「諦めてください」紙袋に入れて捨てられた子猫、懸命なケアで生き延びた 15歳になった今は認知症に「歳を重ねた姿も愛おしい」

伊達政宗の幼名から名前を拝借した梵天くんは、15歳のシニア猫。まだまだ元気なおじいちゃん猫だが、生後間もない頃、あまりに悲しい方法で遺棄され、命を落としかけた過去がある。

■紙袋に入れられ遺棄されていた子猫

出会いは、15年前。梵天くんは兄弟と共に紙袋に入れられて、遺棄されていたそう。兄弟猫はみな命を落としてしまい、一番元気だった梵天くんだけが生き残った。

事情を聞いた飼い主・泰さんのお母さんは保護した友人から譲り受け、梵天くんをお迎え。しかし、猫用ミルクだけでは十分な栄養が取れなかったようで、梵天くんは次第に衰弱。

医師からは「諦めてください」と言われたが、命を紡ぎたくて、家族はネットで情報を調べつつ、手探り状態で必死に看病をした。

「猫の母乳に近いミルクを作って、飲ませました。体を温めたり、汚れた毛をぬるま湯であらったりもし、四苦八苦した覚えがあります」

幸いにも、ミルクを変えてから梵天くんは獣医師も驚くほどの回復ぶりを見せてくれた。家族は「きっと兄弟分のパワーをもらって、元気になったんだ」と喜んだという。

若かりし頃の梵天くんは構うと怒り、構わなくても怒るというツンデレさん。

「興味ないフリをして、後からやんちゃをするんです。亡くなってしまいましたが、同居猫のワイルドとは喧嘩が絶えず、私もよく巻き込まれました」

そうした“たくましい一面”がある一方、梵天くんは水に濡れるのが好きではないのに、幼少期にお風呂で体を洗われていたからか、よく浴室に入ってくるなどのユーモラスな姿も見せてくれたという。

命を紡ぎ、梵天くんのニャン生を見守ってきたからこそ、飼い主さんは動物の遺棄に対して強い憤りを感じる。

「遺棄する人を汚い言葉で罵りたい気持ちはありますが、それでは何もしない人間になってしまい、人のことが言えない。だから、募金などに協力して、猫たちの生きやすい環境作りをしていきたいです」

■認知症になっても愛猫の生き方を尊重したい

年を重ねる中で、梵天くんは認知症を発症した。ボーっとすることが増え、同じところをぐるぐる回る、トイレ以外で排尿するなどといった行動がみられ、性格も変化。よく鳴くようになり、やんちゃさがなくなって触られても怒らなくなった。

「もともと、ずっと同じ場所で眠る子だったので、認知症になったことに気づいたのが遅かったです。でも、彼は彼。生き方を尊重したい」

現在、梵天くんは同居猫のチビちゃんと穏やかな日々を謳歌している。

「チビとは最初、仲が悪かった。ワイルド亡き後、梵天は優位に立とうと、チビにちょっかいを出していました。でも、お互いに歳が近かったからか、年月が経つにつれ、争いが減り、今では毛づくろいし合う仲になりました」

添い寝してくれたり、膝に何時間も座ったりしてくれるようになったので大変だけれど、それもかわいい。そう、自分を愛でてくれる家族のもとで梵天くんは、ゆっくりと歳を重ね続けていく。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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