏休みの最終日。夏のドリルも、自由研究もなんとか形になり、安堵していたSさんでしたが、息子が終わったと言っていた最後の宿題「読書感想文」が未着手だったことが発覚。「だって、何の本読めばいいかわかんなかったし何書けばいいかわからないし」と開き直る息子に、Sさんは怒りよりも絶望を隠せません。
読むどころか、選びすらしていない本の感想をどう書けばいいのでしょう。結局、「とりあえず読んだフリで書いてみよう」という奇策で、タイトルが決まったのは22時。「まだ読んでない本の感想」。その大胆さに一瞬爆笑が起きるも、すぐに反省と疲労が押し寄せます。下書きもせず原稿用紙に直接書く息子を見て、感想文ではなく作文だろうと思いながら、内容を確認せず提出しました。
■そして迎える新学期、晴れやかな子どもたちの顔
始業式の朝、自由研究や宿題を抱えて登校する子どもの背中を見送りながら、親たちは思います。「あの努力はすべて、私たちのものだ」と。「子どもが主体的に学ぶ時間」という理想が込められていますが、現実は家族総出のプロジェクトになることも珍しくありません。
長く、ようやく終わった夏休み。来年もまた同じことが繰り返されるのでしょうか。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)





