マッチングアプリから始まる現代版“マッチ売りの少女”の衝撃結末 目を閉じて見た幸せの幻想は…灯火ではなく、一粒一粒の“静かな効き目”【漫画】
児童文学のジャンルのひとつである童話。幼い頃に親から読み聞かせてもらったり、自身で読んだりと、人によって童話に触れた機会は様々でしょう。2025年4月30日に発売された、漫画家のきたしまさんによる『現代を生きる童話少女』は、世界的に有名な“おとぎ話”を現代版にアレンジした一冊。
なかでも『マッチ売りの少女』をもとにしたエピソード『マッチングアプリの少女』は多くの人の関心を集めたようで、以前X(旧Twitter)に投稿されると、5000以上の「いいね」が寄せられています。
■みすぼらしい服装をした少女…裏の顔は「売上げNo.1」
ある寒い冬の日、ボロボロの赤いスカーフや衣服をまとった「アンナ」のもとにメガネの男性がやってきました。というのも2人はマッチングアプリを介して会う約束をしており、男性はプロフィールの写真よりも幼い外見をしたアンナに驚いたものの、彼女の要望でファミリーレストランに。そして、好きなだけ注文したアンナは満面の笑みで、テーブルに並べられた料理を味わうのでした。
そして、トイレで席を外し、それっきり戻ってこなくなったメガネの男性。お金を持っていないアンナはなすすべもなく待っていると、大男がやってきて「安心して オレが払っといてあげたから」と助けられます。
その後、アンナが大男に連れられて向かった先は、繫華街の外れにあるビジネスホテル。そして、ある一室に入ると、そこにはホームレス少女たちが待機していました。
大男の正体は、少女たちに案件を紹介する悪い大人だったのです。また、少女たちは報酬として大量の処方薬を受け取るのでした。
そんななか、報酬を受け取った後で新人の少女が先輩に集客の方法を尋ねました。すると先輩の少女は「効率いいのはマッチングアプリかな」「売上げNo.1のその子に聞きなよ」と言います。そして指先の方に目をやると、そこにはアンナの姿が…。
一方、メガネの男性はアンナを心配して戻ってきたものの彼女を見失ってしまい、街中を駆け巡っていました。彼がようやく見つけたアンナは、道端で座り込み大量の薬を飲んで“あり得るはずもない幸せの幻想”に身をゆだね、嬉しそうに笑みを浮かべているのでした。
読者からは「想像以上にダークだったけど、考えさせられる作品だった」「まさに現代版って感じで面白い」など好評の声が。そこで作者であるきたしまさんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。
■物語誕生のきっかけはダジャレで描いたイラスト?
-同作を描いたきっかけを教えてください。
最初は「マッチ売りの少女」と「マッチングアプリの少女」のただのダジャレで描いたイラストでした。そのうち、もしマッチ売りの少女が現代を生きていたら、どんな生活をしてるんだろう?きっと歌舞伎町にいるのでは…と空想が膨らんでいきました。
-同作の中で、特にお気に入りの場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。
アンナがODをして、別の世界線を生きている幸せな自分を思い浮かべるシーンです。普通の子なら普通に経験できるような幸せな光景と、アンナの置かれた状況の落差に、描きながら心を抉られました。
-ダークな部分に切り込んだ部分もありますが、描くにあたって取材をされたりしたのでしょうか?
関連書籍や、ニュース、YouTube動画などを漁りつつ、歌舞伎町に詳しい事情通の方に聞いた話も盛り込みました。実際に歌舞伎町に足を運んで、街の背景や雰囲気も反映させました。
-読者にメッセージをお願いいたします。
このお話は書籍『現代を生きる童話少女』の導入部分で、この他にも様々な少女が登場します。ホス狂いの白雪姫や、港区女子なシンデレラ、整形依存のピノキオなどなど…アンナとメガネの男性のその後の顛末も描かれます。書籍、電子書籍どちらも全編フルカラーで発売中なので、よろしかったらぜひ!
(海川 まこと/漫画収集家)
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