『舞いあがれ!』後半戦、衝撃の展開はこれからどうなる!? 制作統括に訊いた

 父・浩太(高橋克典)の急逝を機に、怒涛の展開を見せる“朝ドラ”『舞いあがれ!』(NHK総合)。今週放送された第15週「決断の時」では、ヒロインの舞(福原遥)が母・めぐみ(永作博美)を支えながら家業のねじ製造会社「IWAKURA」の再建に挑戦すると決意した。波瀾万丈の物語の今後の見どころを、制作統括の熊野律時さんに訊いた。

■今は「泥まみれになった紙飛行機」。これから舞いあがっていきます

──年末年始の不穏な展開と浩太の死、そしてめぐみと舞の決断に戸惑っている視聴者も多いと思います。

熊野律時さん(以下、熊野) ごもっともだと思います。でも、このドラマは『舞いあがれ!』というタイトルなので、ここからどう「舞いあが」っていくのかをぜひ見ていただきたいですね。オープニングタイトルの紙飛行機も泥まみれになった後ちゃんと飛び上がっているので、やがては、ああいうことになっていきます。

──「少女編」「人力飛行機編」「航空学校編」と続いてきた、前半のカラフルな“各編”からガラリと一変しました。

熊野 「夢見る青春時代は終わりを告げました」というところですね。前半戦は「わかりやすいステップアップ」のエピソードで、「自分のやりたいことにまっすぐ向かうヒロイン」を描いてきました。でも、そのまますんなり「夢が叶ってよかったね!」となるかというと、人生なかなかそうは運ばないですよね。夢を持って何かを目指している人って、とても素敵だけれど、そう易々とはいかないのが現実です。大変なことも沢山あるけれど、苦しみや辛さを乗り越えて、いかにして幸せになるのか。「どういう道のりをたどるのか」という部分こそが、見ていただいている多くの方に、より深く共感していただけるのではないかと信じて作っています。

──バブル崩壊の余波が広がる1994年に始まり、2008年のリーマンショック、そしてこの先の未来にはさらに経済の停滞、格差社会、コロナ、戦争と様々な苦難が待ち受けています。この時代背景を選んだ理由は?

熊野 「現代劇の朝ドラをやりたい」という企画を立ち上げたときに、視聴者の皆さんが実際に体験した時期でありながら、ちょっと前の話で、ちょうどいい距離感を保って振り返ることができるものとして、この時期の設定にしました。バブル景気からいったんガーンと落ちて、がんばって上がっていって、でもまた落ちて……という、非常にアップダウンの激しい時代です。主人公・舞の人生のアップダウンとうまく重なっていくことで、視聴者の皆さんのリアルな体験とも、重ねて見ていただけるのではないかという思いがありました。

■舞は「大事なものを持ち続けながら、選択をしていくヒロイン」

──母親とともに実家の工場の再建に取り組むことになりますが、舞を「自己犠牲のヒロイン」として描いているわけではないんですよね。

熊野 そういうキャラクターではないです。舞はとにかく、自分の身近にいる大変な思いをしている人を放っておけない。なんとか「してあげたい」じゃなくて、なんとか「したい」と思う人なんですね。それは決して「自己犠牲」ではなくて、彼女にとって「今いちばんの重大事」。だから、そちらを選んでいく。何かを捨て去って生きていくのではなくて、「大事に持ち続けながら」選択をしていくヒロインです。そして、その選択が意外なところでつながって、最終的には「舞いあが」りますから。「何がどうなるか」というのは言えないのですが。

──IWAKURAの物語を描くために、町工場の現場に綿密な取材をされたとうかがいました。何か強烈に印象に残るエピソードや、作劇に活かされた逸話などはありますか?

熊野 東大阪の製造業を中心に、京都・奈良・東京も含めて100社以上の中小企業に取材しましたが、とにかく皆さんエネルギッシュですね。今ドラマで描いているのと同じように、大変な時期のアップダウンを乗り越えてきた社長さんたちですから、皆さん「ものづくり」への思いにすごく溢れているんですよ。取材した中には女性の社長さんも何人かいらっしゃって、それぞれに個性的で魅力的な方ばかりでした。子育てしながら会社経営をやらなければいけなかったりとか、男性の社長とは違った角度のお話が聞けたりして、大変興味深かったです。

 めぐみさんと同じように、いろんな事情から突然会社を継がなければならなくなった社長さんもいらっしゃいました。やはり最初はめぐみさんみたいに「無理や」と思うんだそうです。それでも、目の前にある課題をひとつひとつクリアしていくしかない。そうして必死に駆けずり回っているうちに、ひとりひとりの従業員や、その会社が何年もかけて作ってきたものをなんとかして守りたい、いや、「守るんだ」という気持ちになっていくそうです。そういった部分のリアリティを、できるだけドラマの中にも盛り込みたいなと思っています。

■後半戦は、舞が地に足の着いた「真の大人」になるステップ

──今後の展望と、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

熊野 舞の人生もドラマも、今まさにどん底にあります。まだまだ甘さの残る舞が「結局あなた、ただの『お手伝い』じゃないの?」という問いを突きつけられているところ。現実社会の本当の厳しさに直面した舞が、ここからどう行動していくのか。これまで積み重ねてきた「舞らしさ」──人の気持ちを大事にする資質や、人と助け合って困難を乗りこていこうとするというキャラクターの根幹は貫かれつつも、地に足の着いた「真の大人」になっていきます。

 このドラマの中で、折にふれ「『強さ』とは何か」を描いてきました。舞がこれから本当の「強さ」「たくましさ」を身に着けて、周りの人たちと一緒に幸せになっていく姿を見守っていただければ嬉しいです。『舞いあがれ!』というタイトルには、大きな意味で「みんなが手を携えて人生の困難を乗り越えていく」という願いもこめられています。ひょっとしたら「ちょっと回り道だったかもしれない」と思うようなことも、のちのち全部ちゃんと生きて、活かされたうえで、当初は思い描けなかったようなことが最終的には実現して、着地していきますので、楽しみに見ていただければと思っております。

(まいどなニュース特約・佐野 華英)

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