井岡一翔 死闘も無念判定負け 無敗王者と再戦でリベンジならず 10回左フックでダウン奪うも序盤からの劣勢響く 会場ため息も井岡は晴れ晴れ 王者の手を掲げ敬意
「ボクシング・WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ」(11日、大田区総合体育館)
元世界4階級制覇王者の井岡一翔(36)=志成=が挑戦者として、王者フェルナンド・マルティネス(33)=アルゼンチン=と対戦し、判定0-3(113-114、112-115、110-117)で敗れた。王座返り咲きはならず、36歳1カ月での長谷川穂積が持つ35歳9カ月を上回る日本勢最年長王座奪取記録を更新はならなかった。
初回からマルティネスが距離をつめてパンチを放っていった。井岡はガードを固めながらパンチを放っていくが、マルティネスの攻勢は緩めず。マルティネスペースの立ち上がりとなった。2回も序盤はマルティネスが主導権。井岡は痛烈な左を当てて反撃したが、王者の圧力は止まらず。井岡が押される展開が続いた。
3回は両者間合いを計りながらの立ち上がりだったが、徐々に王者が前へ。井岡はボディーで返していく。終盤は井岡のカウンターの右フックで王者がふらつかせる場面も。4回は井岡が左のカウンターを当てるも、マルティネスは止まらず。激しい打ち合いの中で前半を終えた。
5回は王者が攻勢。強烈な連打で井岡を下がらせていく。マルティネスの手数が目立つ展開が続く。6回は距離を詰めての激しい打ち合いも互いに譲らず。7回もマルティネスが前に。井岡も手数を増やして対応しようとするが、王者の圧力を止めきれずに後退。井岡は終盤ボディーで反撃した。8回は序盤は比較的静かな流れに。井岡が的確にパンチを当てて、ペースを掴んだ。後半に王者が反撃に出たが、終始井岡ペースで進んだ。
“井岡コール”の中、後半に入った9回、8回にペースを落としたマルティネスはジワジワと攻勢に。アッパー被弾からマルティネスの連打を浴びる場面が。それでも井岡は「こい」と挑発し、激しい打ち合いに。王者がボディーを嫌がる場面が目立つようになった。
10回はマルティネスが前に出て、井岡はボディーで応戦。井岡のカウンターの左フックが顎にさく裂し、マルティネスがダウン。井岡が試合を決めにいったが、王者の驚異の粘りで倒しきれなかった。
11回は王者が反撃を試みたが、前半ほどの勢いはなく。井岡が主導権を握ったまま、残り1ラウンドとなった。
最終ラウンドはともに意地の打ち合い。井岡がボディーを効かせるも、王者も最後まで前に出て反撃。終了のゴングが鳴った。
判定が告げられると、会場からは「えーっ!」ため息が漏れたが、井岡自身は晴れ晴れとした表情で王者の手を掲げ、敬意を示した。
悲壮な決意とともに臨んだ一戦だった。昨年7月、当時WBA王者だった井岡は、当時IBF王者のマルティネスと王座統一戦を行い、判定負けで陥落。ダイレクトリマッチは当初、昨年の大みそかに予定されていたものの、マルティネスが来日後にインフルエンザに感染したため、試合前日に中止となっていた。
仕切り直しの再戦。キャリアの晩年を迎える中で「何があっても勝利を」と誓って臨んだ一戦だった。





