「長生きは、するもんだねぇ~」18歳からカフェの看板猫になった三毛猫 ライブで“にゃー”と合いの手、愛された2年3カ月と最後の抱っこ

神奈川・横須賀市にある「PARK(パーク)」は昭和の頃、横須賀の追浜で行列ができた“伝説のチャーシュー”をリアルに再現している、昼呑み可能なカフェ。

お店で2年3カ月間、看板猫として活躍してくれたのが、ねぇねちゃんだ。2022年7月21日、ねぇねちゃんは多くのファンに愛されながら21年3カ月のニャン生に幕を閉じた。

■先住猫と同じ“三毛猫”を迎えて…

2001年4月、半年前に先住猫を亡くした飼い主さんは息子さんが多頭飼いを希望したため、2匹の三毛猫を迎えた。ねぇねちゃんは、獣医師の紹介で出会った子だ。

「数匹いた中から、息子が選びました。亡くなった先住猫と同じ三毛猫を選んだんです」

当時、ねぇねちゃんは離乳したばかりだったが、お迎え初日から息子さんのお姉ちゃん的存在になり、「ねぇね」という名前に。1日前に迎えた同居猫(三毛猫)と共に、スクスク育っていった。

「おっとりとしているけれど頑固なところもあって、爪切りの時にはシャー。顔は洗わないし、グルーミングもしない子でした(笑)」

■18歳でお店の“看板猫”に就任!

飼い主さんは定年退職から1年後の2020年、カフェ「PARK」を開業。定年退職後、ベッタリ甘えながら生活していたねぇねちゃんのメンタルや人見知りしない性格を考慮して、お店の看板猫になってもらおうと考えた。

当時、ねぇねちゃんは18歳だったが、お店での生活にはすぐに慣れてくれ、厳しいコロナ禍にはお客さんを呼ぶ、招き猫になってくれたという。

「ねぇねに会いに来てくれる方がたくさんいました。『猫カフェの猫より触らせてくれる』と、近所の小学生が毎日来て、ブラッシングをしてくれました」

小学生からお小遣いで買った猫用帽子をプレゼントされたこともあるという。

人懐っこいねぇねちゃんは、率先してお客さんのもとへ。声をかけられたり、撫でられたりされると、隣に座っておもてなしをした。

「男性のほうが好きだったかも(笑)そっけなくされると、自ら離れていきました」

営業中にお昼寝することはあったが、サービス精神旺盛なねぇねちゃんはお客さんがいる間は極力、接客しようと頑張ってくれていた。ウトウトしている時、飼い主さんは猫用ハウスに連れて行っていたが、ねぇねちゃんは眠気と闘いながら、お店のホールに居続けてくれたという。

また、お店でライブが行われる時には最前列を陣取り、「にゃー」と合いの手。ライブを大いに盛り上げた。

「家でお留守番していた頃は、帰宅するとよだれを垂らしてスリスリしてくれたのに、お店で色々な方にかわいがってもらえるようになると、私への態度はあっさりとして…(笑)でも、お留守番していた頃より、活き活きしていました」

■ストレスのない“看板猫生活”のための配慮と工夫

ねぇねちゃんが看板猫に就任してから、飼い主さんはお店で寝泊まりするように。怪我や骨折などしないよう、店内の環境を見直しもした。

また、自然災害などで自分たちに何かあった時のため、近所の方にお店の鍵を預け、対応を頼んでもいたそうだ。

「お店が長期休業になる時には、自宅へ連れ帰っていました。食事のお世話や介護は、やりがいがありました」

シニア期とハイシニア期では必要なケアも変わってきたが、飼い主さんはねぇねちゃんのお世話ができることが幸せだった。

ねぇねちゃんは20歳になった頃、前足に猫砂がつくと座りこんで粗相するように。その姿を見た飼い主さんは、ペットシーツを広めに敷くようにしたそう。そうした細やかなケアもあり、ねぇねちゃんは病気知らずで、21歳の誕生日を迎えることができた。

■21歳で看板猫を引退…3カ月後に虹の橋へ

だが、21歳の誕生日を迎えた2022年4月頃から、ねぇねちゃんは体調に浮き沈みが見られるように。そこで、飼い主さんはねぇねちゃんの看板猫引退を決断した。

自宅では、1日置きに点滴。食欲不振に効果があるとされているサプリも与えた。

「6畳の部屋にはペットシーツを敷きつめて、トイレがしやすいように工夫しました」

別れがやってきたのは、看板猫を引退して3カ月ほど経った2022年7月21日。ねぇねちゃんは飼い主さんに抱かれて、静かに息を引き取った。

ねぇねちゃんは亡くなる3時間前まで食事もトイレも普通にできており、直近の検診でも異常がなかった。

「でも、亡くなった日、私は隣で寝ているねぇねを見て、なんとなく今夜、逝ってしまうと感じたんです」

そこで、そばにいたねぇねちゃんを抱き上げると、軽く痙攣。そのまま、スッと旅立ったのだ。

「あの時、抱き上げていなかったら、まだ生きていたのかな?それとも、気づかない間にそっと逝ってしまったのかなと、今でも考えてしまいます」

■他の猫との触れ合いで「ペットロス」を癒す日々

ねぇねちゃんの葬儀日には、ちょうどお店でライブが開催される予定だった。そこで、お客さんと共に歌で見送り、お骨上げも行うことに。すると、25名ものファンが葬儀に参列し、60個以上の花束が寄せられた。

「私の誕生日会やお店の周年記念が霞んでしまいました(笑)こんなにもみなさんに愛されて、幸せだったと思います」

お店には今も「ねぇねちゃんコーナー」が設けられており、その場所は賑やかなままだ。

後悔がゼロではないが、先住猫たちを看取った経験があったからこそ、ねぇねの時は迷いや不安、後悔のない看取りができた。そう話す飼い主さんは今、出張や旅行時にお客さんの猫のお世話を請け負ったり、月1で開催するライブに登場する兄妹猫と触れ合ったりしながら、心の傷を癒している。

「年を重ねるごとに愛猫を失う悲しみに耐えられなくなっているように感じるし、年齢的な問題もあるので、新たな子をお迎えするという選択はありません。あの子じゃなきゃダメという気持ちもありますしね」

用意したオムツも結局、数枚使っただけの親孝行な子だった。もっと、お世話をさせてほしかった。飼い主さんはねぇねちゃんとの日々を振り返り、そう愛を溢す。

「ねぇねは同居猫がいた時は控えめでしたから、ひとりだけになって私を独占でき、お客様にもかわいがってもらえたので、『長生きは、するもんだねぇ~』と言っているはず。私も、幸せでした」

サービス精神旺盛だった、ねぇねちゃん。天国でも持ち前の明るさと人懐っこさで、多くのファンを掴んでいるだろう。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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