駆除された鹿を天然藍で染めた革製品に 攻めダルマの孫、蔦哲一朗監督の挑戦

都内で展示販売会を行う蔦哲一朗氏(C)DIYA
駆除された鹿を天然藍で染めて作られた長財布(C)DIYA
蔦哲一朗氏が立ち上げたプロジェクトのPR看板、テレビ画面には藍畑が。(C)DIYA
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 クリスマスや新年の贈り物にバッグや財布を選ぶ時、その素材の背景に思いを巡らせることがあるだろうか。

 「駆除された鹿を藍で染めてみました」。徳島出身の映画監督・蔦哲一朗氏(35)は、こんな看板を掲げて地元の祖谷(いや)地方で駆除された鹿を、藍で染めた革小物にして販売するプロジェクトに取り組んでいる。

 畑違いの挑戦は、2013年に発表した映画「祖谷物語-おくのひと-」がきっかけ。猟師に同行して山に入り、食害をもたらす害獣として地元で多くの鹿が駆除され放置されている実態を知った。

 鹿や猪などによる農作物被害は全国的に深刻で、昨年駆除された鹿は56万頭(環境省調べ)にのぼる。「数が増えて駆除するのはやむを得なくても、使い道があるんじゃないか。もったいない」。そんな疑問から17年にクラウドファンディングで資金を募りDEER(鹿)と祖谷を合わせて名付けたブランド「DIYA」(ディヤ)を立ち上げた。

 駆除された鹿は猟師によって必要に応じて地元の専用施設に運ばれ、肉はジビエとして食べられる。蔦氏が買い取った皮は、職人たちによる丁寧な作業工程を経て財布や名刺入れに生まれ変わる。なめした革の染めには特にこだわり、600年もの歴史を誇る地元産の天然藍で青く染めて「付加価値」をつけた。鮮やかに染め上がった革を初めて見た時の感動は忘れられないという。

 鹿皮を扱う業者そのものが少ない上に「新参者」のハンディがあり製造ルート確保の苦労もあった。そんな時、力になってくれたのは、攻めダルマと呼ばれた亡き祖父、池田高校野球部元監督の蔦文也氏。「じいちゃんの話題からスンナリ物事が動いたこともあった。常に僕の人生は支えられています」と感謝する。

 商品はネットで販売されているほか展示販売会も随時、開催。「話をして納得して買ってもらうのが大事」と説明役にも熱が入る。日本で地盤を固めて、藍染め人気が高い中国やヨーロッパに進出することも視野に入れる。

 都会での暮らしではなかなか思い至ることのない里山の現実、人と動物の共存という問題は、自身の映画製作のテーマにも通じる。「これが日本の、田舎の現状。鹿が駆除され放置されている日常があることを知ってもらえれば」。製品を通じて背景にある問題が伝わり、考えるきっかけとなることを蔦氏は願っている。(デイリースポーツ・若林みどり)

◆「DIYA」の公式HP https://diya.jp/

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