ぱんちゃん璃奈「私が切られる可能性を楽しみにしててください」ヒジあり初挑戦、トレーナーとの“トラブル”発覚前の心境か
「キックボクシング・KNOCK OUT」(30日、代々木第二体育館)
サネーガーム・サックチャムニと対戦するぱんちゃん璃奈のインタビューが28日、主催者から寄せられた。現役ラストイヤーの真っ最中、初のREDルールに挑戦するぱんちゃんが、タイで多くのタイトルを獲得する相手への決意を語っている。
一方、ぱんちゃんは27日に自身のXを更新し、トレーナーの良太郎との契約解除を報告。RISEなどに出場するMelty輝が所属していたteamAKATSUKIを離脱すると報告した投稿を引用し「私ももう行くことはありません。このジムの代表と本日をもってトレーナーとして契約解除します。私も現在然るべき機関に、相談、対応してもらってます。今は詳細について何も言いたくないです」と何かしらの“トラブル”があったことを示唆。「ですが、まだ頭の整理ができないので選手として継続するか、引退するかしっかり考えます」と綴っていた。
今インタビューではトレーナーに言及する場面もあり、何かしらのトラブルが発覚する以前のものだと推測される。
◆ ◆ ◆
-まずは前回、8月のアム・ザ・ロケット戦を今振り返ると?
ぱんちゃん「あの試合が、1年8ヵ月ぶりのKO勝ち(2023年12月、ケイスリィ・ヴァンス戦以来)だったんですよ。正直、1Rもよくなかったし、2Rの前半までよくなかったんですけど、KOできたら100点をあげているので、倒しきれたことはよかったなと思います。蹴りでボディが効いたなというのが分かって、そこで相手が折れた瞬間が見えたので、攻めきれてよかったなというのは思いますね」
-もともとはどう攻めたかったんですか?
ぱんちゃん「この1年半ぐらい、ボクシングに頼りすぎちゃってて、KOとかダウンを獲れた時はパンチばっかりで。自分は右ストレートが強いので、その右が当たれば倒せるっていうのは、正直今も思ってるんですよね。でもそれを当てようとしてパンチ一辺倒になって、組み立て方がよくなかったので、前回のアム・ザ・ロケット戦の時は、練習でも一切パンチをやらなかったんですよ。ミットでもサンドバッグでも、全て蹴りだけをやってて。なので1Rはパンチが出ない分、蹴りの距離がまだ合わなかったんですけど、2、3Rは蹴りから組み立てていけたので、久々にパンチに頼らず戦えたかなと思います。もともと自分はムエタイスタイルの、蹴りの選手なので、何年かぶりに蹴りで勝てた試合だったかなと思います。」
-その点ではよかったと。ただ一点、不思議なところがあるんですが。後半、ヒジが当たった場面がありましたよね。あれはどういう感じだったんですか?
ぱんちゃん「ジャブから押すっていう練習をすごくしてたんですよ。ジャブを出して、腕のところで胸を押すというのを。みんなインに入ってくるんですけど、そこで殴りたくないので押して蹴るっていう練習をしてたんですね。そしたら相手がMMAの選手なので重心がだいぶ低かったんです。ムエタイのアップライトじゃなくて、だいぶ下にいたので、前腕で胸を押した時に顎に当たってしまったという感じですね。自分も映像を見るまでは、何が当たってるのか分からなかったんですよ。でも映像を見るとヒジでしたね。イエローカードももらったので」
-その時はもちろんアクシデントだと思ったんですけど、試合後にX上ですかね、「今度はヒジありをやってみたい」という発言があって。別にそこはつながってるわけではないですよね?
ぱんちゃん「いや、つながってますね」
-そうなんですか(笑)。
ぱんちゃん「結果的には反則のヒジを出したことになったじゃないですか。それだったらもうヒジありに行けよって自分で思って。あと、前回もワンキャッチの組みヒザで勝ったんですけど、REBELSルールの時は自分はロックして組み、組み、組みという感じで勝ってきてチャンピオンにもなったので、ルールが変わって組めなくなってからは、自分のスタイルができないなと思ってて。毎回イエローをもらうんですよ、組みで」
-なるほど。
ぱんちゃん「アマチュアの時からずっとタイに行ってるし、接近戦になったら組んじゃうクセがあるんですよね。山口元気代表とかにも『組み無制限の方が向いてるよ』っていうのもあって、ムエタイに行こうと思いました。ヒジはやったことないんですけど」
-ですよね。
ぱんちゃん「ムエタイルールだったらイエローをもらうこともないし、組みのルールだからという感じです」
-今までタイで練習していた時も、ヒジの練習はやっていなかったんですね。
ぱんちゃん「はい、タイにはメッチャ行ってますし、今もウィラサクレック・フェアテックスジムで練習してますけど、『キックボクサーだから』って言って、1回も練習したことないです。遊びで、1日2日ぐらいミットしたことがある程度ですね。本当にヒジの練習を始めたのは、前の試合が終わって9月からです」
-今の手応えはどうですか?
ぱんちゃん「日本人選手とヒジありでやるんだったら分かるんですけど、次の相手はムエタイのプロじゃないですか。金メダルも3回連続ぐらい獲ってますよね。そんな相手に、当てられないですよ!いつも自分のことを分析しているので、キックだったら『押し勝つ』とか『フィジカルで勝つ』とか言えますけど、ムエタイのテクニックは全て負けているので、別にヒジを当てようとも思ってないです」
-得意の組みはどうなんですか?
ぱんちゃん「ムエタイの選手に組みで通用するかどうかは組んでみないと分からないので。ただ映像を見る限り、うまいのは100%向こうじゃないですか。勝つとしたら、キックボクシングをして勝つしかないと思ってます。日本人相手だったらムエタイをしにいくんですけど、さすがにムエタイのプロですからね。うまいなと思うので」
-ではイメージとしては、それこそ先ほど言っていたREBELSルールの感覚という感じですか?
ぱんちゃん「REBELSルールだったら自分は組みが強いんですけど、それはヒジなしでの組みが強いということんですよ。顔を無防備にして組む力、ロックする力が強いんです。でもそれをヒジありルールでやっちゃうと100%ヒジで切られるんですよ。『切ってください』っていう構えで組むのが強いので、また別なんですよね。だから今回は切られないような組み方をやってるので、得意なロックができないんですよ。組み方が全然違ってくるので、なかなか難しいですね。『単に今までのぱんちゃんの組みにプラスしてヒジがあるだけだよ』って山口さんは言うんですけど、全然組み方が違うので、新しい競技にデビュー戦として挑戦するっていう気持ちですね、今回は」
-ただ、このルールでWBCムエタイのタイトルまで行きたいという話ですよね?
