コロナ禍で衣料品が販売不振に…リアル店舗の淘汰が進んでネット通販に移行、国内生産も3%切る

 流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの視点」から発信する「最新流通論」の今回は「コロナ禍の衣料品」がテーマ。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛などで衣料品が販売不振となっている現状や、リアル店舗からインターネット通販での購買に移行している傾向など、衣料市場の「今」をリポートする。

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 日本人の生活の基本は「衣食住」と言われていましたが、コロナ禍の生活で「衣」は売り上げが大苦戦しました。

 インナーウエアではユニクロなど自社で商品企画して自店で大量販売するSPA(製造小売)が、2000年から続くデフレの中、品質も良く買いやすい価格で販売を伸ばしてきました。

 しかしながら、コロナ禍では、ユニクロの4月は約4割の店が臨時休業したこともあり売上前年比56・5%減。5月も約2割の店が臨時休業し、Eコマースの売上は好調ですが、売上前年比18.1%減と厳しい状況です。 

 コロナ禍で「食」を中心に売上好調のスーパーでも衣料品の売り上げは30~40%のダウンとなっており、需要自体が落ち込んだのは間違いありません。

 例えば、男性はパンツやシャツなどを1人8~10枚持っているというのが一般的で、既に家庭内に最低必要限の枚数があるため、先の見通しが見えづらいコロナ禍では、インナーウエアの購買優先順位が低くなったという事が理由であると業界ではささやかれています。

 アウターファッションは、インターネット通販への移行で小売店での販売は構造的に厳しい状況となっていましたが、コロナ禍により百貨店やショッピングモールが閉鎖した事が駄目押しとなり、レナウンの経営破綻、そしてアパレル業界全体が一刻の猶予もない環境であることを顕在化させました。

 また、年間に国内の店頭に並ぶ洋服の数は約40億着以上で、その内の4割近くが廃棄されて問題となっています。リサイクルの仕分けや保管コストより、中国やベトナムやカンボジアで新商品を作るコストの方が安いため、もったいない状況が続いています。

 メルカリでも4割近くが衣料品となり、リサイクル意識は進んでいて、ZOZOTOWNなどインターネット通販への購買へ移行し、リアル店舗の淘汰は一挙に進みそうです。

 一方、衣料品は1990年までは、日本で国内生産が半分でしたが、直近では3%を切っています。国内の繊維産業の伝承は非常に困難な状況と言わざるを得ませんが、国内におけるオートメーションでの生産など新たなイノベーションが求められています。

◆渡辺広明 マーケティングアナリスト。1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザー、バイヤーとして22年間、メーカーのマーケッターとして7年間従事。現(株)やらまいかマーケティング代表。商品開発700品の経験を活かし、顧問、講演、バラエティから報道までのメディア出演と幅広く活動。フジテレビ「Live News a」のレギュラーコメンテーター。

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