「一緒に行けたらいいですね」 社交辞令が通じないママ友 「できない約束なら最初からしないで!」と突然の逆ギレ
新生活が始まってから約3カ月。生活のリズムが整い、緊張感も少しずつやわらいできたころです。親同士の関係も子どもを通じて築かれていくなかで、気を遣いながら過ごしている人も多いのではないでしょうか。そんな中で、ちょっとしたやり取りを「約束」と受け取る相手に振り回されたという声もあります。北海道に住む20代のJさんも、保護者同士の付き合いに慎重だったからこそ、社交辞令が通じなかった相手とのトラブルに悩むことになりました。
■「一緒に行けたらいいね」が“約束”に変わるとき
通い慣れた幼稚園を卒園し、Jさんの子どもは地元の小学校に入学しました。同じ幼稚園から進学した子はほとんどいなかったため、親子ともに新しい人間関係のスタートとなりました。保護者会や登下校の送り迎え、学校行事などを通して、自然とほかの保護者との関わりが増えていきました。
その中でJさんは、子どもと同じクラスのママであるTさんと親しくなりました。家が近く、子ども同士も仲良くなったことから連絡先を交換し、「今度遊びましょうね」と話すようになりました。最初のうちは「習い事は何かしていますか?」「勉強系の習い事はしているんですか?」といった会話も、情報交換の一環だと受け止めていました。
ゴールデンウイーク明けのことです。Tさんから「夏休みに公開されるアニメ映画を一緒に観に行きたいですね」と言われ、Jさんは「一緒に行けたらいいですね」と軽く返しました。夏休みの予定はまだ決まっておらず、それぞれの実家への帰省も控えていたため、都合が合えば一緒に行きたいという気持ちでした。
■スイミングスクールで…まさかの“叱責”電話
夏休みが近づく頃、市民体育館で開かれる短期集中スイミングの話題になりました。Tさんから「一緒に申し込もう」と誘われ、Jさんの子どもも参加することになりました。講習は人気のコースで先着順のため、受付開始日に市民体育館の窓口に並ぶ予定でしたが、当日Tさんが体調を崩しました。Jさんは「一緒に申し込んでおきますね」と言い、Tさんの子ども分も申し込みました。
ちょうどそのころ、2人目の子どもが8カ月になろうとしていたJさん。夏休みが始まると、真昼のプール通いはJさんにとっては想像以上に過酷でした。講習時間が赤ちゃんのお昼寝時間と重なることもありました。そんなとき、偶然同じコースに申し込んでいた幼稚園時代の親友ママが、「赤ちゃんがいるんだから、うちの子と一緒に車で連れて行ってあげるよ」と言ってくれたのです。
ありがたい申し出に甘え、親友の親子に子どもを託すことにしました。そして、それをTさんに伝えたところ、思いがけない反応が返ってきたのです。
「えっ? 一緒に行くって言ってたじゃないんですか。約束を破るんですか?」と、怒った口調で電話がかかってきたのです。
■「できない約束ならしないで!」の一言に絶句
その電話ではTさんが怒ったまま話し続け、Jさんが言葉を挟む間もありませんでした。
「スイミングもそうですが、前に話していた映画のこともあるのに、一緒に行ってくれない。できない約束なら、最初からしないでください!」
子どもの学校生活に影響が出てはいけないと考えたJさんは、何度も謝罪し、なんとかTさんの怒りは収まりました。しかし、次第に「これは本当に“約束”を破ったことになるのだろうか」と疑問を感じ始めました。Jさんにとって「一緒に」という言葉は社交辞令のつもりでしたし、そもそもTさんの言う“約束”はJさんの都合を無視してまで守るべきものなのでしょうか。
■「社交辞令」が通じない相手との距離のとり方
この一件をきっかけに、JさんはTさんと距離を置くようになりました。子ども同士は引き続き仲良くしていましたが、理不尽な理由でJさんを叱責したTさんとは無理に深く関わる必要はないと感じたのです。
日本人の会話では、相手への配慮から本音を曖昧にする「社交辞令」が多く使われます。「今度ランチでも」「タイミングが合えば」など前向きな表現でも、必ずしも実行を前提としているわけではありません。ただし、こうした曖昧な返答が誰にでも通じるとは限りません。相手との認識にズレがある場合、誤解やトラブルに発展することもあります。
■親同士の「健全な距離感」が子どもの安心にもつながる
子どもを通じた関係性だからこそ、ママ友とのトラブルは避けたいものです。しかし、すべての関係を円滑に保つことは難しいのが現実です。
今回のように「社交辞令」が通じない相手に出会った場合、早い段階で無理のない距離感を探ることが大切です。相手が悪いのではなく、価値観や会話の前提が異なるだけなのです。
「約束を守らない親」として責められた出来事は、今でもJさんの胸にしこりを残しています。しかし同時に、「誰とでも必要以上に仲良くしなくていい」という、親としての大切な気づきも得ることができました。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)