ぱんちゃん「それは山口さんが言ってるだけなんですよ!私自身は、まだ一言も言ってないです」
-あ、そうなんですか。
ぱんちゃん「だって正直、ふざけてると思うんですよ。自分もさすがにムエタイとかキックにちゃんとリスペクトを持ってやっているので、1回もムエタイの試合をしてないのに『WBCムエタイの世界王座を獲りに行きます』なんて、そんなアホなこと言えないので」
-なるほど。
ぱんちゃん「次の相手も強いので、その相手に組みでどこまで通用するかとかを見てからじゃないと。1戦もやってないのに言えないですよね。そんな簡単なものじゃないし、この階級の世界チャンピオンとかとタイで練習してるんですけど、やっぱり首相撲がメチャクチャうまいんですよ。彼女たちのすごさを知っているし、私はヒジとか全然できてないので、とうてい勝てないと思ってますからね」
-では今回やってみて、どれぐらい手応えがあるかで変わってくると。
ぱんちゃん「そうですね。しかも初めてですからね。トレーナーとも話し合ってるんですけど、技術は相手の方が上かもしれないけど、フィジカルは私の方が強いので、意外と組み勝てるかもしれないと。でももしかしたら完封されるかもしれない。そこは組んでみないと分からないですよね。1回でも組み負けたら、もう二度とそこから組み勝てることはないと思ってるので。ムエタイの選手に1回でも組み負けたら、その後通用しないので、最初に組んだ時がメチャメチャ大事だなと思ってて。だから、最初の組みがダメだったら、もう組まないです。1Rの初っ端、組みで無理だったらもう組みでは行かないですね」
-用意している組み方と力で封じ込められれば、理想的ではあると。
ぱんちゃん「見た感じ、フィジカルとパワーは自分の方があるんですけど、ただ首相撲ってフィジカルじゃなかったりもするので。サネーガームはパワーじゃなくてテクニックで回すとか、ポイント取りがうまいので、彼女との相性は別にいいわけじゃないと思うんです。自分がフィジカル、相手がテクニックで来たら、テクニックの方が勝ったりするので。でもフィジカルの差がかなりあったら勝てるかなとも思うし、マジで分からなすぎるので、今回はプランをいっぱい用意してます」
-途中で変えられるようにということですか?
ぱんちゃん「はい。いつもだったら2~3パターンなんですけど、今回は組みがダメだった時はこっち、こっちがダメだった時はこっち……って、全部ダメな時を想定して、最後、無理だったら暴れるっていう戦法でいきます」
-今年の夏に、向こう1年をラストイヤーにすることを宣言しましたよね。そのラストイヤーの最後をどうするかも、この試合によってかなり変わってくる感じですか?
ぱんちゃん「そうですね。でも例えば、WBCムエタイの日本タイトルマッチをやるとしたら、その相手はサネーガームよりは強いことは絶対ないと思うんですよ。日本人の、自分の階級で彼女以上に組みがうまい相手はいないと思うので、引退までにWBCムエタイの日本タイトルマッチはやりたいなと思ってます。でも山口さんが言う世界王座まではまだ考えられていなくて。今回の選手が世界のトップランカーだと思ってるので、そこにどこまで通用するかですね」
-そういうところも全部ひっくるめて、今回の試合、新たな挑戦は楽しみですか?
ぱんちゃん「本当に初めてすぎるんですよ。試合前に、勝てるのかどうかが分からないというのが初めてなので、何とも言えなくて。いつもだったらけっこう自信満々なんですけどね。いつもは相手より勝ってるところを見つけるんですけど、今回はそれがフィジカルしかないので。キックボクシングだったらフィジカルが通用するんですけど、組みになるとフィジカルはそこまで関係なかったりするので。リーチもスピードもテクニックも相手の方が勝ってるし……だからやっぱりパワーでいくしかないのかなって思ってますね。ただ、引退までに1回はヒジで切りたいし、切られてみたいというのはずっと言ってます」
-切られてもみたいんですか。
ぱんちゃん「はい。やっぱりムエタイに来たからには、1回は誰かを切りたいし、1回どんな感じか切られてもみたいなと思います。それが今回になるのかどうかはまた別として、今回はとにかく勝ちたいですね。ギリギリでもいいので勝ちたいです」
-では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
ぱんちゃん「BLACKルールの時よりは打撃が少なくなるので面白くないかもしれないんですけど、ヒジがあるので、今までよりも見てる人にはヒヤヒヤ感はあると思うんですよ。だから私が切られないように願ってくれるファンの人と、『切られろ』って思うアンチの両方とも、集中して見られるんじゃないかなと思います。切れる時は一瞬で切れるので、どちらの方もよく見てた方がいいと思いますね。私が切る可能性は少ないと思うので、切られる可能性を楽しみにしててください、というぐらいですかね」
-分かりました。ありがとうございました!





