「航空少年団」を知っていますか? 航空と宇宙について学びながら、夢をはぐくむ 全国で13団体が活動中
みなさんは「航空少年団」をご存知だろうか。航空と宇宙に関する知識を学び、団体活動を通して楽しみながら規律、リーダーシップ、問題解決力を養う青少年団体で、全国に13団体が活動しているという。そのひとつという「関西航空少年団」を訪ねてみた。
■地元のホテルを借りて合宿も
突き刺すような日差しが降り注ぐ典型的な夏空となった7月25日、大阪・りんくうタウンにあるスターゲイトホテル28階のアウトドアレストランで、テーマ曲「Dear Sky」の軽快なリズムに乗って、子どもたちがダンスの練習をやっていた。
左胸に翼をあしらった徽章をつけた真っ白い制服(活動服)に身を包んだ彼ら彼女らは、前日からこのホテルで合宿活動をやっている「関西航空少年団」の団員たちだ。団員は中学生・高校生が多く、男女比は半々といったところ。
制服の肩には、入団歴によって線の色と本数が異なる肩章がついている。シルバーの線が団員で、ゴールドの線が役員だ。ダンスの練習では、高校生だろうか、シルバーの3本線をつけた女の子が団員たちにキビキビと指示を送っていた。ほかの団員たちも、練習をするスペースを空けるためにテーブルを移動させる作業で、指示を受けるまでもなく自ら積極的に動いていた。
このような子どもたちが集う関西航空少年団は、全国に18団体(うち5団体は活動を休止中)ある航空少年団のひとつ。大阪・泉佐野市、関西国際空港エリアを中心に活動している。
関西航空少年団の活動目的を、団長の鈴木啓介さん(26歳)は次のように語る。
「私の言葉で表現すれば、団員に夢をもってもらうこと。団の活動を通じて、団員らに何かを感じてもらい、それが最終的に夢になったら私たちの大きなミッションが成功したと考えています」
夏といえば、野外活動でキャンプをしたいところだが、昨年につづいて今年もコロナ禍の影響で叶わなかった。宿泊を伴う活動が制限される中で「感染症対策に最大限配慮しながら、リアリティ溢れる活動ができる場所を」と考えられたのが、スターゲイトホテルでの合宿だった。
団員や役員らが泊っている各部屋と、名古屋航空少年団と同岐阜支部をリモートで結んで航空教室を開いたり、関西の団員たちがカメラをもって関西空港周辺を歩きながら観光案内をしたりする「ハイブリッドツーリズム」活動など、全員が一カ所に集まらなくても行えるプログラムが考えられたのだ。
ハイブリッドツーリズムは、コロナ禍が収束してインバウンドが回復した後のことを見越した実証実験でもあるという。
■大阪の空にブルーインパルスを呼びたい
航空少年団は、一般財団法人「空港振興・環境整備支援機構」に本部が置かれており、大阪には関西航空少年団のほか、伊丹空港を拠点に活動する大阪航空少年団がある。
関西航空少年団は、関西国際空港が開港した1994年に誕生した。活動内容は、小型飛行機やヘリコプターでの飛行体験、パラグライダー飛行体験、雪上スポーツ体験、水上スポーツ体験、キャンプ合宿、航空施設見学、茶道研修、奉仕活動、ハイキングなどを行っている。
2020年にはPeachの旅客機を1機借り切って、関西空港を離陸して西へ飛び、福岡・熊本を大きくまわって、四国の南側を飛んで関西空港へ戻ってくる遊覧飛行も行った。
じつは関西航空少年団には、団員数の減少で活動を休止していた期間がある。今年は活動を再開して5年目。団員数も増えて、現在は役員・団員などあわせて95人(2021年の新入団員18人を含む)という大所帯になった。鈴木団長がいう「夢」を現実にした団員はまだ出ていないが、5~6年後が楽しみだという。
「夢を叶える子が出てくると信じています。航空業界へ進んでくれたら嬉しいけれど、他の道でも、もちろん嬉しいです」
団員の声も聞いてみた。中学2年生の江川和輝君は、小学4年生のとき母親から勧められて入団したという。
「合宿とかいろいろな経験ができることと、人とのかかわりが増えることが楽しいです」
江川君は小6のとき、6~9人の団員をまとめる班長を務めたことがある。
「新入団員をどうまとめるかを考える中で、班長ってこんなに難しいのかということを、あらためて気づくことができました」
これからのことを尋ねると「団は続けていくつもりです。将来の進路は、CA(客室乗務員)か料理人になりたい」という答えが返ってきた。緊張しながらも、自分の言葉でしっかり話してくれた。
さて、関西航空少年団としての目下の夢は、大阪の空にブルーインパルスを呼ぶこと。団員たちがその想いを伝える手紙を書いて防衛大臣あてに出したところ、航空幕僚監部の広報室長がわざわざ訪ねてきてくれたという。
関西航空少年団の顧問で泉佐野市議会議員の大和屋貴彦さんは「ダメもとで出した手紙が本当に届いて、広報室長が訪ねてきてくださるなんて」と興奮気味に語る。ブルーインパルスが団員たちの夢を乗せて、大阪の空を飛ぶ日は近いかもしれない。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)