傘を忘れた子、雨の中「走って帰る」と判断→保護者が怒鳴り込み「風邪をひいたら責任を取ってくれるんですか?」 若手教員が直面した理不尽と学び
小学校でのある雨の日、傘を忘れた児童が「走って帰る」と判断して下校したことをめぐり、保護者が学校に怒鳴り込む事態が起きました。担任の元教員・こうめいさん(Xアカウント:@yumenochikara39)が2025年5月にXへ投稿した体験談に、教員の置かれた厳しい現状が反映されているとして共感の声が広がっています。このエピソードから、学校と家庭の関係についてどんなことが見えてくるのでしょうか。
こうめいさんは現在、「親育て先生」として子育てに役立つ教育エピソードをSNSで発信されています。「大型連休が明けて、しんどさを感じる教員も多いでしょう。僕の過去の経験が、現在保護者との関係に頭を抱える教員の解決の一助になれば…」との思いで、このタイミングで投稿をしたそう。
子どもの安全と成長を共に願うはずの教育現場において、教員と保護者の対立はなかなか避けては通れないものです。現場の教員たちは、日々どのような苦悩を抱えているのでしょうか。
ある日、こうめい先生が勤務していた小学校で、3年生の児童が傘を忘れたまま下校。学校には置き傘があり、児童は借りることもできましたが、自ら「走って帰る」と判断して帰宅しました。
ところがその夜、児童の保護者が「風邪をひいたら責任を取るのか」と職員室に怒鳴り込み、「子どもを持ったことがない先生には親の気持ちがわからない」と、担任であるこうめい先生に謝罪を求めました。
こうめい先生は当時の心境をこう振り返ります。
「“傘を借りる”という選択肢があることも知ったうえで、傘を借りずに“帰る”という判断をしたのは子ども自身にも関わらず、保護者がクレームを言ってくるのはおかしい。それだったら、最初から傘を忘れないように自宅から持たせてくれと思いましたね」
説明しても理解は得られず、「威圧的だ」と非難され、対立は深まっていきました。
その場に介入したのが教頭でした。教頭はまず「お子さまが雨に濡れて心配ですね」と保護者の不安に寄り添う姿勢を示し、児童の通知表に書かれた良い面を具体的に伝えながら、児童の判断力や自立心を認める形で「次回は事前に傘の確認をお願いします」と提案。保護者の感情を和らげたといいます。
こうめい先生はその時の気づきをこう語っています。
「当時の私は、相手(保護者)の考えが間違っていると思い、自分の主張を通そうとしていました。若手の教員にありがちな落とし穴として、相手の主張を認めることは自分の負けになると思い込みがちな節があります。相手がどのような思いを持って発言しているのか考え、しっかりと受け止める。今では、これがどんな時でも大切なことだと思っています」
■保護者とどう向き合うか
教育現場では、保護者からの強い要求に教員がどう対応するかが常に課題となっています。とくに若手教員にとって、保護者との関係性に引け目を感じる場面も少なくありません。
こうめい先生は「モンスターペアレント」とされる保護者にも子どもを思う心があるとしたうえで、理不尽な要求として一方的に処理しない重要性を指摘します。
「保護者の苦労や思いを聞き理解することが大切。教育のプロと子育てのプロがお互いの弱みを補い合い、子どもの幸せに向けて協力すべき」
また、感情的な対立を避けるためにも、第三者の介入が重要だと強調します。
「教員は自分のできることとできないことを明確にし、毅然とした対応を取る。説得が難しい場合は管理職などに相談し、学校全体で対応を統一することが大切」
最後に、保護者との理想的なコミュニケーションの取り方について、こう語っています。
「教員は教育のプロですが、子どものことをすべて理解しているわけではありません。保護者とベクトルを合わせ、それぞれの役割を明確にすることが子どもにとって最善です。普段から“親にしかできないこと、自分にしかできないこと”を意識したコミュニケーションを心がけ、相手の本心を汲み取る力を磨くことが大切。相手が子どもでも同様で、日常的に傾聴を意識することで、子どもだけでなくその家族との信頼関係も深めることができます」
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