「ボクシング・ＷＢＡ世界スーパーフライ級タイトルマッチ」（１１日、大田区総合体育館）

　ＷＢＡ世界スーパーフライ級タイトルマッチの調印式が９日、都内で行われた。挑戦者で元世界４階級制覇王者の井岡一翔（３６）＝志成＝は、王者フェルナンド・マルティネス（３３）＝アルゼンチン＝との１０カ月ぶりの再戦を前に、不利な下馬評を覆しての雪辱へ決意を込めた。一方のマルティネスは、ファンからもらったというアニメ「ドラゴンボール」のキャラクター、孫悟空のフィギュアをテーブルの上に飾るなど、マイペースで２日後のゴングに備えた。

　因縁の王者を前に、井岡は静かに雪辱に燃えた。判定負けした昨年７月の前回は、王者の強靱（きょうじん）なフィジカルに押される展開で打開できなかっただけに、今回も関係者やファンの間ではマルティネス優位の声が多く、下馬評は厳しいものとなっているが、「全く気にしてない」とどこ吹く風。過去３度のリマッチは全勝している百戦錬磨の３６歳は「前回の試合があって、そういう風に（厳しく）評価されているのも仕方ない。今回、勝利してそれを覆したい」と、落ち着いた口調の中にたぎる闘志をにじませた。

　一方、調印式の開始予定時刻に約１０分遅刻した王者マルティネスは、ドデカいサングラスにマスク姿で登場。久々に対面した井岡について「アルゼンチンに招待して、ステーキやエンパナーダ（パン生地で具材を包む料理）など郷土料理をごちそうしたい」と謎のメッセージで自信をのぞかせた。

　ひょうきんでつかみどころのない王者に対し、井岡は表情が緩みそうになる瞬間もあったが、決戦前に緊張感を切らせることはなかった。今後の展望も白紙を強調し、「まずはこの試合に勝つことが全て。この約１年、そのことばかり考えていた。必ず勝利して、チャンピオンに返り咲くことが（ファンやサポーターへの）恩返し」と決意を込めた。