テリー伊藤の兄が指摘 豊洲移転で“前輪”失った築地の再興は?玉子焼店は豊洲に新店

テリー伊藤の兄で、築地場外市場に本店を構える玉子焼専門店「丸武」の伊藤光男社長。豊洲移転後も築地への思いは深い
豊洲市場の水産仲卸場棟に新店舗としてオープンした「丸武」豊洲店
豊洲市場・水産仲卸売り場の魚がし横丁
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 築地市場(東京都中央区)から移転し、13日から一般客の見学や店舗の利用が始まった豊洲市場(江東区)。演出家でタレントのテリー伊藤の実家で、大正末期創業という老舗の玉子焼専門店「丸武」も豊洲市場に新店舗を出した。一般公開されて初の平日となった15日に同店を訪れた後、築地の場外市場にある本店をハシゴ取材。テリーの兄で“アニー伊藤”としてテレビにも出演している「丸武」の伊藤光男社長を直撃し、豊洲移転についての思いを聞いた。

 15日の朝5時45分、豊洲市場・水産仲卸売場棟の「豊洲市場内プロショップ 魚がし横丁」に足を運んだ。「丸武」の豊洲店が新装開店したエリアだ。海苔や昆布、漬物、料理道具、雑貨など70以上の専門店が軒を連ねている。地上4階だが密閉された空間は“デパ地下”を思わせ、新築特有のコンクリート臭が漂う。平日早朝とあって、人もまばらだったが、午前6時過ぎには、幼い子供連れの家族らの姿も見えた。

 「丸武」豊洲店での本店にはない名物は、食パンで挟んだ「玉子焼サンド」(230円)とクリームチーズの入ったパンで挟んだ「チーズ玉子焼きサンド」(250円)。16日までオープン記念価格で30円引きだ。厚焼き玉子の甘さとパンがよくマッチしていた。

 外の空気が吸いたくなって退出した。最寄り駅である東京臨海新交通臨海線ゆりかもめの「市場前駅」から豊洲に出て、地下鉄で築地市場へ。移転後も場外市場の店は営業を続けており、「丸武」の築地本店でも職人がその場で焼いた熱々の「焼き玉」(100円)から甘い香りが漂っていた。屋外で風を感じながら食べる方がうまい。ただ、心なしか人通りが少なくなっていることに気が付いた。

 伊藤社長は外の歩道をながめながら「見てごらんなさい、人も少ないでしょう。(午前)10時までは静かなんです」。確かに、時計を見ると7時30分だった。「昔はプロ(場内で働く人たち)が10時までいて、アマ(一般の観光客や利用客)は10時以降に来ていた。それがプロがいなくなったものだから、10時までは静かになっちゃったんです」。平日は朝4時からの営業を続けているが、「(将来的には)時間を動かすことがあるかもしれないね」と時代の移り変わりを実感していた。

 豊洲への移転は政策的な動きと認識しつつ、自身が育った築地への思いは強い。伊藤社長は「築地の場外と場内は対(つい)なんです。車の前輪と後輪のようなもの。片側(場内)が抜けたら、場外はどうなってしまうか。長い目で見ると、場外はダメになっていくんじゃないかと思っています」と危惧する。

 だが、築地の再興をあきらめてはいない。豊洲に新店を出しつつも、築地の本店に腰を据えて営業を続ける。伊藤社長は「豊洲の方が将来性はあると思います。ただ、人間は、いい悪いは別にして、新しいものを見たがります。豊洲に行っていた人が『やっぱり築地がいい』って帰ってくるかもしれない」と近い将来、築地が再評価される日を見据えた。

 ちなみにテリー伊藤から何か言葉をかけられているのかと尋ねると、「輝夫(本名)ですか?私の息子、弟にとっては甥に『一生懸命やれよ』とハッパをかけていましたよ」と笑顔を浮かべた。

 (デイリースポーツ・北村泰介)

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