「もうヤメましょうよ…」ソロキャンプブームの陰で「焚き逃げ」横行、釘も放置 片付け続ける愛好家らの思い

 屋外で「密」を避けて楽しめるとして、コロナ禍で一気に拡大したキャンプ人気。設備の整った有料キャンプ場だけでなく、より野趣を求めて山や森、河原などに出向く人も増えています。その陰で問題化しているのが、ゴミや燃えた炭などの放置。誰が汚したとも知れぬその跡を、ただ黙々と片付け続ける愛好家たちがいます。

 もうこんなこと、ヤメましょうよ-。

 河原に黒々と残された炭の燃えカスに、焼け焦げた太い釘の数々、食べ残しに空き缶…。キャンパーらで作る任意団体「日本単独野営協会」(横浜市)のTwitterには、メンバーたちが清掃イベントなどで拾い集めた、ゴミや「焚き逃げ」跡がいくつも載っています。

 代表理事の小山仁さん(44)に聞きました。

-この釘は、一体?

「キャンプブームで焚き火をする人も増えていますが、薪代軽減のため工務店さんや運送会社さんから建築廃材や解体パレットを安く仕入れたり、貰ったりする方が多くいらっしゃいます。そこに刺さっている釘を抜かずにそのまま燃やすため、焚き火跡に釘だけが残ります。近くで子どもさんが遊んでいることも、清掃中の方が踏んでケガをされたこともあります」

-炭の燃えカスで地面や河原が真っ黒になっている所も…。

「私たちは『焚き逃げ』と呼んでいますが、炭は炭素という安定した元素なので、これ以上分解することはなく、理論上は土に還りません。ですから持ち帰りが必要なのですが、昔は一部で焚き火跡の炭は埋めて帰るものだと教えていたところもありました。現在それが蓄積され、ある野営地では、雨が降るとあちらこちらから汚い炭が浮き出てきて、テントもろくに張れない状態になっています。これは、フロンガスの問題に似ていて、昔は直ちに被害が出るわけではないので、それでいいと思われているものでも、何年、何十年と経ってから致命的な問題が発覚することもあります」

-キャンプブームで、ゴミの不法投棄も増加している?

「最近は安く手に入るテーブルや椅子、テントなどのキャンプ道具が多いため、特に大学のサークルなどで、お金を出し合って買ったものを野営地に持ち込み、帰る際に『これ、誰が持って帰るの?』という話になり、結局、1人千円くらいしか出していないし『面倒くさいから、そのまま置いて行っちゃおうぜ』となることが多々あります。そのため、野営地には時々、キャンプを楽しんでいた人が忽然と姿を消したかのように、丸々キャンプ道具を残したまま帰ってしまっているという、昔にはあまりなかったことが起きています」

■心も体もボロボロで働き続け…思い出した野宿の魅力

 バブル崩壊直後に就職し「寝る間も惜しんで働き続け心も体もボロボロになっていた」という小山さん。10年ほどそんな生活を続け、ようやく自分の時間が持てるようになった時、思い出したのは学生時代に公園などで野宿した時の何とも言えない解放感でした。「学校や仕事、家事などで大変な思いをしていても、お外でなら何も考えず、ゆっくり過ごせる」と小山さん。

 「もちろん家の中でもできるという意見はあると思いますが、お外の天井がない所でゆっくりしていると、ストレスはそのままお空に抜けていくんです」と小山さん。「ソロ」というと「友達いないの?」などと言われがちですが、「客観的に自分自身を見つめられ、一人でしか感じることのできない気持ちに触れることで、日常に疲れ切った自分に癒しを与えることができるんです」と魅力を語ります。

 そして野営地に出かける中で直面したのが、ゴミの問題でした。目を覆わんばかりの惨状に、全国各地でキャンプ場の閉鎖や禁止区域の拡大が相次ぐ中、「マナーの悪い人がいることを嘆いたり、批判したりするだけでは、現状は変わらない」と自ら清掃活動を始めましたが、一人ではすぐ限界に。そして「ソロ」の「仲間」を募ることを思い付き、2018年5月、「日本単独野営協会」を立ち上げました。

 最初は見向きもされなかった活動も、イベントなどを通じて少しずつ拡散し、今では全国に約1万3千人の仲間ができ、今も増え続けています。粘り強い活動は行政にも次第に認められ、拾い集めた大量のゴミの処分に協力してくれる自治体も出てきたといいます。

■「正義」の怖さ…だからこそ「ただ、拾い続ける」

 同協会のメンバーは、目の前で焚き逃げや不法投棄を見ても、注意はしません。ただ黙々と、誰かが残したゴミを拾い、跡を片付けるだけです。それは「正義を振りかざすこと」を禁じているから。「コロナ禍の自粛警察もマスク警察も、元はといえば『正義』のはず。でも自分が正義だと思い込んでしまうと、自分の正義に溺れてしまい、誹謗中傷や人を傷つけることも厭わなくなってしまいかねない」と小山さん。「それに『逆ギレ』されて、1万3千人の会員さんを危険にさらすことはできません」とも。

 そしてこう続けます。「だからこそ、僕たちは淡々と、拾う。片付ける。Twitterでは愚痴を言ったり注意喚起もしたりしますが、そうやって僕たちの思いが広がって、いつもゴミのない美しい野営地になれば、焚き逃げも不法投棄もできなくなる、しようとすら考えなくなる。その日が来るまで、強気でプライド高く、誇りと威厳を持って拾い続けたい」

 キャンプがこれだけ人々の心を引き付けるのは、きっとコロナ禍の窮屈な社会や、仕事、日常の疲れが癒されるから。その空間を求めたのが人なら、守るのもまた、人でしかないのかもしれません。

(まいどなニュース・広畑 千春)

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