獺祭チャーハンで山田錦の生産者を応援 コロナ禍で苦しむ農家のため…旭酒造が酒米を食用販売

日本酒「獺祭(だっさい)」蔵元の旭酒造(山口県岩国市)が、獺祭の原料である酒米「山田錦」を食用米として販売し始めた。商品名は「獺祭の酒米 山田錦」。3合(450グラム)入りで価格は375円(税込)。旭酒造のウェブストアのほか、全国の獺祭取扱店で購入できる。

■ワンランク上の料理に

獺祭製造時には2345%まで磨く精米歩合を、食用では90%に抑えた。一般の食用米に比べると甘みや粘りは少ないが、粒が大きく水分や調味料をよく吸い込むため、炊き込みご飯や雑炊、ピラフ、パエリア、チャーハンといった料理とは相性抜群。カレーに添えるバターライスなどにしても、ワンランク上の仕上がりが期待できる。また、あっさりとした味わいなので、固めに炊けばすし飯にもぴったり。「お酒のシメのお茶漬けにいい」という声もあるそうだ。

同社広報の千原英梨さんは「普通に炊いて食べてもらっても、あっさりと味わえるお米。『意外においしい』という声をよくいただきます。とはいえ、特徴を活かすのであれば、やはりひと手間加えた料理の方がよりおいしく召し上がっていただけるはず。白米として食べるのであれば、少し固めに炊き上げれば粒の味がしっかりすると思います」とコメント。炊く、炒める、煮るといった米料理に使えば、本格的な料理を楽しめそうだ。

■苦しい契約農家

山田錦の食用販売の背景には、生産農家の苦境がある。新型コロナウイルスの影響で日本酒の販売が落ち込み、各地の蔵元は山田錦の在庫を消化しきれないでいる。同社も、今年3、4月の獺祭の売上が、前年度比で半減。これが続けば、2020年秋収穫の山田錦を買い取ることができなくなる。

「とはいえ、すでに田植えを済ませている契約農家さんは、今から米の生産量を調整することはできない。また、田植えをした以上は、しっかりと手入れをして収穫まで済ませないと田んぼの質が下がるので、手入れを放棄するわけにもいかないのです」。

そうして丹精込めて米を作っても、売れないのでは農家の収入は途絶える。

「契約農家さんとのコミュニケーションの中で、かなり厳しい状況にあることがわかって。長期化すれば、耕作放棄や倒産が増える恐れもあります。旭酒造として生産者さんを助ける方法はないものかと考えていました」

そんなときに飛び込んできたのが、「醸し人九平次」で知られる愛知県の萬乗酒造が「山田錦を食用で販売する」というニュース。同社の桜井一宏社長は早速、「うちもやらせてください!」と萬乗酒造に連絡し、旭酒造でも山田錦の食用販売をスタートさせた。

山田錦の販売を知った農家からは、「少しでも購入してくれる人がいるのはありがたい」「山田錦に興味を持ってくれる人が一人でも増えることがうれしい」といった声が届いているという。

千原さんは「私たちのやっていることは、焼け石に水かもしれません。でも、生産者さんたちは本当に心を込めて山田錦を作ってくださっているので、そんな想いも一緒に届けられたら」とコメント。その上で「そもそも不要不急なものである日本酒を通して私たちが提供できるのは、お酒を通しての楽しい時間や、人生をちょっぴり豊かにすること。ですから、『山田錦って食べたらどんな味なんだろう』といった気軽な気持ちで、楽しみながら応援、購入していただけるとうれしいです!」と語っている。

(まいどなニュース特約・鶴野 ひろみ)

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