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ウーバーイーツ、人生やり直すきっかけに…5年の生活保護を脱した男性 「問題多いが自分には合っていた」

「達成感がすごい。まだちょっと気持ちがふわふわしていますが、感無量です」

大阪・西成で暮らす32歳の男性Aさんは、27歳から5年間受給していた生活保護を8月1日付で廃止し、自力での生活に踏み出したばかり。25歳で双極性障害と診断され、入退院やグループホームでの共同生活の末に西成に辿り着いて1年4カ月。2月末に始めた「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の配達の仕事で生計を立てられるようになったことで自信を取り戻し、今は充実した日々を送っているという。

■発症、入退院の果てに西成に辿り着く

Aさんは兵庫県西宮市出身。福祉系の専門学校で学び、卒業後は介護福祉士として高齢者施設で働いた。

ところが24歳の頃、転勤による環境の変化からか双極性障害を発症。寝床から起き上がれなくなり、歯磨きや入浴すらままならなくなったかと思えば、躁状態になると今度は誇大妄想に取り憑かれてほとんど眠らずに動き回る。そんな激しい浮き沈みに苦しんだという。

仕事も辞め、1年ほど入退院を繰り返したAさん。家族との関係も悪化し、主治医の勧めで生活保護を受けてグループホームに入った。その後はホームレス支援の団体を頼り、30歳で日雇い労働者が集う街、西成へ。3畳一間の部屋に入居し、作業所などで働きながら細々と暮らしてきたそうだ。

■ウーバーイーツの収入で生活保護を抜け出す

そんなAさんがウーバーイーツの配達員をやってみる気になったのは、その日の体調に合わせて働けそうだとふと思ったから。「自分は薬のせいで朝は起きづらいので、昼から働くのも自由なスタイルに魅力を感じた」。自転車や、“あの”四角いバッグなど、商売道具一式を揃えるのは手痛い出費だったが、やってみると仕事自体は順調で、3月は8万円、4月は13万円ほど稼ぐことができたという。

「予想以上に手応えがあったので、『この調子なら自立できるのでは』と思い、生活保護から脱することを目標にしました。ウーバーイーツに登録する前は、こんなことになるなんて思ってもみなかった。働いてちゃんと収入を得られたことで、自分でも信じられないほど気持ちが前向きになったんです」

ケースワーカーと相談し、3カ月後に受給を廃止すべく、Aさんは5月から本腰を入れて働くように。大阪のミナミを拠点に、昼から夕方、さらに夜の時間帯に配達をこなし、なんと5月は27万円、6月は25万円、7月は26万円の売り上げを達成したという。

「寝て起きて、あとはずっと走っている感じ。早く生活保護を抜けたいという焦りも相当あったと思います」

7月下旬には数年ぶりに自分の力で物件を契約することができ、広いアパートに転居。そして生活保護の廃止が決定した。

「生活保護は一度慣れてしまうと、就労する気力が奪われたりして、抜け出すのはなかなか難しい。正直、そういう人の気持ちもわかります」とAさん。「でも幸い、僕には病気を抱えながらも無理のない範囲で働けるウーバーイーツとの出合いがあった。感謝しかありません」

■「全肯定しようとは思わないが」ウーバーイーツに感謝

ウーバーイーツに関しては、個人事業主と位置づけられている配達員の病気や怪我に対する補償、運営の透明性などの点で、数々の問題が指摘されており、配達員が労働組合を結成して待遇改善を求めている。またここ数カ月は、一部の配達員のマナーの悪さがSNSなどで批判的に言及されるケースも目立った。

Aさん自身、「もちろんウーバーイーツを全肯定しようとは思いません」と念を押しつつ、「でもよく知らない人に悪く言われているのを見ると、正直いい気持ちはしないですね」とぽつり。「少なくとも僕は人生をやり直すきっかけをもらえました。誰にでもお勧めできる働き方ではありませんが、そういう思いで携わっている人がいることも知ってほしい」

Aさんは疎遠になっていた家族や友人との関係も改善。親の食事代を払ったときには、しみじみと喜びを感じたそうだ。10年、20年先はわからない。だが「あと1、2年はこの仕事を続けて、これからの人生設計をきちんと考えたい」と話している。

ちなみにAさんはTwitterで「西成フランスパンUE大阪」(@uber2020_2_29)を名乗り、配達員の何気ない日々を発信中。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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