【西野ジャパン86日間の軌跡・3】オールジャパンで英知を結集

 西野ジャパンの戦いは16強で幕を閉じた。ハリルホジッチ前監督の解任を受け、西野朗新監督(63)の就任が発表されたのが4月9日。親善試合でなかなか勝てず、1次リーグ第3戦のポーランド戦では他者に命運を託すボール回しで批判を浴びるなど、苦しみながら一枚岩になったサムライブルーの舞台裏に迫る。

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 ともすれば排外的な危うさも内包する言葉が、西野体制躍進のキーワードになった。

 「オールジャパン」

 西野監督の就任会見が行われた4月12日、同席した田嶋会長が発したひと言だった。「選手とのコミュニケーション不足」を理由にハリル前監督を解任。スタッフを日本人で固めることで、意思疎通に重きを置いた。

 5月下旬から始まった国内合宿では宇佐美が「いろんな人とコミュニケーションを取っている。通訳を通さないのは良いことしかない」と効果を実感。監督、スタッフ、選手の間を対話の風が吹き抜けるようになった。

 前体制では宿舎の部屋にこもりがちだった選手たちは、ベースキャンプ地カザンの宿舎ではリラックスルームで卓球やビリヤードに興じるようになり、手倉森、森保両コーチらとも戦術について議論を交わした。「本当に選手のみんなを好きになった」という本田の言葉は、チームの一体感を象徴していた。

 5度目のW杯となった早川コンディショニングコーチの体調管理も実った。科学的データを収集して体調を把握し、個別にメニューを課した。前監督は長期間の合宿で選手を拘束し、過剰に負荷をかける傾向にあったが、今大会では選手のコンディションを考慮し、国内合宿の合流日を別々に設定。試合後は休養を重視するなど注意を払い、チーム走行距離は全4試合で相手を上回り、走り勝った。

 「最高の“補強”」と、あるスタッフが評したのが分析担当の増員だった。W杯5大会目の和田氏、リオ五輪代表を支えた寺門氏といった精鋭が入閣。1次リーグでは各試合に担当をつけ、緻密かつ徹底した対戦国分析で格上だった相手を丸裸にした。ベルギー戦で3バック両サイドの裏のスペースを突いた原口の先制点などは分析通りだった。日本サッカーの英知を結集し、決勝トーナメントまでたどり着いた一方で、世代交代の遅れという現実に直面したのも事実だった。

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