迷い猫を失った悲しみを癒してくれた子猫、令和になっても大事な家族

 兵庫県神戸市に住む藤谷さん一家の元に14年前、お隣に住むお嬢さんが1匹の迷い猫を連れてきました。首輪もある黒い飼い猫で、家を飛び出して迷って帰れなくなった様子で、そのお嬢さんは、藤谷さんが地元自治会役員をしていたため、ぜひ飼い主を捜してあげてほしいということでした。それから約1か月間、猫愛好家ボランティアのルートを頼ったり、チラシを作ってポスティングなど、捜索を行いました。しかし、懸命の捜索にもかかわらず飼い主が見つかりませんでした。

 藤谷家の主導権は「犬派」の奥様でしたが、動物好きには違いなく、迷わず飼うことにしました。名前はこれといった意味もなく「クウちゃん」にしました。猫を飼うのは初めてのこと、猫関係の書物を読み漁り、初めての猫ちゃん受け入れにチャンレンジしました。家出癖のあるクウちゃんには「ハラハラしましたが、家族にもすぐに馴染みました」(藤谷さん)。

 その約1年後、クウちゃんの飼い主捜索で仲良くなったご近所の猫愛好家の方から「生まれたばかりの子猫がいるんですがどうですか?」と藤谷家にお話があり、クウちゃん1匹では寂しいだろうと思い、飼うことにしたそうです。全身白ですが、額に少し黒毛があったので「テンちゃん」と名付けました。今は黒毛は消えてありません。ちなみにどちらも女の子で仲良くやってくれるだろうと期待していましたが、猫特有の縄張り意識もありケンカも絶えませんでした。テンちゃんもかなりストレスがあったかもしれません。

 それから約5年が経ち、クウちゃんが病気と年齢的なもので亡くなりました。迷い猫とはいえ家族の一員として初めて飼った猫がなくなり家族みんな大変悲しい思いでしたが、それを癒してくれたのがテンちゃんでした。怖がりで人見知り、抱っこされるのが大嫌いでほとんど鳴きません。キャットフード以外は見向きもせず、喉が乾いたら洗面所の蛇口から出るぬるま湯を舌で受け、水量が多いときは前足をクッション代わりにして器用に使いながら飲みます。

 テンちゃんが心を許しているのは奥様と娘さんだけだそうです。寒い時期になると奥様の布団に潜り込んで眠り、娘さんとは毎日風呂に一緒に入りおしゃべりしています(もちろん湯船に浸かることはありませんが)。旦那様には近寄りもせず無視しますが、ひどく疲れていたり、二日酔いでしんどそうにしていると近づいてきて「にゃん」と鳴いて去っていきます。そんなとき旦那さんは「がんばりや」「何してんねん」「しっかりせんかい」とテンちゃんが励ましてくれていると勝手に解釈しているそうです。

 そんなテンちゃんももう13歳になりました。数年前に病気にもなり、現在は月2回定期的に病院に通っています。年齢を重ね性格も少し丸くなったのか旦那様にも少し気を許してくれるようになったそうです。年号は平成から令和に改元しましたが、藤谷家ではこのテンおばあちゃんと一日でも長く、共に暮らしていけることを願って止まないそうです。

(まいどなニュース・佐藤利幸)

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