「外国人のようなイケメンが好き」「留学生なのに日本語が上手」あなたもしてるかも?目に見えない差別「マイクロアグレッション」

「外国人のようなイケメンが好き」「留学生ですか?日本語が上手ですね」--日常でよく聞こえる会話だが、実はここに差別が潜んでいることにお気づきだろうか。「自分は差別をしない」「平等が一番」と考えている人でも、何気ない言葉で人を傷つけている恐れがある。そんな「小さな差別」をマイクロアグレッションという。

いじめや暴力などの表面的にわかりやすい差別とは違い、言葉を発する方に悪意がないことが多く、差別意識なく相手をモヤモヤとした気持ちにさせてしまう。立命館大学国際関係学部の金友子准教授に話を聞いた。「マイクロアグレッションとは、日常の何気ない言動のうち、相手の属しているマイノリティー集団を貶めるようなメッセージです」と話す。

■「外国人=〇〇」という決めつけ

では冒頭の「外国人のようなイケメンが好き」「留学生ですか?日本語が上手ですね」という発言の何が問題なのか。そもそも「外国人=イケメン」「外国人=留学生=日本語に不自由」であるとは限らない。後者に関しては、日本生まれである可能性や、長く日本に住んでいるから問題なく日本語を話せるのかもしれない。つまりここには、発言者が「見た目が外国人である人は、こんな性質を持っている」という偏見やステレオタイプがあるのだ。

国や人種に限らず、性別によるマイクロアグレッションも多い。金准教授にも経験があるという。大学に勤務し始めたころのこと。ある男性教員が金准教授を事務スタッフだと勘違いし、「このコピー機が壊れているから修理しておいてほしい」と話しかけてきたという。男性に悪意はなかった。しかし、これは「女性は責任ある役職についていない」というステレオタイプによって生じたものであった。

他のケースとして、他国留学中に「あなたには表情がないね」と言われたことのある日本人や、結婚の意志がないにもかかわらず「女性は結婚と出産をしてこそ一人前だ」という価値観を押し付けられる女性など。さまざまな種が日常に散りばめられている。

■マイノリティは、既にともに生きている。誰でも加害者になり得る

おそらく、「そんなにも気を使わないといけないの?」と考える人もいるかもしれない。そういったところに、マイクロアグレッションの難しさがある。

発言を受けた方がモヤモヤしたとしても、発言者に「そんな悪い意味じゃない」「傷つく方が敏感なだけ」と言われてしまうと、指摘するのもはばかられるものだ。そしてそのまま複雑な思いを消化することなく、心の中にとどめておくケースが多いため、精神的な健康にも悪い影響を与えかねない。

では、どうすれば回避できるのか。金准教授は、「どこにでもマイノリティに属する人がいる、と思っておくことが大切。ある点からみるとマジョリティの人間でも、別の視点からみるとマイノリティになることもあるのです」と話す。

「相手の立場に立ってコミュニケーションをとること。『普通はこうだ』というステレオタイプを押し付けないこと。そして誰かが小さな攻撃にあっていたら、『今のはちょっと』と言える勇気をもつこと。そうすれば、少しずつ人と社会は変わっていくのではないでしょうか」

■金友子准教授 関連書籍

「日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション--人種、ジェンダー、性的指向:マイノリティに向けられる無意識の差別」デラルド・ウィン・スー 著 マイクロアグレッション研究会 訳

(まいどなニュース特約・桑田 萌)

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