スマホのチャージトラブル…「磁気の具合が悪いですね」!? 従業員による詐欺の背景に社内教育の不備も

 このところ、店舗で働く従業員による詐欺事件が頻発しています。

 今年6月、アルバイト先のスーパーで、他人のクレジットカード情報をメモするなどして盗み取り、不正に使っていたとして16歳の少年が警視庁により逮捕されています。その期間は数カ月にわたり、1000万円以上の金額を使っていました。

 昨年も、レジ打ちをする中で、客から受け取ったクレジットカードの情報や名前を覚えておき、通販サイトで商品を繰り返し購入していた30代のパート従業員が詐欺の疑いで逮捕されています。この従業員のメモには、1000件以上のカード情報が残されていたということです。また、ステーキ店の店員がカード情報を書き写して、ホテルの宿泊代やタクシー代に不正使用していたとして逮捕。金額はやはり1000万円近くに上っています。

 ここで考えなければならないのは、こうした従業員の不正行為に、なぜ数カ月も店側が気づけなかったのかということです。確かに、スーパーなどのレジ打ち業務はとても忙しいという事情もわかりますが、カード情報が抜き取られたかは、私たち利用者の側では即座に気づくことができません。その不正にいち早く気づき、防止する一躍を担っているのは、お店側の管理体制であると考えます。そこに不備があるから、つけ入られた形で犯行がなされてしまうのではないでしょうか。

 また、このところアルバイトやパート従業員による犯罪が目立ちます。ここには、お客様のお金やカード情報を受け取っているという、働く側の意識の欠如もあると思います。つまり、お客様のことを第一に考えた行動をどうとるべきかという社内教育が不足していると考えます。今や、クレジットカードなどの情報がネットなどの闇のサイトで売買される時代です。もしかすると、今も従業員のなかに、個人情報を売っている人物がいるかもしれません。店側が忙しさにかまけて、社内教育を疎かにすれば、犯罪行為が行われてしまいかねない状況なのです。

 私も度々、この企業の社内教育は大丈夫か?と思う場面に遭遇します。

 ある日、駅の券売機にスマートフォンを置き、お札を入れてお金をチャージしようしました。しかし、なぜかピーという音が鳴り、入金できませんでした。すると、横の小窓から、若い男性が顔を出しました。私がスマホを見せると、「しばらくお待ちください」というと、ぐいっと、私のスマホをつかみ、室内に持っていきます。

 「おいおい、お借りしますが、よろしいですか?」の一言もないのか。

 そして、戻ってくるなり、「入金はされていません」と言われて、スマホとお札を戻してくれました。先のような不正事件が頻発している昨今、こちらの「了解なし」にスマホを持っていくなど、利用者がとても不安になる行為です。

 もう一度、同じ券売機にスマホをかざして、お札を入れてみました。やはり、入金ができません。すると今度は、若い女性の駅員が顔を出しました。

 今度は、しっかりとスマホを握り、彼女の前に出して、「お金は戻ってきましたが、やはり、入金できませんね」と言いました。

 すると、女性は、まじまじとスマホを見ながら言います。

 「あ-、磁気の具合が悪くて入金できないようですね。よくあるんですよ。それ、取り換えた方が良いかもしれませんね」

 「はい?」

 私の使っているのはカードではないので、磁気とか、関係ないですけど。「それとも、あなたは分割払いの続いているスマホを変えろというのですか?」と言いたい気持ちになりしたが、先ほどの駅員に続く呆れるような対応に、あえて反論しませんでした。

 「ああ、そうなんですね。別な駅でチャージして、ダメだったら、そうしますね」と答えて、その場を去りました。

 「はい、そうした方がよいですね。よろしくお願いします」と女性駅員は明るく答えます。

 今やカード式のSuicaやパスモだって、ICチップになっていますし、スマホを見て磁気の不具合だという対応をするとは、一体、誰がこの若い駅員に、いい加減なことを教えているのでしょうか。間違いなく、不具合のたびに、他のお客にも同じことを言っているに違いありません。ある方が教えてくださいましたが、今や駅には正社員でない方も多く働いているとのことで、社内教育の不足が原因ではないかということです。

 一見すると、これはクレジット詐欺の問題とは何の関係のないこともかもしれません。ですが、こうした社内教育の不備に、不正がはびこる芽が出てきてしまうのではないかと危惧しています。

 先の逮捕された少年だって、店側がしっかりとレジでお客様のお金やカードを預かることへの責任について教えて、不正に対する厳しい管理を敷いていれば、防げる事例だったかもしれません。従業員によるクレジット不正事案が発生するたびに、店側の管理体制の不備と、社内教育の質の低下に起因するところは大きいと思ってしまうのです。

 今の詐欺というのは、とても巧妙になってきており、もはや消費者だけが、クレジットの利用明細を見て、不正な購入がないかに気づくといった対策だけでは、防ぎきれない状況になってきています。企業側がお客様目線にたった社内教育や管理体制を通じて、不正を許さない環境づくりをすることこそが、急増しているクレジットの詐欺被害を減らすために問われていることなのです。

◆多田 文明 詐欺・悪質商法ジャーナリスト。怪しいキャッチセールスに誘われたら「ついていく」という手法で潜入取材…だまされた体験の実況中継で話題を集める。ベストセラー『ついていったら、こうなった』は番組化されるなど、テレビ出演や講演、執筆などで幅広く活動中。あらゆる詐欺・悪質商法に精通し、日進月歩の「だましの手口」に引っかからない極意を発信している。

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