キャラ大渋滞でも使うシカない?奈良の鹿キャラが想像を絶する多さ…現地で調べてみた

 奈良のご当地キャラクターといえば「鹿」。「奈良=鹿」をゆるぎないものにしたのは8世紀後半、遠く離れた茨城の鹿島から奈良にこられた神さまが、白い鹿に乗ってきたという伝説だ。以来、鹿は「神鹿(しんろく)」として保護され、奈良の町の人は鹿と共存しながら生活をしてきた。『ゆるキャラ論』の著者・犬山秋彦によると、いわゆる「ご当地キャラ」が登場するのは1980年代前半とのこと。一方で春日大社の燈籠に彫られた鹿、奈良の土産物にあしらわれた鹿、もっとさかのぼって正倉院宝物にデザインされた数多くの鹿たちを考えると、奈良の鹿は1300年の歴史を持つ「元祖ご当地キャラ」といえなくもない。

■せんとくん

 現代の奈良に、想像通り鹿キャラは多い。高い知名度を持つ「せんとくん」は、平城遷都1300年記念事業の公式マスコットキャラクターとして2008年に登場。仏さまに角が生えたような姿が仏教界から非難され「ゆるくない」姿や制作経費なども連日話題に。とうとう独自マスコット擁立の動きが活発化して、民間から「まんとくん」、仏教界から「なーむくん」が登場。相乗効果でせんとくんの名前は全国区になった。現在は奈良県の公式マスコットキャラクターとして版権使用料も無償化されたせんとくん。「鹿キャラ」なのか「仏キャラ」なのかというそもそもの疑問が残るが、観光客を出迎えや県の広報活動にいそしんでいる。

 奈良市内を中心に見てみると、おそらく一番露出度が高いのが、奈良市観光協会の「しかまろくん」だ。筆者も愛用しているごみ分別アプリには、季節毎に衣替えをしたしかまろくんが登場してごみの日を教えてくれる。

■リニー君&りにまね

 次に目にするのが、リニア新駅推進PRキャラクターの「りにまね」と、元非公認キャラで現在は奈良市リニアファン倶楽部部員の「リニー君」。奈良市観光戦略課に属し、首を長くして誘致活動にはげむ。実は…盆踊り会場に現れたリニー君と逃げまどう子ども達を見たことがあります。

■ナポくんとナピちゃん、他にもまだまだ

 20年以上前の1996年に登場したのが奈良県警「ナラ・ポリス」を略して生まれた「ナポくん」。19歳下の「ナピちゃん」は「ナラ」の「ピープル」と「ピース」を守る。県民には自治会の回覧板などでおなじみ。

 他にも、奈良地方検察庁の「なっち」、奈良国道事務所の「やまとくん」、国立曽爾(そに)青少年自然の家の「そにっと」、奈良教育大学の「なっきょん」、奈良市水道局「なみかちゃん」、奈良市消防局「なっぴぃ」などのほか、NHK奈良放送局の「鹿どーもくん」、奈良テレビ放送番組キャラクター「ドキちゃん」、奈良交通「シーカくん」等々、公的機関で鹿キャラを起用しているところは多い。

■奈良市以外は“鹿推し”じゃない!?

 一方で、鹿のいる奈良公園のある奈良市以外に公式ご当地キャラに鹿を使う県内の市町村はない。たとえば天理市は日本武尊をイメージした「てくちゃん」、吉野町は桜の妖精「吉野ピンクル」という具合で、奈良全体が「鹿推し」というわけではないということがうかがえる。

 また、県はすべてに「せんとくん」を使うわけではなく、ストップ温暖化キャラクターには吉野杉の角を持つエコカラーの「な~らちゃん」を起用。奈良市でも子育て応援のための「ももいろいくジーカ」、奈良市生涯学習財団の「しか丸くん」(しかまるくんと間違いそう)など、鹿キャラの細分化が進んでいるようだ。

■シカッチェ、ならっきー…企業と鹿キャラ

 プロバスケットチーム・バンビシャス奈良のマスコットキャラ「シカッチェ」は、ポシェットの中の飴ちゃんをゲーム会場で配るという「大阪のおばちゃん的キャラ」でYouTubeにも進出。金魚すくいが得意な奈良信用金庫の「ならっきー」、株式会社ボービックの自社プロデュースゆるキャラ「奈良犬ならっしー」、奈良健康ランドの「お風呂シカ フロロ」のほか、キャラクター名はなくても、商標や商品に鹿を取り入れる企業は古くから数えるときりがない。奈良のスーパーでは、消費税増税を前に進む電子マネーに「コジカ」の名称がしっかりついていた。

   ◇   ◇

 筆者が調べたところ、1980年代以降、当初から期間限定だったものや活動を停止したものも含め、30以上の鹿キャラが確認できた。すでに「任期満了」の鹿キャラたちは、ただ忘れ去られてしまったのだろうか。奈良在住歴の長いある男性は、「『ことちゃん』のぬいぐるみならあります」と、平成7年(1995)に奈良で行われた全国スポーツ・レクリエーション祭のマスコットキャラクターのぬいぐるみを見せてくれた。奈良県出身の漫画家で『少年アシベ』の作者、森下裕美氏が作者だという「ことちゃん」は、「ゴマちゃん」を彷彿させる顔立ち。右の眉毛が取れ24年の歳月を感じさせるレアものだったが、個人の家庭の中で健在だった。

 最後に思わぬ情報が入ってきた。なら・シルクロード博の公式マスコット、「ナナちゃん(鹿)ララちゃん(ラクダ)」(2頭合わせて「ナラ」)の看板が、奈良市鴻ノ池運動公園にあるはずだという。情報をもとに探してみると、野球場の入口の丸太を組み合わせたボードの裏に、31年前の1988(昭和63)年に682万人もの人を集めた博覧会の看板が残っていた。当時はマグカップやテレフォンカード、筆記具、タオル、Tシャツ等々のグッズも作られた人気マスコットだったようだ。会場ではなかった運動公園にどのような経緯でこの看板が運ばれ、今も再利用されているのかはわからなかったが、マスコットキャラクターを作ることで、それぞれのイベントがより強く人々の記憶に刻まれるのではないだろうか。

 たかが鹿キャラ、されど鹿キャラ。野生の鹿が「神鹿」と名付けられ、やがて奈良名物となり、天然記念物として指定され、現代に様々なマスコットキャラクターが生み出された。すでに消えてしまった数多くの鹿キャラ、今後登場する未来の鹿キャラに思いを巡らせて、秋の奈良で鹿キャラ探しを楽しんでみてはいかがだろうか。

(まいどなニュース特約・鹿谷 亜希子)

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