子猫の譲渡で虐待、2匹死傷…「なぜ起きた?対策は?」地域情報サイト運営側に聞いた

昨年2月に沖縄県うるま市の自宅アパートで子猫2匹を繰り返し殴打するなど虐待して死傷させたとして、動物愛護法違反と器物損壊の罪で略式起訴された当時ホテル従業員の20代男性が罰金70万円の略式命令を受けた事件。きっかけは、地域の情報サイト「ジモティー」を通じて猫の保護活動をしている個人ボランティアが子猫の里親を希望する男性と出会い、正式な譲渡を前に子猫との相性が合うかどうか見るために男性の自宅に預けてトライアル中に起きたもの。

同サイトでは、これまでも猫の譲渡が行われた際、虐待などを目的に「里親になります」と偽って猫を譲り受けようとする“里親詐欺”と疑われるトラブルが起きています。今回の事件について、サイトの運営元「株式会社ジモティー 」(本社:東京都品川区)はどう対応し、受け止めているのでしょうか? 事件が起きた背景や今後の改善策なども含め、担当者に聞きました。

■ジモティー「譲渡先が悪意をもって利用された場合には事件が起こる可能性がある」

──貴サイトを通じて子猫の譲渡をめぐる事件が起きたことを、どう受け止めているか?

「今回、悪意をもって当社のサービスが利用され、動物の命が失われる事態が発生したことは誠に遺憾です。当社は『地域の今を可視化して人と人の未来をつなぐ』という経営理念のもと、サービスを通して地域の中での支え合いができる社会を創ることを目指しております。その中で里親も大きな地域の課題であり、積極的に解決に向けて取り組むべきであると考えております。

一方で、命を扱うカテゴリではございますので、前提としてより安心安全に譲渡が行える場として、安心して利用ができるルールの整備は必須であるという認識を持っております。これまで、里親カテゴリにおいて安全にサービスを使っていただけるよう、本人認証を強化する、同意いただく項目を増やす、啓発コンテンツを設けるなど、様々な対策を強化して参りました。今後、利用者それぞれがより健全に使っていただける場となるよう、継続して改善を続けていきたいと考えております」

──今回の事件の対応は。

「本件につきましては、譲渡主のボランティア様から通報をいただいたのち、譲渡主のボランティア様より改めて警察の捜査中ということで弊社から譲渡先の利用者に対して連絡することを控えるように依頼を受けました。警察の捜査中ということで捜査の妨げにならない、かつ譲渡主への危害が及ばないように、今回は特例として弊社からのアクションは控えることといたしました。

また譲渡主のボランティア様には当該機関から捜査協力の依頼がございましたら、私どもの保持している情報を提供させていただき、問題の解決のためのご協力をさせていただく旨をお伝えしました。現在は、該当の人物のアカウントの利用制限及び、それらに利用された身分証や電話番号など認証情報では再度登録ができないような制御を実施しております」

──子猫たちを虐待した直後も、他の譲渡主から貴サイトを通じて子猫を譲り受けようとしたようですが。

「本件の譲渡完了後、譲渡主によって譲渡完了のボタンを押されていないことから、該当の人物(男性)が問い合わせできる状態となっておりました」

──またどうして事件が起きてしまったのか、背景についてどう考える?

「身分証の提出や譲渡契約書の締結などを行っていただいた場合でも、譲渡先の利用者によって悪意をもって利用された場合には事件が起こる可能性があると考えております。利用者の皆様には常日頃から注意を払ってご利用をいただいており、大変感謝しているのですが、動物がより安心して里親とともに暮らせるように、今後も慎重に譲渡先をお選びいただけますと幸いです。

また、そういった事件が繰り返されないためにも、もし疑わしいことがあった際には些細なことでも当社までご相談いただけたら。弊社ではカスタマーサポートといった相談窓口や通報機能を設けお問い合わせには全て事実確認をさせていただいた上で、利用アカウントの停止、譲渡者への身分証の開示、警察や弁護士など第三者機関に相談し、積極的に問題解決に向けて協力させていただくなど解決に向けたあらゆる対応を必要に応じて行っております」

──虐待した男性から被害を受けたという申告について、被害に遭ったボランティアさんのほかには。

「他の通報はございません」

   ◇  ◇

■サイト運営側は、利用者同士の譲渡契約書の締結をあらためて啓発

ジモティーでは、やむを得ず手放すことになった犬や猫などの命を「救って欲しい方」と「救いたい方」をつなぐ場として、「里親カテゴリ」を運営。現在、年間約9000頭の犬や猫が同サイトを通して譲渡されているとのこと。

サイト内の「里親カテゴリ」については、投稿者、問い合わせ者ともに会員登録時に性別・生年月日の登録、電話番号または身分証による本人認証などを実施。投稿者側には犬猫の性格や特徴、健康状態、避妊・去勢手術の有無、ワクチン接種、募集に至ったやむを得ない経緯などの必須事項の記載をお願いしています。さらに、問い合わせ者側にも飼育環境、家族構成と年齢層、自宅訪問可否などの記載とともに、飼育放棄をしないこと、譲渡した側やジモティー側が希望した場合は譲渡を受けた動物の様子がわかる写真を送付することなどの同意が必須となっているといいます。

さらに、利用者同士で譲渡契約書(※)を取り交わすことも必須条件として促しており、多頭飼いによるトラブルを防ぐため投稿者側が譲渡完了のボタンを押すと、一度譲渡を受けた人が複数回問い合わせすることができないような仕組みにもなっており、また原則1度サイトで里親になったら、2度目の譲り受けはできないようになっているそうです。

