J1広島、過酷日程を乗り切る城福采配に注目

 新型コロナウイルスの感染拡大で2月下旬から中断していたJ1が7月4日に再開する。広島はアウェーで神戸と対戦する。ルヴァン杯も含めると、約6カ月間で少なくとも35試合を戦う過酷な日程を、どう乗り越えていくのか。選手層の充実とともに、城福浩監督(59)がどんなタクトを振るうのかも注目される。

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 ガランとしたスタンド。乾いた打球音が響き渡るスタジアム。声援も拍手もない。それでも、プロ野球の開幕はうっ屈とした社会に光明をもたらした。

 そしてJ1も7月4日、まずは無観客試合からリスタート。悲しみと憂鬱(ゆううつ)が支配した2020年の空気を、プロスポーツの明るさがきっと、払拭してくれると信じている。

 J1は残り33試合を12月19日までシーズンを延長してやり切る予定だ。天皇杯もリーグ戦上位2チームだけの出場に限定。代表活動期間(国際Aマッチデー)も試合を開催するなどギリギリの日程を組んだ。

 特に真夏に連戦を余儀なくされるのは厳しい。7月は6試合、8月はルヴァン杯も含めると8試合。高温多湿の気候は選手の肉体と頭脳を極限まで消耗させ、回復する前に次の試合がやってくる。課題を修正するための練習時間もない。ブラジル時代に過酷な連戦を経験してきたMFドウグラス・ヴィエイラは「心身をいかにリカバリーできるかが重要だ」と語る。

 回復力向上のため、池田誠剛フィジカルコーチは中断期に徹底した走り込みメニューを課した。インターバル走や坂道を走る練習も繰り返して心肺機能を鍛え、短時間での回復を可能にする肉体構築を目指した。

 それでも、固定された11人だけで戦いきることは不可能だ。1試合10~13キロを間断なく走るサッカーは、あらゆるスポーツの中でもトップクラスに消耗が激しい。戦える選手をどれだけ多く準備し、効率的に選手を休ませるか。タイトルへの大きな鍵になる。

 選手の消耗を少しでも軽減しようと、Jリーグは選手交代枠を1試合3人から5人に広げた(交代機会はハーフタイムを除いて3度)。この改正は監督の采配にも変化をもたらす。早い時間でもちゅうちょなく選手交代を敢行して試合の流れを変え、攻撃や守備の「切り札」を準備するなどの「分業制」も可能となる。

 「日程を考えれぱターンオーバー(試合ごとに選手を総入れ替え)もあるし、出場時間を調整して(休養させる)方法もある。ただ大切なのは、全員が強度の高いハイクオリティーのプレーを90分続けること」と城福監督は言う。交代にリスクが伴うのは野球もサッカーも同じ。重要なのは過密日程を戦う長期戦略と目の前の試合を戦う現実とのバランスだ。

 「サポーターやスポンサーの支えによって自分たちが存在している」と城福監督やクラブスタッフ、そして選手たちも改めて実感した中断期。だからこそ「苦しんでいる人々を自分たちが支える存在になり、皆さんと一緒に優勝に突き進む」。指揮官の思いはチームの信念である。

(紫熊倶楽部・中野和也)

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