DNA鑑定って?自称・桑名正博さんの息子騒動で話題…弁護士に聞いてみた

 2012年に亡くなった歌手・桑名正博さんの長男で歌手・美勇士と桑名さんの息子を名乗る“桑名乃羅”氏が昨年末、正博さんの息子がどうかを調べるためテレビ番組のなかでDNA鑑定を受けて話題になった。“乃羅”氏は2年前に亡くなった母親から「桑名正博の息子」と聞いたと話している。一方で桑名さんは1980年に歌手のアン・ルイスと結婚して美勇士をもうけたが、84年に離婚した。

 DNA鑑定といえば、いまや犯罪捜査において多くの事件に活用され、犯人特定や犯罪事実の証明に欠かせないものとなっている。では実際にDNA鑑定を受けるには、どういう手続きが必要で、どのくらいの費用がかかるのだろうか。弁護士法人神戸シティ法律事務所の二宮淳次弁護士に聞いた。

  ◇  ◇

 -DNA鑑定には2種類あるそうですが『公・法的鑑定』と『私的鑑定』の違いはなんですか。

 「一般的に『公・法的鑑定』とは、刑事事件において捜査機関によって行われる鑑定や民事訴訟手続きおよび人事訴訟手続きにおいて、当事者の申し立てまたは裁判所の職権で行われる鑑定のことを言います。これに対して『私的鑑定』とは、親子関係に関する紛争について、訴訟手続の前段階または、訴訟手続において裁判所による鑑定を促すために行う鑑定のことを言います」

 (続けて)

 「鑑定業者によっては『公・法的鑑定』と『私的鑑定』との呼称を用いて、それぞれに料金設定をしているようですが、その差異は法的に区分されるものではなく、簡易な検査によるものか、鑑定書を付けることができる検査によるものかとの違いによるものであると考えられます」

 -鑑定を相談する場合は、法律事務所でよろしいのでしょうか。

 「親子関係または、兄弟関係を確認するために、相手方がDNA検体採取に協力するのであれば、民間の鑑定業者においてDNA鑑定を受けることができますので、法律事務所に相談する必要はありません。ただし、戸籍の記載が実態と異なり、親子関係を実態に則したものへと変更する必要がある場合や、相手方がDNA検体採取に協力しない場合においては、法的手続きに移行する必要がありますので、弁護士に相談する必要があります」

 -鑑定は具体的にどういう風に受けるのでしょうか。

 「口腔内の粘膜を綿棒用のもので複数回擦って検体を採取し、自らの検体と他の人から採取した検体の情報を比較解析することで、DNA鑑定がなされます」

 -検査や裁判所に提出する手数料など費用はどのくらいかかるのですか?

 「民間業者に依頼した場合には、一般的に5万円から20万円程度となるようです。また、京都家庭裁判所作成の資料によれば、裁判所においてDNA鑑定を申し立てた場合の費用は10万円程度とされています」

 -桑名家の場合は、父親がすでに亡くなっています。父子鑑定はできず、子同士の鑑定になりますが、費用は違ってきますか?

 「検査項目が異なるようですので、一般的に費用は異なるようです」

 -結果が出るまでの日数は?

 「一般的に、10日から20日とされています」

 -実際にDNA鑑定を希望する方の目的は、財産問題や離婚問題など、裁判所に提出するためのものがほとんどでしょうか?

 「親子関係が問題となる場合には、血液型の不一致等がなければ、まず、DNA鑑定を行った上で、弁護士に相談される場合が多いのではないでしょうか」

 -DNA鑑定について気をつけることは?

 「問題となるのは、DNA鑑定ができない場合があることです。すなわち、DNA鑑定は、ある検体と他の人から採取した検体を比較解析するものであり、その性質上、比較対象となる検体がなければ、行うことができません。親子関係の有無が問題となった場合においては、相手方(例えば、父や兄弟)が検体採取に協力的でない場合が考えられます」

 (続けて)

 「このような場合に法的手続きへと移行したとしても、親子関係等についての訴訟は、人事訴訟という民事訴訟とは異なったルールに基づいて審理されることから、鑑定に協力しなかった者に対して制裁が科されることはありません。この点、裁判所は、相手方が鑑定に協力しないという事実を事実認定の際に斟酌することができますが、このリスクを冒してでも鑑定に協力しないという相手方に対して鑑定を受けさせることは極めて困難となります。DNA鑑定の精度が極めて高くなっている現在においては、このような協力義務についての立法的解決が望まれます」

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