文字サイズ

“神様”ビゴさんの「本物のパン」インテリアライトになって里帰り

本物のパンでできたインテリアライト。フランスで開かれたインテリア見本市でも現地の人から絶賛された
本物のパンでできたインテリアライト。フランスで開かれたインテリア見本市でも現地の人から絶賛された
本物のパンでできたインテリアライト。フランスで開かれたインテリア見本市でも現地の人から絶賛された
3枚3枚

 53年前、日本にフランスパンを紹介するために来日したフィリップ・ビゴさんのベーカリー「ビゴの店」(本店=兵庫・芦屋市)のパンを素材にした「インテリアライト」が国内外で人気を博している。そのビゴさんは今年9月、76年の生涯を日本で閉じた。インテリアライトは今年からフランスのインテリアショップでも販売されており、ビゴさんの故郷に温かな明かりをともしている。

 クッペ、クロワッサン、バゲット、バタール…。さまざまなパンをかたどったインテリアライトを何も知らずに目にした人は、一様に「本物?」とつぶやく。それもそのはず、このライトは正真正銘、食べるパンを使って作られているのだ。

 制作者である森田優希子さんが営むモリタ製パン所(神戸市)のアトリエを訪ねると、「ビゴの店」と書かれたパンの運搬箱が重ねられていた。使われているパンが本物中の本物と知ってまた驚かされる。仕入れたパンはまず中身をくり抜き「おいしくいただいて」から乾燥。さらに腐らないようコーティングした後、LEDライトと電源スイッチをつけて完成する。

 森田さんは学生時代、パン屋でアルバイトをしていた時に「おいしさだけではなく、見た目の優しさで人を笑顔にする力がある」パンの不思議な力にひかれた。売れ残ったパンを使って創作活動を開始。ある日、パンに透けた陽光の温かさに打たれ、ライトの創作に専念するようになる。卒業後は寝具メーカーで商品デザインを担当していたが、商品化への思いが募り、退職してアトリエを開設。「パンプシェード」の名前で商品化した。

 森田さんがこだわったのが素材として使うパンそのものの美しさ。とりわけバゲットやバタールなどのフランスパンは上部に複数あるクープ(割れ目)の均一さと、クープの境目のエッジの立ち方がライトとしての出来映えを左右するという。多くのベーカリーが集まるパンの街・神戸の店を回る中で抜きん出ていたのが「ビゴの店」神戸国際会館店のパンだったという。

 創業者のビゴさんは1965年、フランスパンを製造実演するため来日。その後「ドンク」で技術指導者を務め、本格的なフランスパンの普及に努めた。72年には芦屋市に「ビゴの店」1号店をオープン。「フランスパンの神様」と呼ばれ、2017年には外国人として初めて「現代の名工」に選ばれた。

 「ビゴの店」神戸国際会館店の平尾勝店長は3年前、直談判にやってきた森田さんの依頼に驚いたが、“安定供給”を約束。仕入れの日は、焼きあがったパンの中から「見た目がきれいなものを厳選している」という。「ビゴさんとその下で学んだ先輩に、おいしいだけでなくきれいなパンを作ることを体で覚え込まされた」と平尾さん。つい先日「我ながらきれいにできた」バタールを森田さんに渡し、自分用にライトの製作を依頼したという。

 森田さんは昨年、「パンプシェード」をフランスで開かれたインテリア見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。現在、フランスをはじめ6カ国のインテリアショップなどで販売されるまでになっている。「すごくきれいなパンと本場でも驚かれる。パンに慣れ親しんだフランス人の笑顔を見てあらためてパンの持つ力を感じている」と亡きビゴさんにも思いはせながら、これからも「パンプシェード」づくりに励む。(デイリースポーツ特約記者・山口裕史)

関連ニュース

    デイリーペディア

    ライフ最新ニュース

    もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス