ネット動画の時代に映画館は生き残るのか あるシネコン支配人の見解“動画配信は仲間”

 先日、動画配信サービス「Netflix」にて海外オリジナル作品の配信ラインアップが発表になった。マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ共演の『セレニティ:平穏の海』といった豪華ハリウッドスターの出演作や特撮ヒーロー「ウルトラマン」をアニメ化した「ULTRAMAN」が2019年4月1日に世界同時独占配信されることも決定。興味深いラインアップだが、映画館スタッフの筆者としては「映画は映画館で」と思いたい。では、他の関係者は業界の変化をどう感じているのか。兵庫・OSシネマズミント神戸の支配人である伊川泰史さんに聞いた。

  ◇  ◇

 伊川さんは現時点でNetflixに登録していない。しかし「“あいのり”続編が配信された時は心が揺れました」と言う。その理由は「多感な時期、18~20代前半で観ていた海外ドラマなどが配信されると契約ページに飛びそうになりますよ」とのこと。ちなみに伊川さんは1979年生まれの“アラフォー”世代だ。

 「“天才少年ドギー・ハウザー”“ビバリーヒルズ青春白書”“Xファイル”は青春を思い出します。僕も当時ケーブルテレビで時間も忘れて観ていました。でも今、観れるかっていうとすぐには無理かな」

 -それはどうしてですか。

 「時間がない。それでも“観たい”っていう想いがあふれるのは、若い時に得た感動は一生残り続けるから。今の人は動画配信から感動を得ることができる。20代とかで触れたことが自分の力になりますからね。私もそうでしたから」

 -動画配信サービスは今後も残り続けると思いますか?

 「淘汰(とうた)されると思いますね。これまでの経験で10年以上続くサービスは珍しい。短いサイクルでサービスが変わっていってますね」

 -動画配信と映画館の共存は可能?

 「今は“つかず、離れず”で平行に進んでいる。無理に交わる必要はないかなと。むしろ同じ仲間だと思っていますよ」

 -Netflixは映画館にとって脅威ですか?

 「脅威ですよ(笑)。でも映画館に求められているのも変化していますね。先日、友人のある話に納得していました。“映画館には時間を求めている”と」

 -時間ですか。

 「現代人は常にスマホやパソコンの通知に追われている。映画館では電源を切ることで何にも邪魔されない時間ができあがる。映画館に映画を観に来ている人はそんな“非現実”を体験したいらしいんですよ。動画配信サービスにはその強制力はない。その体験を映画館としては強く発信していきたいですね」

 -ネット配信サービスにされたら困るっていうのはありますか?

 「動画を見るためだけのハコ(場所)を作られたら困りますよね。安い入場料で良いコンテンツを大スクリーンで観ることができる。映画館の仕事がなくなれば僕も作りたいくらいですよ」

 -動画配信サービスに求めるもの。

 「心が豊かになる、自分の子どもに観せても良いような映像を待ってます。ただ『アリー/スター誕生』(監督:ブラッドリー・クーパー/アメリカ』はぜひ当館で観てもらいたいですね。心が豊かになりますよ。これぞ映画館でしか味わえません」

  ◇  ◇

 “映画館”支配人の立場は忘れない。それでいて、動画配信サービスは「仲間」で、さらに良質なコンテンツをもっと作ってほしいとも願う。ひとりの「映画好き」だからこその答えだった。(神戸元町映画館広報・宮本裕也)

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