(※)【譲渡契約書】該当動物を愛玩動物として生涯育成し、適切な食料、医療行為、生活環境を提供することなど譲渡に関わる契約を結ぶもの。このほか、脱走防止のための管理を怠らない。万一該当動物が逃走し、行方不明になった場合、速やかに甲に連絡をし、警察、保健所、動物愛護センターに届け出ることなどが記載されている。

  ◇  ◇

■沖縄のボランティア「使う側とジモテイー側との連絡の双方向性が弱い」

昨年2月初旬に沖縄県うるま市の自宅アパートで子猫2匹を繰り返し殴打するなど虐待して死傷させた事件。ボランティアがトライアルを行うため男性に子猫2匹を引き渡したその直後に事件が起きました。子猫は兄弟で、命を落としたのがチャムくん、大けがをしたのがヨリくん。当時2匹は生後約3カ月でした。

ボランティアによると、男性に譲渡先の候補としてトライアル実施を決めたのは「脱走防止の対策や先住の子猫を見て、また同居する人がいると申告があったり…最終的に優しそうな人物だと判断した」とのこと。しかし、トライアル期間中はLINEなどで状況報告をするよう男性にお願いしたものの、子猫たちを引き渡した当日夕方になっても連絡がなく、ジモティーに連絡。男性にも電話し、ようやく翌日の昼過ぎに連絡が取れたそうです。そこで送ってきた写真に写っていたのは血が付いたチャムくんの姿…これは危険な状況だと思い、すぐにトライアルを中断させようとチャムくんたちを引き取りに行って虐待が発覚したといいます。

当時ジモティー側の対応について、ボランティアは「窓口がありますがようやく連絡することができてもこちらからの訴えがどう取り扱われたか?という、不安がありました。取り組んでいただけたようですが、訴えた本人、例えば私にどう対応しているのか?というタイムリーな連絡がなかなか難しかったと思います。使う側とジモテイー側との連絡の双方向性が弱いと感じます」と話します。

■サイト運営側への要望 東海の保護ボランティア「里親詐欺疑いの緊急問い合わせフォームの設置を」

こうしたジモティーを通じて里親募集を行い、譲渡先で子猫の虐待が疑われるトラブルは、2021年2月下旬にも起きています。被害に遭った保護ボランティアによると、同年2月初旬ごろにキジ柄の雄猫と三毛柄の雌猫2匹の子猫兄妹(当時生後4カ月ほど)を保護したあと、ジモティーを介して東海エリアで里親を募集。「2匹とも引き取る」と問い合わせてきた人物に譲渡することを決めたものの、譲渡してから4日後、譲渡先の人物から瞳孔が開いていると見られる子猫の写真が送られてきたとのこと。すぐに譲渡先に急行し110番通報で駆け付けた警察も子猫を見せるように問い詰めましたが、譲渡先の人物は「逃げた」と答えるだけ。結局、子猫の遺体が見つからなかったそうです。

「同居人がいるから猫が1人になる時間は少ない。緊急時のため、親の連絡先と住所も教えておきます。在宅で仕事をしていると言っていたが実際は仕事もしてなければ同居人もいない。親の連絡先も全て嘘でした。私の自宅に見学に来てもらってから譲渡先の自宅にも環境確認で行きましたが、猫トイレなども準備されており、一生大事にすると言われ見抜けず…おそらく子猫は殺されてしまいました」と当時を振り返る保護ボランティア。今回起きた沖縄の事件をはじめ、自身のトラブルを経験してサイト運営側にこう訴えます。

「まず1点目は譲渡完了ボタンのタイミング、また押し忘れ対策。トライアル中の場合、いつボタンを押すべきかが課題だと思います。ただトライアル中に虐待する人も少なくありません。それに、トライアル中に次の応募を狙ったりする虐待者もいるようですから、その対策も考えてほしいです。次に2点目は、譲渡契約書を実際交わしているのかどうか。全て当事者間任せになっており、譲渡契約書の徹底化を図るため契約書を交わした後にサイト側に送信する義務なども設けてもいいかもしれません。

さらに3点目ですが、同居人がいる場合の証明書やペット可の自宅である証明書なども譲渡主側が求めてサイト側に提出させることも必要ではないかと感じます。最後に4点目。これは、里親詐欺疑いの緊急問い合わせフォームの設置です。現在の問い合わせ先だけでは通報した時点でどれだけタイムリーに対応してくれるか疑問に思います。緊急時用の里親詐欺疑いの緊急問い合わせ、対応フォームがあるとありがたいです。またチェック項目をたくさん作って対策をしているとサイト側は書いてますが、もう少し里親詐欺についてイラストを取り入れてわかりやすく伝えるページを追加で作ったり、今回あった事件のような具体的な事例を載せたりして注意喚起してもらうなど安心して使えるサイトになってほしいですね」

  ◇  ◇

■サイトなどを通じた動物の譲渡で気を付けることとは?

譲渡の際に気を付けることについて、これからサイトなどを通じて動物の譲渡などを検討されている方にも読んでいただければ幸いです。

▽独身者への譲渡(結婚していると虚偽の申請の可能性もあるので、必ず譲渡の際はご夫婦揃って同席してもらえるようお願いする)。

▽譲渡契約書を必ず書いてもらう。

▽譲渡後、本人と動物との写真を撮ってもらうなど連絡報告を長期にわたり依頼。

▽ペット飼育可のアパートやマンションかどうか確認を行うため、譲渡予定先に事前に足を運ぶ。

▽物腰が柔らかく、動物好きだと装っている人もいる。例えば、「親族に動物病院関係者がいる」「トイレを準備している」「ペットタワーもこれから買う」などと信用させるようなことを言う人には要注意。

インターネットによる動物の譲渡は、お互いのモラルや信頼関係によるところが大きいです。“命”を粗末に扱うような取引が行われないよう切に願います。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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