名物の1000万円ピアノはいずこへ? 北新地のクラシックライブサロンが6月閉店…気をもむ人が続出

 大阪・北新地、くつろぎと癒しを求めて訪れたくなる音楽ライブサロン。その名も「サロン・ドゥ・アヴェンヌ」。クラシックやジャズのライブ、お客様出演のイベントまで、多くの音楽シーンが生まれてきた。しかし2020年6月末、ビルの再開発や新型コロナウイルスの影響で、多くのファンに惜しまれつつ閉店した。人気を博した理由の一つは、店内に堂々と佇む「グランドピアノ」の存在でもあった。世界有数の貴重なモデルだが、閉店すると楽器はどこに行ってしまうのか?同店の沢村美香さんに聞いた。

 「アヴェンヌ」は、ピアニストだった沢村さんの「若手アーティストの演奏の場と、人々の出会い・交流の場を作りたい」との思いから2005年にオープン。まるで隠れ家のようなその店は、御堂筋沿いのビルの地下1階にあった。カーテンの向こうには、沢村さんやスタッフの温かい笑顔、上質な空間、美味しい料理とワイン、そして大きなグランドピアノが客を待っていた。

 使用楽器は、世界3大ピアノの一つ「ベーゼンドルファー」のModel 200。沢村さんが1000万円近くで購入したという、音楽の都・ウィーンが育んだ名器だ。ベーゼンドルファー製のピアノは、製作に膨大な手間ひまがかかり、200年ほどの歴史のうち5万台しか生産されていない。そんな「一品もの」と沢村さんとの出会いは、まさに一期一会だった。

「『一流のピアノが欲しい』と浜松まで足を運び、スタインウェイやベヒシュタインなどの楽器を試弾しました。その中で、たった1台ベーゼンドルファーがあったんです。ちょうど当日店頭に並んだもので、来る日がずれていたら手に入らなかったかも」 

 ベーゼンドルファー製のピアノは、弾きこなすのが難しいことが特徴の一つ。またサロン内は演奏者と客席が近いことも相まって、プロのピアニストでも「どんな舞台よりも、ここが一番緊張する」と話していたという。

 しかし、むしろ演奏者のチャレンジ精神を掻き立てたのか、たくさんのピアニストが楽器を鳴らした。国内有数の演奏家はもちろん、多くのピアノ愛好者が「このベーゼンドルファーを弾きたい」とやってきて、多くの音楽が紡ぎ出された。

 しかし6月いっぱいで閉店。12月まで存続する選択肢もあったが、新型コロナウイルスの影響もあり、「今がベストタイミングだと思って」と決断を下した。

 沢村さんが、閉店間際に多く尋ねられた質問があるという。それは「ピアノはどうするの?」。世界有数の上等な楽器は、もう音を出すことはないのか。

「実はグランドピアノを保管してくれる専門業者の倉庫があり、今はそこで眠っています」

 ではその後、ピアノはどこへ行くのか。

 「詳しくは未定ですが、やはりたくさんの人に弾いてもらいたい。今は豊中市の地域活性に力を入れているので、そこで音楽を取り入れた憩いの場を作りたいと思っています。早く倉庫から出してあげたいです」

 15年愛されてきたグランドピアノ。再び音の鳴る日が待ち遠しい。

(まいどなニュース特約・桑田 萌)

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