淡路島舞台のRPGがすごすぎ 地方創生ものと思ったら…なにこの切なさ!完成度!  

 人気RPG(ロールプレイングゲーム)「ドラゴンクエスト」シリーズを生んだゲームデザイナー、堀井雄二さんの出身地である兵庫県の淡路島を舞台にしたRPGアプリ「はじまりの島」が、2019年4月6日、淡路島日本遺産委員会からリリースされた。キャッチフレーズは「淡路島と神話を、守れ」。さっそくスマートフォンにダウンロードし、プレイしてみた。

■淡路島の男子高校生が古代にタイムスリップ?!

 淡路島に住む普通の男子高校生・優弥が、古代にタイムスリップし、島の歴史をゆがめてしまおうとする魔物に立ち向かうというストーリー。20~40代のゲーム好きな人を中心に、日本遺産にも認定された淡路島の歴史や文化に興味を持ってもらおうと作られた。

開発したのは、埼玉県のさいたま市や行田市を舞台にしたRPGを開発した実績がある井桁屋(さいたま市)。同社のRPGは、十字キーと2つのボタンで移動するなど昔のドラクエをほうふつさせるゲームシステムや、切ないストーリー展開が特徴だ。

 筆者は2作ともプレイした。特に心に残ったのが、ストーリーだ。王道ながら、予定調和に終わらないように練られており、先の展開が気になって仕方がなかった。そんな会社が、今度は最近まで住んでいた淡路島を舞台にRPGを作ると知り、楽しみにしていたのだ。

■メーンキャラはフルボイス! 島出身の人気声優を起用

 物語は、厳かな音楽とともに始まる。登場するキャラクターは、なんとフルボイス。さっそく、日本神話の国生みの神様、イザナギが出てきて、得体のしれない魔物と対峙した。

 イザナギのCVは、アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』のジョナサン・ジョースターや、『Back Street Girls-ゴクドルズー』の杉原和彦(カズ)を演じた人気声優、興津和幸さん。実は興津さん、南あわじ市の出身なのだ。さすがの迫真の演技で、緊迫したシーンを進めていく。

 そのうちに場面が切り替わり、主人公の優弥が登場。先ほどのシーンは優弥の夢だったようだ。優弥は淡路弁。聞いていて少し恥ずかしくなるような再現度の高さに驚く。淡路島の南部、南あわじ市福良にある淡路人形浄瑠璃の上演施設、淡路人形座の前を通って学校へ向かうのだが、風景もリアル。人形座の外観からも、制作陣の気合が感じられた。

 その後、優弥は古代にタイムスリップし、島内の村々を回って島の歴史や食べ物に触れ、仲間と出会って物語が進んでいくのだが、ゲーム全体に漂う淡路島愛がすごい。

■モンスターはタマネギに渦潮……ゲーム内にあふれる“淡路島愛”

 五斗長垣内(ごっさかいと)や松帆(まつほ)、舟木(ふなき)といった村名は、実際に島内にある遺跡の名前だ。どことなく説明くさい村の住人のセリフには、ゲームのヒントとともに土器や塩の製法など、島の歴史や名物の情報が織り込まれている。フィールドも全体を見ることはできないが、今は島のどこを移動しているのだろう、とわくわくした。

 敵のモンスターは一般公募し、島内の小学生や、南あわじ市の守本憲弘市長らが考えたデザインを基に作成した。島特産のタマネギや鳴門海峡の渦潮、島内で多数出土した銅鐸をモチーフにしたモンスターは、とぼけたものや、おどろおどろしいものなど多彩だ。

■島を訪れてアイテムゲット!リアルと連動したクーポンも

 そして、このRPGには一般的なスマホゲームとは異なるシステムがある。実際に島内の名所を訪れてGPS通信をすると、ゲーム内で強力なアイテムと交換できるアイテムが手に入るのだ。さらに、島内の観光施設や温泉など26店舗で使えるクーポンもある。

 淡路島日本遺産委員会の担当者によると、4月19日現在のダウンロード数は1万弱。ゲームがリリースされて半月以上が過ぎ、島内15カ所のGPS通信の設定場所をコンプリートした人が出てきた。クーポンも使われているという。

「ゴールデンウイークに淡路島に来て、名所に設置したキャラクターの等身大パネルと一緒に写真を撮りたいという問い合わせがあるなど、効果は出てきています。島の住民からは、ゲームをきっかけに夫婦の会話が生まれたという声も聞きました」と担当者。ツイッターなどで情報発信するゲームファンもおり、そこそこの盛り上がりは見せているようだ。

■ゲームバランスは難しめ、やり込み要素にも注目

 井桁屋の担当者を取材したところ、今回のRPGの開発あたり、数回にわたって淡路島を訪問。淡路島日本遺産関連の資料を、何度も読み返した。これまでの自治体RPGの開発経験を生かし、「地域の魅力や観光資源を、押しつけがましくないように物語に組み込んだ」という。ゲームバランスは難しめに設定。確かに、けっこうな回数で全滅した。

 「ゲームをきっかけに淡路島を訪れてくれる方々が増えれば何よりもうれしく思います。今すぐの訪問には結びつかなくても、淡路島への親近感や興味を深めていただいたり、ふとした時に淡路島を思い浮かべてもらったりするだけでとてもうれしいです」(担当者)

 クリアまでのプレイ時間は25~30時間程度を想定。筆者はダウンロードから約10日でクリアしたのだが、やはりストーリーは切なかった。だが、担当者からは、ものすごく難しい条件をクリアすると、さらに楽しめるという情報が。ということで、現在もレベル上げにいそしんでいる。

(まいどなニュース特約・南文枝)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス