秋葉原の献血ルームが「宇宙船みたい」と話題に その背景にある切実な「献血事情」とは

 国際的にも“オタク文化の聖地”として知られる東京・秋葉原で、内装が「宇宙船みたい」と話題の献血ルームがある。この約10年間で、工夫を凝らした献血ルームが全国的に増えているのだが、秋葉原もその象徴的な一つの事例。さっそく現地に足を運んだ。

 JR秋葉原駅の電気街口改札を出て徒歩1分ほどのビル内にある「akiba:F献血ルーム」。ドアを開けると、円盤を思わせるテーブルで数人の男女が漫画を読んでいた。受付で問診を済ませて採血を待つ間か、採血後の休憩のためのスペース。受付を含む、この休憩スペースは約260平方メートルの広さでゆったりしている。季節ごとにフィギュアやジオラマなども展示され、漫画の蔵書は都内随一の約3000冊。各種飲み物やお菓子なども無料で提供され、占いのイベントなどもある。

 その奥にある採血室の中央部分はアクアブルーに彩られ、やはり宇宙船的な空間だった。献血ベッドは20台で、歯科医の診療台を連想させるリクライニングシート的なスタイル。血液をそのまま採る「全血献血」は10~15分と短く、血液を遠心分離にかけてから体内に戻す「成分献血」は時間が長い(40~90分)が、体への負担は少ない。献血にはこの2種類があり、うち成分献血は16台で対応。採血しながら漫画や雑誌を読み、備え付けのテレビを見て時間を過ごす。献血後は30分程度の休憩を要するため、前述のスペースに移動して休む。

 では、なぜ、秋葉原にはこのような空間が生まれたのか。日本赤十字社では、協力者に快適な環境を提供するため、献血ルームの在り方について統一的なガイドラインを2008年に制定。各所に地域の特性を生かした独自の個性を持たせることになった。秋葉原は「人の命を未来へつなぐ」をコンセプトに宇宙船をイメージしたデザインで09年に設計。今年10月1日で10周年を迎え、9月29日には記念イベントが行われる。

 都内に献血ルームは13か所ある。akiba:Fでの献血協力者は昨年度が4万8762人で全国3位。特徴は男性が多いことにある。東京都赤十字血液センターによると、2018年度で秋葉原は男性82%で女性18%。都内全体性別比で男性約60%に対して女性が40%なので明らかに多い。また、年齢層では20~40代の献血者が 75%を占めているという。

 これは秋葉原という地域性を物語っているのか。「消費者としてこの街を訪れる人は男性が多い」という仮説を立てた。だが、同センター総務課の石川直子さんは「数字として男性が多いことは事実ですが、明確な理由はありません」と一概に断定はできないと説明した。

 ここで原点に戻り、献血の根本について考えた。内装が宇宙船みたいなのはいいけれど、肝心なのは血液に他ならないからだ。

 石川さんは「血液を人工的に作ることはできませんので、献血は血液を安定して患者さんにお届けするたった一つの方法になります。都内だけでも年間約60万人のご協力者を必要としております。血液は短いものだと有効期間がわずか4日間ですので、継続的な献血のご協力が大事になります」と必要性を訴えた。ちなみに全国では年間 で約487 万人の献血協力者が必要となる予定なのだという。

 そうした切実な背景から、献血協力者のリピーターを確保する手段としての創意工夫が、ネットで話題になった内装に込められていたのだ。

(デイリースポーツ・北村 泰介)

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